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恐縮ですが、育児中。 《4》 男と女
人種、体質、血液型等々、先天的な要素によって人間の性質が決まるという考え方は、科学的な根拠のない偏見だといいます。
確かに周囲の友人をみても、そうしたバックボーンよりも個体差、つまり一人一人のキャラや個性のちがいの方が、圧倒的に大きい。
とはいえ子どもを見ていると、どうしても「これは……やはり……。」と思わざるをえない要素が一つだけあります。それは男女差。
たとえばオモチャ。
おしなべて男子は「モノ指向」です。
彼らが好むのはミニカー、電車、戦隊フィギュアやモデルガンといった、自分が手にとって操作できる物体。しかもメタリックな、いわゆる「超合金」的な重量感のある品を、ことのほか愛好します。
一方、女子は「ワタシ指向」。
ワタシを飾ってくれるアクセサリーや衣服、ワタシを慰めてくれるぬいぐるみや人形、ワタシが演じるためのおままごとセット。オモチャは「ワタシ」を彩る脇役なのです。
(あくまでも一般論ですよ)
そんな子どもたちを見ていて、しかし「大人も同じでは……?」と思ってしまうんです。
大人の男性が、パソコンやカメラや携帯電話の新機種といったガジェット類に向ける熱い眼差し。(あいかわらず超合金的な質感)
大人の女性が、洋服やコスメやエステに注ぐ情熱。(雑誌ふうに言えば『自分磨き』や『自分へのご褒美』)
「三つ子の魂、百まで」とはよく言ったものです。
しかし、それ以上に感じる性差は、コミュニケーション能力。情報の感度も処理速度も、男女で全くちがうような気がします。
まず、男子は一度に複数の情報を処理できません。
うちの息子など、超合金ロボットに夢中になってる間は、親に何を言われてもまったく無反応。こちらが「聞いてる?」と大声を出すと、ハッと我に返ると同時に超合金をポトッと落としてしまう。どんだけシングルタスクなんだ。
一方、同じ歳でも女子の場合、テレビを観ながら人形で遊びつつ、親は聞いてないと思っているオトナの会話なんかも、しっかり聞いてたりする。
つまりマルチタスクなんです。しかもインプットした情報は、確実にメモリーしている。情報へのレスポンスも圧倒的に速い。男女が争ったところで、初手から勝負は見えています。
たとえば、待ち合わせに遅れてきた女性に男性が「遅刻だぞ!」なんてちょっと強く言おうものなら、
「アナタだって3年前、遅れた事があるじゃない」
「えっ?」
「都合の悪い事はいつも忘れるのね」
「いや…その… いつもって事はないんじゃ……」
「じゃあ先月、私の誕生日を忘れた件はどうなの?」
「……ご、ごめん。悪かった…。」
と、悪いのは遅刻してきた女性のはずなのに、いつの間にかこっちが謝っているのは、一体どういうことか。
あれ? いつの間にか育児じゃなくて、男の……いや当方の 単なる愚痴 になってました?
まったくもって、恐縮です!
明和電機ジャーナル 第17期 第4号 (2010年11月15日発行) 所収, に加筆訂正
子どもが小さい間は他の子と遊ばせたり、面倒をみたりして、同世代の子たちを男女わけへだてなく観察する機会が多いものです。そんな中でなんとなく思ったのが今回の話。
あわてて付け加えれば「性差」って今どき、かなり微妙な話題ですよね。そもそも男女の脳に差はないという説も耳にします。
ここに書いた性差の話も、たまたま当時の筆者が感じた「傾向」にすぎませんので、笑い話として読み流していただければ幸いです。
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