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意思決定に役立つ期待値

大なり小なり、意思決定をすることは、日々あります。もっぱら感覚で決めるという方もいるかもしれません。それ自体、必ずしも悪くないですが、統計的な考え方を習得しておくと、合理的な判断ができます。

比較的簡単な手法として「期待値」が有効です。期待値は、ざっくり言えば、平均です。

例えば、サイコロを振って、1が出たら100円、2が出たら200円、……、6が出たら600円もらえるゲームがあったとします。このゲームの参加費が、いくらだったら参加しますか?

それぞれの目が出る確率が同じと考えると、その6通りの平均が期待値になります。すなわち、

(100+200+300+400+500+600)÷6=350

で、350円が期待値になります。一般的には、それぞれの確率が1/6なので、その重みをつけた平均(加重平均)で計算できます。

100×1/6+200×1/6+300×1/6+400×1/6+500×1/6+600×1/6=350

すなわち、350円より参加費が安ければ参加した方が得で、350円より高ければ参加しない方が良いということになります。1回だけだと、運次第で損する場合も得する場合もありますが、このゲームに数多く参加するのであれば、350円で損得は明確に分かれてきます。

昨年、子どもに新型コロナウィルスワクチンを接種するかどうかを迷っていました。このようなケースでは、単純に数値で評価できませんが、副作用、感染した時の影響や、重症化した時の影響を自分の基準で数値化すれば、期待値を求めることができます。

(ワクチン接種しない場合の期待値)= (感染した時の影響)×(感染率)+(重症化した時の影響)×(重症化率)

(ワクチン接種した場合の期待値)=(副作用の影響)×(副作用の発生率)+(感染した時の影響)×(感染率)+(重症化した時の影響)×(重症化率)

ひとまず、期待値の大小で判断することができます。

ここで、感染率や重症化率は、ワクチン接種有無で変化することに注意してください。

また、感染した時の影響は、基礎疾患有無、受験に影響する、同居の高齢者に感染するなど、人それぞれ置かれた立場によって変わることにも注意が必要です。学校や職場によっては、接種していないと、登校や出社・出張の機会が制限されることもあるので、その場合は、その要因も加算する必要があります。

接種した方が良いかどうかは、全員同じではなく、各自で判断する必要があります。確率に関する部分も、変異株には有効かなど、信頼できる最新情報を使うことも重要です。きちんと数値を求めることは専門家でもむずかしいので、厳密な決定はできませんが、完全に感覚だけで決めるよりは、(主観を多く含みつつも)少し客観的な判断ができ、考えること自体に意味があります。

このように意思決定方法の1つとして、期待値を使ってみてはいかがでしょうか?

ただし、期待値は数学的には正しくても、必ずしも万能ではありません。期待値で判断すれば、宝くじは買わない方が得で、保険も入らない方が得となりますが、そうとも言い切れません。最初の例でも、財布の中のお金が残りわずかで使う予定があるのであれば、判断基準は350円より安くなります。期待値と感覚とのずれを埋めるには、期待効用などの理論がありますが、まずは期待値を意識する(ただし感覚とずれる場合は過信しない)ことで、これまでよりも合理的な判断ができるようになります。

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