むかし書いた韓国コラム #975
ビデオアートで知られる韓国出身のナム・ジュン・パイク。彼の作品のうち果川の国立現代美術館に設置されている「多多益善」の修復が困難になっていることがわかった。作品に使われているモニターはすでに生産が中断された旧式のブラウン管モニターだ。今後の追加確保の見通しが立たず、故障した場合には対応できないという。作品に使われているモニターは1003台。これに対し美術館が確保している予備のモニターは95台にすぎない。モニターの生産中断は予想されていたのに予備の確保を怠っていたと美術館を批判する声も出ている。88年のソウル五輪を記念して作られた作品は、15年後にモニターをすべて交換しているが、老朽化が進んでおり今年も317台を交換している。同様の問題は今後他の作品でも起きることになるだろう。
形あるものはいつか壊れる――これは自然の摂理だ。モニターに映し出される映像あっての作品ではあるが、徐々に壊れていく姿もまた別の形の芸術かもしれない。
【解説】
幸いなことに2022年9月に3年にわたる作業を経て修復された。ただしモニターの上映は時間が限定されているようだ。写真は国立現在美術館公式サイトより拝借。
(初出:The Daily Korea News 2015年9月3日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)