水素化社会は本当に来るのか?

はじめに

月曜日、こんにちはRCCです。

今週も皆さんの頭脳を活性化する話題を提供していきたいと思います。


先週、先々週に引き続き、お金に関する話題です。

科学技術の研究には莫大なお金が必要です。

産業革命はお金によるドライブが必要なのは第一次産業革命の頃から変わりません。

ホットトピックはもちろんAI、半導体、EV、Battery、Hydrogen Societyですが、

その中でも今回はHydrogen Societyの市場分析について分析していきたいと思います。


PS 고동진 님의 강의를 Pick up하더니 (# 정보 공유), 고동진 님이 국민의 힘 당에서 출마 한다고 하네요.

역시 강의를 잘 하셔서 연설에 자신이 있으시나?

なぜ水素社会?

そもそもSAITで水電解課題が急にテーマとして、登場したのはなんで?

권오현 원장님時代に燃料電池課題はすべてなくなって、同僚とのつらい別れを乗り越えて現在のEnergy Materials TUがあるのになぜ2023年の今になって水電解がホットトピックになっているのか?

その秘密を握るのは下記の人物と深い関係があります。

2015年

気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」における、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち(2℃目標)、1.5℃に抑える努力をする(1.5℃努力目標)」という目標が159カ国の間で締結されました。

これらのパリ協定の長期気温目標が発表されたのは2015年でしたが、当時、長期の気温目標に関しての科学的知見は十分ではないとして、IPCCに特別報告書の作成が求められたのです。写真の人物は当時、国連事務総長の潘基文さん。

IPCCとは、「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略で、日本語では「気候変動に関する政府間パネル」と呼ばれます。1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された政府間組織で、2022年3月時点における参加国と地域は195となっています。

IPCCが果たしている重要な役割は、各国政府の気候変動に関する政策に対し、科学的な基礎をあたえることです。といっても、IPCC自らが研究をおこなっているわけではなく、世界中の科学者が協力して、科学誌などに掲載された論文などの文献に基づいた定期的な報告書を作成し、公表しています。



そして、2022年5月

IPCCでは「人類の活動が世界中の気象や気候に影響を及ぼしていることは疑う余地がない。」と結論づけられました。

そして、1.5度目標達成のためには、下記の図のようにCO2を青い色のシナリオに沿って現象させなければならないということがコンセンサスとなりました。

企業には、これらの目標をビジネスチャンスと捉え、自社の排出量をさらに削減するだけでなく、高機能素材や低炭素・省エネ製品の開発・国内外への普及を進めることが求められます。

脱炭素化を達成するということは化石燃料の使用を水素燃料の使用に転換しなければいけないということが確定します。

国家は企業に対して指針を示さなければなりません。(下の表に、国家、産業、国際機関の役割を示す。)



そこで、各国家は基本戦略を策定します。以下、日本の例を示すと、

2023年2月

日本政府は水電解技術開発ロードマップを発表し、

2023年6月

日本政府は水素基本戦略を発表し、15兆円/15年間の支援を発表し、供給量 300万トン+供給価格 30 JPY/Nm3 (発電単価基準では17JPY/kWh)@2030年の目標が掲げられる。(Nm3は normal m3の略で、0度での体積)


ここで、皆さんに問題です。

実は水素には1.グレー水素、2.ブルー水素、3.グリーン水素という3つの水素があることをご存知でしょうか?それぞれの違いを説明できますか?


化石燃料をベースとしてつくられた水素は「グレー水素」と呼ばれます。

また最近では、水素の製造工程で排出されたCO2について、回収して貯留したり利用したりする技術と組み合わせることで、

排出量を削減する手法が研究されています。このような手法で製造工程のCO2排出をおさえた水素は「ブルー水素」と呼ばれます。

さらに、再生可能エネルギー(再エネ)などを使って、製造工程においてもCO2を排出せずにつくられた水素は、「グリーン水素」と呼ばれます。




パリ協定が対象としている水素はもちろんグリーン水素です。

グレー水素やブルー水素といった化石燃料をベースとした水素をつくる場合には、化石燃料を燃焼させてガスにし、

そのガスの中から水素をとりだす「改質」と呼ばれる製造方法がとられています。メタンガスなどを改質して水素をつくる方法(水蒸気改質法)は、すでに工業分野で広く利用されています。

改質法はすでに確立されている技術ですから、これを大規模化し、褐炭などの安価な原料を使って水素の低コスト化を実現することができれば、水素の普及拡大や供給安定に役立つと見られています。

