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星の灰

「ねえ、毎日少しずつ星の灰が降りかかっているかもしれないって考えると、素敵じゃない?」
「そんなことある?」
「あるかもよ」

彼女はいたずらな笑みをこちらに向けながら振り返りました。すると、風に撫でられて微かに乱れた数本の髪が、街灯の青白い光に照らされます。ひとつにまとめて肩から垂らしている髪をいじる姿は、どこか子供っぽくて愛嬌があります。

「ほんとにそう言える?」
「ほんとに違うって言える?」

やり返された彼はバツが悪そうになりました。彼女は満足げな顔をすると、前に向き直り空を見上げます。彼女が見ているものが気になった彼は、隣に立って視線を上げました。

「ほら、あれ」

それはもうほんとうに一瞬、空を滑って消えていく光が走りました。

「綺麗だね」
「ねえ、綺麗だけどさ。地球の近くを飛んでいって、空気に触れたからああやって光ったんだよ」
「詳しいね」
「ふふん。ねえ、こう思わない?何かが燃えたら灰が残るなら、星がああやって空に燃えたら地球に灰が残るんじゃないかって」

彼は唸った。もっともらしい話と流れ星を目の前で披露されてしまったせいでした。もはや信じたい気持ちに抗えません。

「ねえ、信じる?」
「信じる。信じてしまうよ。こんなロマンチックなことさ」
「にゃあお」
「猫の真似?」

彼女は嬉しい声をあげたくなったのだ。彼はすぐにそう理解しました。また、敵わないなとしみじみ感じます。
楽しそうに伸ばされた彼女の右手はひと回り大きな左手に包まれて、ふたりの姿は闇に消えていきました。

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