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献立という名の哲学書
ちょっと前の話になるが、『おかずのクッキング』最終号の巻頭特集『土井善晴の 一汁一菜から始めよう!』がすごかった。
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お料理しようと思って立ち上がるには、少し力が必要です。
それは慣性の法則が働きますから仕方がない。
でも立ち上がらないと死にますから、どうぞ立ち上がってください。
自分で料理して食べることは何よりも自分を大切にすることです。
……
どうぞお料理という行為を信じてください。
これは献立という名の哲学書ではないか。
炊事するすべての人間に捧げられた詩集、箴言集、檄文集だ。
あなたの身体は
君が食べたものでできているのです。
だから食べものは
あなたの未来の身体です。
こういう金言がレシピのあちこちに織り込まれている。
毎日特別おいしいものはいりません。
おいしいものって、心乱すでしょ。作る人も食べる人も。
ふつうでいいのです。
……
食べる家族は、作る家族を守ってください。
ほんとうの豊かさは、料理して作るという暮らしです。
これまでずっと、家族や自分のためのごはんを作り続けてきた、毎日の生活を肯定されたようで、なんとも胸が熱くなった。
料理ガイドを読んで泣いたのは初めてだ。
(2022.3.29)
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