ちなみに、パナソニックが発売している家庭用燃料電池(エネファーム)も、都市ガスから水素をとりだす「改質」をおこなっています。

給湯と発電と暖房を都市ガスを使って供給システムで発電効率が87%といいですが(一般火力発電は40%) 、こちらはグレー水素もしくはブルー水素です。

日本政府は資料の中でエネファームが70万台/4年 売れていることを強く主張していますが、グリーン水素ではない点がちょっと惜しいですね。


一方、水を「電解」つまり電気で分解して水素をつくる製造方法もあります。

ここで再エネ由来の電力を利用すれば、グリーン水素をつくることができます。

ただ、水を電気で分解するには大規模な量の電力が必要となるため、できるかぎり安価な電力を使用することができれば、そのコストを抑えることが可能となります。

また、電解をおこなう「水電解装置」の開発を進めることで、装置そのもののコストを低減することも重要です。

このようにコストを抑えて水電解装置を開発することがパリ協定の目標達成のためのキーポイントなのです。

2013年までは燃料電池車などのユースケースに関する話がホットトピックでしたが、現在のホットトピックは水電解なのです。

水電解には Alkaline Water Electrolysis (AWE), Polymer Electrolyte Memebrane Water Electrolysis (PEMWE) などの方法があります。それぞれ、知りたい方は#12-2へどうぞ!



再生エネルギーで作られた水素はいろいろな用途で使用されます。

鉄鋼、アンモニア、メタノール、石油精製、化学品、セメント、道路貨物輸送、船舶輸送、航空、鉄道、乗用車、家庭、電力




ちなみに日本の現在の水素製造価格が100 JPY/Nm3で、2030年の水素製造価格 30 JPY/Nm3 ですが、

すでにこの目標は日本の国内製造では達成できないことが明らかになっています。

日本の電気代は高く、電気代だけで 30 JPY/Nm3がかかってしまいます。

なので、チリやオーストラリアから輸入することで達成されようとしています。

安く再生エネルギーを作れる海外からグリーンな水素を輸入することも世界的に見ればパリ協定達成のために重要なファクターなのです。

先進国は逆に発展途上国に水電解のプラント輸出の機会が生まれるのです。

つまり、先進国ではサムソン重工業、川崎、日揮、イワタニ、ENEOSなどのプラント会社にスポットが当たっているのです。




ちなみに、各国の目標は

アメリカの製造量は1000万トン@2030年

EUの製造量は1000万トン@2030年

中国は燃料電池車50000台@2025年


そして、皆さんお待ちかね市場規模です。

デロイトの予測によると2050年には1.4兆ドル市場に拡大するとのこと、

そして、その中心は中国、東アジア、北アメリカになるとのこと。



日本での水素輸入量が決定し、それによりユースケースの普及の数量も決まっている。

燃料電池と水素ステーションの目標数値は下記の通りだ。

すでに国内161箇所の水素ステーションが完成している。

今後の課題は燃料電池車と水素ステーションの値段だ。

現在、トヨタのMIRAIは58500USD、現代自動車のNEXOは58735USDでハイブリッド自動車との価格差は300万円ほどある。

この価格を300万円下げることが技術的な課題である。

また、水素ステションの価格は3~4億円であり、2025年までに2億円にまで低減する目標だ。









2030年 世界の市場規模が7兆円であることを見ると、再生エネルギー全体の市場を含んでるような数字にも見えますね。

この部分は水素が市場を占めるのか、二次電池が市場を占めるのかはまだわかりませんね。

2030年 アジア太平洋の市場規模が5兆円で、日本政府の支援予算が1兆円であることをみるとある程度妥当な数字であるようにも思えます。


最後に

本日は水素社会に関して市場調査をまとめてみました。

関係資料が膨大すぎて、一旦、このくらいで勘弁してください。

パリ協定を根拠に国家と産業が動こうとしています。

もちろん、このような計画社会は机上の空論のように、近未来には崩れてしまうかもしれません。


でも、一応、世界の頭脳が結集して悩んで妥協して作った約束ですので、ちょっとは信じてみたい気持ちもあります。


日本や韓国の立場では、水電解、水素輸送、水素貯蔵の技術を高めて輸出するのが世界に貢献できる道となるでしょう。


SAITerの皆さんにおきましては、このような背景の元で世界が動いてることをご理解いただけましたでしょうか?

専門家や、非専門家の皆さんのコメントをお待ちしております。それでは、また来週!!


会員限定記事 #12-2ではどのような技術があり、2050年までのロードマップについて数値と一緒にDeep Discussionいたします。

果たして、水素発電の価格はいくらまで下がるのか?電池技術は水素技術と戦えるのか?乞うご期待。

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