【毎週ショートショートnote】告白雨雲
扉を開けるとずぶ濡れの女性がいた。
「一晩泊めて下さい」
なんて美しい。
俺はつい家にあげてしまった。
『名前は?』
「レイ」
一晩のはずが二晩、三晩、今では同棲だ。
「私も働く」
突如部屋にこもり、仕事中は中に入るなとレイはいった。
彼女は耳かきを作り、販売を始めた。
その耳かきの綿毛は、耳垢を洗い流すとポカポカと乾かし、耳に虹がかかると話題になった。
ある日、俺は仕事中の部屋に入ってしまった。
そこにいたのは、人型の雨雲。
自分の体をちぎって、綿毛にしていたのだ。
「私ね、昔、木にひっかかっていたところを、子供だったあなたに助けられたの」
濡れた声で雨雲は告白すると、水蒸気となり、窓の隙間から消えた。
『レイ…』
次の日の天候は奇妙だった。
局地的に雨が降っては晴れが、何百か所で観測された。
街には大小様々な虹がいくつもかかり、重なっている。
見とれていた俺の目にも、小さい虹がかかった。
(400字)
今週も参加させていただきました!いつもありがとうございます!
今回のお話は『鶴の恩返し』をベースに、今週観たトイ・ストーリー3の影響で涙量多めの作品となった気がします(深夜に嗚咽)。
過去の作品から学び、その時のフィーリングを大切にする。
今はそんな気持ちで、ひとつひとつの創作に向かっていこうと思っています!
どうか楽しんで読んでいただけますように!
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文章や物語ならではの、エンターテインメントに挑戦しています!
読んだ方をとにかくワクワクさせる言葉や、表現を探しています!