こうして英語に出会った①
小学校に上がるタイミングで、
私は引っ越しをした。
新しい景色や友人と
出会った。ワクワクした。
その数ヶ月後に、父の
海外転勤が決まった。
一度、引っ越しをしたことが
ある人なら想像つくと思うが、
ようやく段ボールの中身を
全部出したと思ったら、また
荷造りしなくてはらならない
という現実ほど溜め息の出る
ものはない。
父は英会話を習い、
私たちより一足早く渡英。
残された母は、再び
荷造りをし、家事をし、
小学生の私と兄を育てた。
日本を離れている間、
我が家を借りて住んで
くれる家族も見つけた。
今なら、転勤の立役者で
あった母の労苦を慮って
背中をさすってあげる
ところだが、当時の
我々は8歳と6歳。
空気を吸うかのごとく
ケンカしていたし、
年中ドブに落ちて
怪我ばかりしていた。
今思い出しても、
申し訳ない限りである。
さて、スマホもネットも
ない昭和時代。情報が
自然に飛んでくるような
環境ではない。
当時の私は、イギリスが
どこにあるのかさえ
わかっていなかった。
クラスメートに、
同じタイミングで
シンガポールへ転勤
する友人がおり、
彼女が私にこんなことを
教えてくれた。
「シンガポールは
勉強が大変なんだって。
テストが悪いと落第
するかもしれないから
いやだな。ところで、
Kちゃん(私のこと)
の行くイギリスは、
先生がムチで
叩くらしいよ」
突然のムチ情報に
恐れおののいたのは、
言うまでもない。
あまりにも衝撃的
過ぎて、このことは
誰にも言っては
いけないと自分に
言い聞かせた。
しかしながら、
ムチでたたかれる
可能性があるのは
確実に私より兄だと思い、
彼にだけはそっと
伝えておいた。
その後、あっという間に
みんなで渡英。
私は現地の小学校
にポーンと入学。
初日の衝撃は、
とにもかくにも
最初から最後まで
周りが何を言って
いるか、まるっきり
わからなかったこと。
チンプンカンプン
というのは、まさに
こういう状況を表す。
なのに、なんだか
楽しかったのだ。
※ムチで叩く
先生どころか、体罰
そのものがなかった
(そりゃ、そうだ)。
つづく。
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