6年間の思ひ出(2年次、骨の名は編)
時が過ぎ、ギリギリで進級を勝ち取った僕は2年生になっていました。
希望に眼を輝かせていた僕達1年生も2年生へと駒を進め、すっかり大学に染まり、最初の頃は私服をオシャレに着こなし、綺麗なカバンで登校し、授業では真面目にペンを動かしていたあの頃の僕達は部活のスウェットに身を包み、手ぶらでふらっと教室に現れてはレジュメを回収しする姿が板に付いてきた頃(ごく一部ですよ、ごく一部…。)
僕達2年生を待ち受ける第1の難関、解剖実習が始まる季節となりました。
高校生に毛が生えた程度の医学知識を持ち合わせた僕達が本格的に人体と向き合うファーストステップ。
医学への第一歩を踏み出した期待と提供していただいた御献体に感謝の気持ちを胸に、数学や物理で失われかけていたモチベーションが復活した科目となります。
ただこれが地獄への第一歩となります。
まず人体の全てを日本語、英語で覚えなくてはなりません。
毎日午前中は講義、午後は実習。その日の課題を終えられなければ夜中まで残り、帰宅しても次の日の予習に明け暮れる毎日。そして度々開催される口頭試問という名のシゴキ。
今思い返しても、1番戻りたくない学年、それが2年生です。
課される難題はもちろん解剖学だけではありません。
人体のミクロの世界(細胞や組織といったもの)を理解する組織学
人の体ではどういう生命活動が行われているのかを理解する生理学
化学物質が人体ではどのような作用を及ぼしているのかを理解する生化学
これに解剖学を加え主にこの4つの柱を1年かけて学びました。
それがまぁきつい。この他にも細々とした科目もあり、中には実習もありレポートと試験に追われるビリーズブートキャンプも真っ青のそれはそれはキツい期間だったのです。
ここで皆気づくのです。
「試験大変だけど頑張ろ〜」とスタバの容器と共に教科書を撮りSNSにアップしていた自分の愚かさを。
「医学部キツいわ〜」と他学部に進んだ友人にのたまっていた自分の恥を。
大したことを勉強してないくせにカフェで勉強道具を広げ悦に浸っていた自分の軽薄さを。
そんな余裕などどこにもない。
あるのは、夜中にも関わらず電気がついている教室、教室に溢れかえるコーヒーやエナジードリンクの缶、講義と講義の合間に教室前のベンチに横たわる者、奇声とも取れる声で骨の名前を叫ぶ者。
まさに死屍累々。いや、魑魅魍魎と化した学友達の姿がそこにはありました。
試験直前の教室はラクーンシティさながら。
試験が終わると宴を催し、酒をかっ喰らう姿はまさに獣。
そんな1年でした。
真面目な話、学年が進むにつれ、また研修医になってから、もっと真面目に勉強しておけばよかったと思うのがこの学年の内容です。
実習でも仕事でも解剖学や生理学の知識は知っていて当たり前のものとして会話が進められるので、それを知らないといくら分からないことがあったら聞いてねと言ってくれる優しい先生にでさえかなり聞きづらいのです。
また、日々進歩していく医学の中で不変のものとされるのもこの学年で学習する内容なのです。
いくら医学が進歩しても体の中の臓器の場所や働きは変わりませんからね。
最後にこの学年での履修科目は以下の通りになります。
解剖学
組織学
生理学
(循環器分野、呼吸分野、消化器分野、腎臓分野、神経伝達分野)
生化学
脳神経総論
解剖学実習
組織学実習
生理学実習
生化学実習
脳神経学実習
見るだけで頭が痛くなりますね。
この学年を乗り越え、さらには現役生も成人を迎え、僕達はさらに大人になっていくのでした。(疲労と憔悴で老化しただけ…。)
個人的にはこの学年に上がる頃、坂道系アイドルにハマり、握手会やライブなどに奮って参加するようになり、大学以外での同年代の人達と仲良くなるようになりました。中には今でも仲良くさせていただいている人も多く、アイドルがきっかけで色んなことを経験出来ました。
試験前に握手会場でシケタイを血眼になりながらブツブツ唱えていたり、アイドルってあんなに華奢でどこに臓器閉まっとるんやろとか気持ちの悪い発言をした僕を生暖かい目で見守り、引かずに仲良くしてくれた同志達には感謝しております。
あの時仲良くして頂いた方や、キラキラとステージで輝きを放つアイドルがいたからこそ、廃人にならずに済んだのかなと思います。本当にありがとう。
次回は当時華の3年と言われた(先輩の話を鵜呑みにしたら地獄を見た)3年次のお話をしたいと思います。
じゃ、また。
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