むかし書いた韓国コラム #792

 お金をかけずに長期海外旅行を楽しむバックパッカー。彼らが好むのは安宿だ。鍾路区雲泥洞にあった雲堂旅館は各国の旅行者の間でも有名な宿だった。このほか世宗文化会館裏手には多くの味のある安宿が集まっていたが、いずれも再開発などにより90年代に相次ぎ廃業してしまった。そのうちの数軒は自分も利用したことがあって、いまでも当時のことが懐かしく思い出される。

 世宗路交差点にほど近い路地裏には、大元旅館という旅好きに知られた安宿があった。21世紀になっても営業を続けており、貧乏旅行者の強い味方だった。知人がここに泊まっていたこともあり昨年夏に訪問したのだが、その直後に再開発のため立ち退きさせられたという。

 老舗の安宿がなくなったのは一抹の寂しさを感じる。貧乏旅行者にとって宿泊費をいかに安くあげるかは死活問題。貧乏旅行者にとっては物価高もあり、ソウルはあまり魅力的な都市ではなくなりつつある。

【解説】
 大元旅館があったのはいまのフォーシーズンズホテルがある所だったか。ソウルでは安宿だけでなく昔ながらの趣のある裏通りなども再開発の名の下に姿を消しており、味気ない街になりつつある。それを歓迎する人もいるのだろうけど昔を知る者としては寂しい限りだ。

(初出:The Daily Korea News 2011年6月29日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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