恐縮ですが育児中! 〈17〉 映画館
皆さんは、生まれて初めて映画館に行った時のこと、おぼえてます?
当方は小学校低学年の頃。『東映まんが祭り』とか、そういった子ども向けアニメでした。
実写映画は、バスター・キートンの『セブン・チャンス』とチャップリンの『独裁者』というクラシックな喜劇2本立て。これで「洋画」が好きになったと記憶しています。
いま思えばネットもなかった時代、田舎の子どもにとって外国の映画は、世界中の知らない国に空想旅行できるメディアだったんですね。
見たこともない景色や外国のカッコいい紳士、キレイなおねえさんたちを、暗がりでボーッと眺めるのは、毛布にくるまって夢をみているような気持ちよさ。
日曜の朝、パンと牛乳を買って映画館に入り、当時は普通だった2本立てや3本立てを眺めて、一日を過ごしたものです。
とはいえ子どものおこづかいでは、映画館に行けるのは月に1度かそこらの贅沢。そして当時はレンタルビデオどころか、ビデオ機そのものが家になかった。
なので映画鑑賞のメインは、TVの洋画劇場でした。
『大脱走』だの『ベン・ハー』だの『ゴッドファーザー』といった長尺モノだと、前篇/後編と2週に分けて放映されたりして。続きが観られる1週間後が、待ち遠しくてしかたなかったのをおぼえています。
しかし、時代は変わりました。
いま自分の息子を観ていると、映画どころか「映像」全般に対して、そんな飢餓感は全然ない。
セルでもレンタルでもDVDはすぐ手に入るし、放送だってHDに録画しておける。それどころかネットで好きなものが観られる。
そもそも映像コンテンツ自体が膨大に存在する。動画サイトにいつでもアクセスできるし、観るために「待つ」必要がない。オンデマンドの時代です。
けれども、やはり変わらないと感じるのは、映画館という「空間」のパワーです。
たとえば日曜日。
「公園でカラダでも動かして遊ぶかい?」と、ことさら明るく誘ってはみるものの、内心では公園なんて面倒くさいと思ってる父の本心を見透かしたかのように、「映画に行こうよ」と言い出す息子。
こちらとしても、暗闇に座ってるだけの映画鑑賞ほどラクな休日の過ごし方はないので、即決で出かける。
日頃は家で飲食できないコーラやポテトやホットドッグを買い込み、売店で映画キャラ商品に目をキラキラさせ、予告編が始まると食い入るようにスクリーンを見つめる息子。
どんなに映像が溢れる時代になっても、体感アトラクションとしての映画館の楽しさは変わらないんだな。と、自分の子ども時代を思い出し、ちょっとノスタルジックな気分に浸ったりします。
そんな気のユルみのせいか、映画の後には財布のヒモもユルみがち。
いったい何につけるんだ?と思わざるをえないゴテゴテしたストラップとか、ゴミ箱行き確実の不細工なキャラ人形とか、気がつけば謎のグッズを購入させられているのはどういうことか。
まあ、しかし、映画館という空間にワクワクしちゃってるのって、映像には飢えていない子どもよりも、ノスタルジーを引きずった父の方なんだから。
散財ぐらいしかたないですよね。しかたないですよね(自分に言い聞かせる)
いやはや、まったく恐縮です……。
明和電機ジャーナル 第19期 第6号 (2012年3月15日発行) 所収, に加筆訂正
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