映画の中の子どもたち②
『友だちのうちはどこ?』
イランのアッバス・
キアロスタミの1987年の作品。
同級生のノートを
間違えて持ち帰って
しまった少年アハマッドが、
放課後に遠くまでノートを
返しにいくというとても
シンプルな物語。
映画の冒頭は学校のシーン。
ノートとは別の紙に宿題を
書いてきたことで、先生に
こっぴどく叱られる
友だちの隣に座っていた
のが主人公のアハマッドだ。
自分のせいで、明日また
友だちが叱られてしまっては
いけないからと、
「友だちのノートを返しにいく。」
とお母さんに言っても、
お母さんは「宿題をしなさい」
の一点張り。
おじいさんときたら、
「たばこをとってきて」
と答える。
返事はするけど、自分の
生活に追われて、決して
少年の話を聞いていない
大人の姿を、なかなかの
長回しで撮影している
ところに、監督の意図が
あるのかな?と感じたり
もする。
後に撮られた『ホームワーク』
という、自分の子どもの宿題に
疑問を持ったキアロスタミが、
子どもたちにインタビューする
ドキュメンタリー映画を観ると、
20世紀後半のイスラムの教えに
基づくイランの教育や、大人と
子どもの関わり方について
少し理解を深められる。
日本で生きていると、
情報として届くのは
主に欧米の教育なので、
当時のイスラム教育は
色々な意味で興味深かった。
さて。
大人に言葉では
反抗はしないけれども、
アハマッドは、
自分で考えて
決意して行動をとる。
友だちのうちが
見つからずに
夜になってしまった
ときは本当にハラハラ
させられたが、
ラストシーンには、
ホロリとくるものが
あった。
この映画には、
野鳥や鶏、牛、
羊があちこちに
登場していて、
その声もずっと
聞こえている。
ありとあらゆる
生き物と地球で
共存している
ことがわかりづらい
現代人は、こういった
映像を通して、
人間の生活のために、
自然や生き物が存在
しているわけではない
という当たり前の
事実に出会うんだな
とも思った。
映画に出てくる生き物
の中で、話を聞かない大人が
一番のエイリアンに見え、
自分もいつエイリアンに
映るかわからないから、
ちょいと気を付けようと
思った次第だ。