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恐縮ですが、育児中。 《9》 お弁当

言葉の開放的でノスタルジックな響きとは裏腹に、親としては過酷な現実をつきつけられる季節、それが「夏休み」。

それでなくとも、祝日だ連休だと学校が休みになるたびに、元気がありあまっている子どもと、終日どうやって時間をつぶすか悩むというのに。

一ヶ月も学校を閉鎖するなんて、狂気の沙汰としか思えません。教育委員会は何を考えているんだ! 責任者出せ! とモンスターペアレント化してもおかしくない季節、それが夏休み。

とはいえ、よくできたもので、今どきの学校には学童保育というものがあるから助かります。子どもがそこに通っている間、こちらは家事に仕事に昼寝にツイッター…と時間をフル活用(ツイッターは余計か)できるわけです。

しかし学童保育には、一つだけ大きなネックが。それが「弁当問題」です。

平素は「給食」というものがあり、ありがたいことに学校では栄養バランスのとれた食事ができる。したがって家ではテキトーな食事でも良いわけです(良くない)。だが夏休みは、給食という「食の守護神」 がいらっしゃらない! お弁当というものを作り、持参させなければならない!

いや、実は当方、遠足だの運動会だのといった特別な日のお弁当は、けっこう張り切って作るタチなのです。しかしそれは「ハレの日」だからできる事。毎日の栄養を補給する「ケ」の弁当を作り続けるのは、まったく違う難しさがあります。

なにしろ連日ですから、飽きないようにチマチマいろんなオカズを入れなければならない。栄養バランス的には野菜も必要です。もちろん彩りも大事。 昨日と違った「絵ヅラ」になるよう、手を変え品を変えなければならない。

そんな事をネチネチ考えながら連日の弁当プロデュースを遂行するのは、晩ごはん作り以上の難しさがあります。しかも朝食作りと並行してですから、朝の忙しさときたら、一輪車に乗りながらジャグリングするぐらい過酷。

けれども、数日作り続けているうちに、コツがつかめてきました。

基本方針として、オカズは「メイン1品+練り物+生野菜」と単純化してしまうわけです。メインと言っても冷凍のコロッケとかカツとか、要するに、手抜き。

また、冷凍食品に凝り始めたら、自分でもちょこちょこと冷凍保存するようになりました。茹で野菜とか焼き鮭といった「小ネタ」は、普段の晩ご飯作りの残りをチョチョイと冷凍してしまう。あとはカマボコや竹輪のような保存の小物を詰め込めば、何とかそれらしい弁当の一丁あがり。ふう。

とはいえ、二日酔いの朝など、下準備はしてないわ時間は無いわでメチャメチャな内容になってしまう事も多々あります。 ご飯と練り物だけとか…。

いつもは、学校が終わった子どもから「今日のお弁当、お肉が美味しかった!」などと感想をきき出しては「よし!そうだろ、そうだろ!」と承認欲求を満たす当方なのですが。手を抜いた日に限っては、帰ってきてからも弁当の話題を一切持ち出さない息子に、子供なりの気配りを感じたりします。

いやはや、まったく恐縮です!


明和電機ジャーナル 第18期 第3号 (2011年9月15日発行) 所収, に加筆修整



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