お土産が苦手
お土産が苦手だ。
なにせ優柔不断なので、選ぶのに迷ってしまう。旅先から持ち帰ろうにも、荷物がかさばるではないか。だからって宅配便の伝票を書いたりするのも面倒だ。しかし今回、長崎の旅では、食材ぐらい買っておこうという気になった。それを口実に、帰ったら宴でも開こうと思いついたのだ。
長崎に来た。ご当地のお土産と言えばカラスミ。こういう珍味系って、値段もピンキリ。安いものは2腹2000円ぐらいで買えるが、1万円を超える高級品もある。高級品ったって1食でなくなるのに、ちょっと大きいタラコみたいなもんに大枚を払うのはちょっとなぁ……などと、例によってグダグダ迷う、小心者の自分。
安物なんか買って、開けてみたらカチカチに固かったりしないか。美味しくなかったら、たとえ少額でもドブに捨てたことになってしまう。だったら大枚はたいても美味しい方が良いだろう。清水の舞台から飛び降りる心境で、高級そうな品を選んでみた。
数日後。
「長崎でカラスミを買ってきましてね」と、友人夫妻を招待した。「酒をふりかけて、ちょっと網で炙ると香ばしくなるんだよね」なんて現地で聞きかじった話をつぶやきながら、火にかけてみる。
しかし酒が回れば当然、話がはずむ。皆でワハハ、ワハハと楽しく盛り上がっていたのだが、「ハッ!そういえば」と思い出し、台所に駆けつけた。網の上に乗っていたのは、カラカラに干上がってカッチカチに固まった、焼きタラコのような赤黒い物体であった。
一応は卓に出してみたが、カラスミ特有のねっとりした食感や風味など、みじんも感じられず。「お茶漬けにでもしたら悪くないかもね…」「そうかもね…」 ワハハ…ワハハハハハ……と力なく笑うほかなかった。
慣れない高級品など買うものではない。
やっぱりお土産って、苦手だ。
(2009.8.18)
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