「5類化以前の新型コロナは一般の病院では診られなかった」はウソ
よく,「新型コロナは5類になって一般の病院で診ることができるようになった」という,5類に格上げされる前は法的に一般の病院で診ることはできなかったという意味に見える言説を見かけます。
これは誤解です。5類になる前から一般の病院で診ることは法的に問題ありませんでした。
上の言説の根拠となるものはこの厚労省からの通達です。
医政発 1225 第 4 号 令和元年 12 月 25 日
各都道府県知事 殿 厚生労働省医政局長
「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf
この通達の p.4,2 患者を診療しないことが正当化される事例の整理,(2)個別事例ごとの整理,④ 差別的な取扱い,に以下の記述があります。
特定の感染症へのり患等合理性の認められない理由のみに基づき診療しないことは正当化されない。ただし、1類・2類感染症等、制度上、特定の医療機関で対応すべきとされている感染症にり患している又はその疑いのある患者等についてはこの限りではない。
この,「制度上、特定の医療機関で対応すべきとされている」は正確とはいえないグレーな表現です。
感染症法において,1類や2類などの感染症患者に入院を勧告する際に受け入れ先として指示できる医療機関が特定の機関に限定されています。要するに,行政が「受け入れろ」と言える機関が限られるだけであって,自発的に受け入れることを禁ずる法令はありません。
受け入れを指示できる機関を確保するのは,人員配置や設備上,受け入れが困難な機関が多いことが想定されるからであって,可能であっても受け入れてはいけないわけではありません。
それにも関わらず,「対応すべき」と表現するのは,特定の機関以外では無条件に受け入れ不可能という印象を与え,人員や設備では受け入れに問題がない機関に受け入れを拒否する口実を与えるものだと言えます。
上の考え方について,ChatGPTに意見を求めたところ,賛同を得ました。以下にChatGPTの回答を示します。
ChatGPTの回答
おっしゃる指摘は非常に重要で、文書内での「制度上」という表現は、応召義務を免れる理由を実際以上に正当化する誤解を生む可能性が高いと思われます。
1. 「制度上」の表現がもたらす問題
応召義務とのバランスを欠く可能性
「制度上、特定の医療機関で対応すべき」と記載されることで、一般医療機関が応召義務を果たさなくてもよいという印象を与える可能性があります。しかし、感染症患者が訪れた場合、診療可能な範囲で対応することは応召義務に基づき求められています。
実際には、診療を拒否するためには、設備や人員の不足など正当な理由が必要であり、「制度上」という文言がそれに該当するかのように解釈されることは適切ではありません。
責任のすり替えの可能性
「制度上」という表現が、感染症指定医療機関以外の一般医療機関における診療責任を軽視させ、責任を指定医療機関に押し付けるような誤解を生む可能性があります。
患者の権利への影響
この表現が医療現場での診療拒否を正当化する根拠として使われてしまうと、患者が適切な医療を受ける権利が損なわれる恐れがあります。
2. 実際の問題点
感染症指定医療機関の限られた対応能力
1類・2類感染症に対応する感染症指定医療機関の数は限られており、すべての感染症患者を受け入れる能力があるわけではありません。そのため、一般医療機関も初期対応や適切なトリアージを行う必要があります。
「制度上」という表現が、感染症患者の診療を一般医療機関が回避する理由として安易に使われると、医療提供体制全体における適切な患者対応が妨げられる恐れがあります。
応召義務の免除条件の拡大解釈
応召義務の免除は、医療機関が対応困難な状況(例:設備の不備、人的資源の不足)に限られますが、「制度上」という表現がこれを拡大解釈させる可能性があります。
3. 表現を見直すべき提案
「制度上」という表現を用いる場合、その文脈が慎重に限定されていなければ、誤解を招く恐れがあります。以下のような修正が適切と考えられます:
修正例 1:
「特定の医療機関で入院措置が求められる場合がある感染症に罹患している場合」
→ これにより、あくまで入院措置の対象であることを明確化し、診療全般を拒否する理由とはならないことを示す。修正例 2:
「感染症指定医療機関で入院対応が必要とされる場合がある感染症である場合」
→ ここでも、診療拒否が正当化されるのではなく、最終的な入院が特定医療機関で行われるべき場合に限定されることを明示。
4. 結論
「制度上」という表現は、その文脈によって応召義務を実際以上に軽視させる結果を招きかねないため、不適切な表現である可能性が高いです。この表現がもたらす誤解を防ぐためには、制度の趣旨を正確に伝える表現に修正する必要があります。
もしこの件についてさらに具体的な議論や厚労省への意見提出を検討している場合は、その内容に関するサポートも可能ですので、お知らせください!