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木箱記者の韓国事件簿 第44回 ソバンチャのメンバーと

 日本の男性アイドルグループの少年隊が人気を呼んだことを受け、韓国でも同様の男性3人組アイドルグループの「ソバンチャ(消防車)」が1987年にデビューした。少年隊のメンバーはスタイルの良いイケメンでダンスがうまかった。それに対しソバンチャはダンスの切れはあったものの、1人だけやや太めのメンバーがいて、本家に比べるとやや見劣りするというのが第一印象だった。そしてこの太っちょがメンバーで一番人気ということにさらに驚いたものだった。

 彼らは日本でも若干知られている。1996年に日本のテレビ番組でダウンタウンらお笑い芸人がソバンチャの曲を「オジャパメン」としてカバーしたためだ。後にダウンタウンが司会をする音楽番組にも出演している。私が彼らを知ったのは韓国に興味を持ち始めてすぐのころで1988年のこと。韓国の音楽を紹介するテレビ番組でその存在を知り、東京・京橋にあった韓国書籍専門店の三中堂でカセットテープを購入して擦り切れそうになるほど聴いたものだ。韓国歌謡史において男性アイドルグループの元祖に当たる。当時日本で行われた国際音楽祭にも韓国代表として出場しており、テレビでも中継された。韓国で一世を風靡したソバンチャは90年代には活動を停止し、その後何度か再結成されているが現在はまた活動停止中のようだ。

 さて、前置きが長くなってしまったが、今回は前回と同様にこのソバンチャの元メンバーと会った話をしたい。時は2012年4月。東部二村洞で日本人仲間と飲んでいたところ、そのうちの1人が「近くにソバンチャの元メンバーがやってる店があるよ」と教えてくれたので二次会でそこに行くことにした。LP盤で音楽を聴かせてくれるバーで、幸いにも元メンバーのト・ゴンウ氏もお店にいた。ただソバンチャと言えばやはり太っちょのメンバーの印象が強く、目の前にいる氏が元メンバーであったと言われても正直なところピンとこない。ソバンチャのメンバーのうち別の2人は2000年代になってからもテレビに出演しているのを何度か見ているが、ト氏ともう1人(ソバンチャは3人組だが途中でメンバー交代をしているので元メンバーは4人いる)は見た覚えがない。四半世紀前に買ったカセットとCDのジャケット写真の記憶をたぐりよせるが、「こんな人だったっけ?」としか思えず、せっかく元メンバーと会ったのに感動はいまいち薄かったのはここだけの話だ。ひとまずそういうことには触れずにト氏と往年の韓国歌謡の話などで盛り上がった。サインはもらわなかったが、この時はスマホがあったおかげで一緒に写真を撮ってもらうことができた。ぜひ一緒にソバンチャのヒット曲でも歌ってほしかったが、残念ながらお店には歌う設備がないので無理とのことだった。

 このお店は二村駅近くのロイヤルマンションに隣接するロイヤル商街の地下にある「カーペンターズ」。1990年代後半に活動していたR.efというグループのリーダーだったパク・チョルウ氏との共同経営で、現在も盛業中。同じビルには東部二村洞在住の日本人にはおなじみの鈴蘭亭がある。鈴蘭亭の隣、というか向かいにある「二村恋歌」も2人の経営だそうだ。どちらのお店もLP盤で音楽を聴かせてくれるが、「カーペンターズ」はお酒をメインにしたバーで、「二村恋歌」は日本風居酒屋となっている。80年代から90年代にかけての韓国歌謡好きならチェックしておきたいお店だ。ただト・ゴンウ氏とパク・チョルウ氏とも毎日お店に出ているわけではなさそうなので会えるかどうかは運次第のようだ。

初出:The Daily Korea News 2017年6月5日号 note掲載に当たり加筆・修正しました。

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