山とまちはどう繋がるのか
神戸市市立名谷図書館の内装デザインにまつわる什器や家具、インスタレーション的なものを含め、六甲山材を使った制作を担当させていただきました。
きっかけは2020年5月。デザイナーの石丸耕平さんからご連絡をいただいた。石丸さんとは前職時代からのお付き合いだったのだけど、久しぶりの再会だった。
インフィクスという関西ではかなり有名は設計デザイン事務所から独立されて、現在はBLURRYという設計事務所を主宰されていて、新しい物件での木材のご相談だった。僕が六甲山材などを活用した活動をしていることを知っていてくれて、今度の現場で木材、特に自然木をたくさん使ったデザインを考えているのだけど六甲山材を使えないかということだった。それが名谷図書館だった。
石丸さんのデザインはほぼ出来上がっていて、そのボリュームと丸太を多用したデザインに圧倒されワクワクと、これだけの量を集められるかの不安の両方が入り混じっていた。石丸さん曰く、面白いやん。そんな感じのワクワク物件、ただ時間はまだ十分にあり、各所からの情報を集めていた。
そんな折、しばらく塩漬けした状態が続き、そろそろ段取りを考えないとと焦りつつあった8月、1本の電話が。神戸開港150周年のイベントの時にお世話になった、神戸市の宮道部長からの電話だった。「教育委員会から相談で、今後六甲山小学校の校庭内のヒノキを切らないといけないのだけれど、何か有効な活用方法がないか考えてもらえないか」というものだった。
早速、現場を見に行くと、校庭の端の方にヒノキ林があり、少し危険な状態にもなっているため結構な本数を伐らないといけないという。いつもやりとりしている神戸市防災課さんと教育委員会さんに、早速、名谷図書館の話をしてその準備に取り掛かることになった。板材からの制作であれば、今あるものから書かれるのだけれど丸太の輪切りの様なデザインでかつたくさんいるとなると原木からの調達となるためタイミングが難しい。それが六甲山材となると尚更で。
そんなこんなでエントランスの目玉となる3.5mの円座のベンチの材料がなんとかなった。さらにその丸太を小学校から搬出し、製材し、樹皮をむく作業は完全に人力で行い、寒い中をたくさんの人に協力してもらった。
自然木を使用するにはデザインや設計者との協調、施工業者との協力、関係性がとても大事。現場が大丸百貨店という商業施設であることもあり、不特定多数の人にこの様な自然木を使っていただくリスクや課題について、みなさん前向きに様々な意見を出し合いお互いの落とし所を探していくことで現場が進む。
夜間作業で朝5時まで作業したり、竣工後もいくつかの補修などを経て、現在も進行形のこの現場、なかなか面白い現場です。