むかし書いた韓国コラム #833
値段交渉が必要な市場での買い物は苦手だ。慣れた人は値段交渉のかけひきが醍醐味だというが、正直なところ面倒くさい。
先日かばんを市場で買うことにした。3万ウォン程度で買えればいい。店でかばんを手に取ると4万ウォンだという。交渉すれば3万5千ウォンくらいになるのだろうか。交渉する気はないが、言い値で買うつもりもない。予算通りに「3万ウォンでどうか」と告げると店主は首を振り3万8千ウォンだという。「今回は予算が3万ウォンしかないんだ」と食い下がると3万5千ウォンまで下げた。「いや、本当に3万ウォンしかないんだよね」。こちらは値段を上げる気はない。10分近く「3万ウォン」と言い続けていたら店主が根負けし無事に3万ウォンで購入できた。
「お客さん頑固だね。これじゃ商売にならないよ」とぼやく店主。でも売ってくれたということはまだ利益も出ているはず。果たしてこの勝負はどちらが勝ちだったのだろうか。
【解説】
このときは本当に3万ウォンしかなかったのだから仕方がない。それでも売ったのは利益が出るからなのだろう。もし4万ウォンで買ったら店の利益はその分だけ多くなる。こんな不明朗な商売の相手をするのもばからしいので基本的に市場には行かないことにしている。しかし日本からの来客の希望で市場を案内することもあり、しかも値段交渉までさせられることがあって、市場だけでなくこういう来客にも心の底からうんざりした。
(初出:The Daily Korea News 2010年7月27日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)