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ブリコラージュ

日本一長いとされる大阪の天神橋筋商店街で、2日間のゼミ合宿を行いました。学生たちが商店街の人たちと出会い、商店主の人たちの話すおすすめの食材を集めて料理をします。急ごしらえではありますが、食べモノを通して街の人びとの想いを受け取り、作った料理の感動をレシピに加えて冊子にします。想いをつなぐことの本質を体験を通してわかる、というのが合宿のテーマです。

集まった食材は、手作り豆腐や青パパイヤ、塩昆布、バターナッツかぼちゃなど全部で20種類以上です。合宿1日目には、それらの食材を使って学生たちが相談しながら夕食をつくります。料理は苦手という学生もいる一方で、自炊やアルバイトで慣れている人もいて、それぞれにアイデアを出して手を動かすうちに、新しい料理が次々にテーブルに並びます。写真に映える色あいの盛り付けが鮮やかで、美味しさも見た目に劣りません。

身の回りにあるモノを集めて自分で作ることを意味するブリコラージュという言葉があります。合宿でのレシピのない創作料理もブリコラージュにあたります。予め計画した手順書はなく、有り合わせたモノから発想を得てつくるので、完成品は偶然の産物です。ブリコラージュの語源はフランス語の「ブリコラ」で、ボールが跳ねるなどの偶発的に起こることを指すそうです。この偶然を面白がれるかどうかは、どれだけ真剣に取り組んだのかが決め手になります。学生たちは、美味しくしようと懸命になる中で、街の人から聴いた食材のおすすめポイントを思い出し、サラダに塩昆布を混ぜる工夫などで試行錯誤します。そうしてできた料理を食べた時の感動が、街の人がすすめてくれた想いへの共感の源です。

合宿の2日目に、再び同じ店主の人を訪ねて、昨日つくった料理のレシピ集を届けます。たいていは、「こんなモノができたのか」という驚きとともに、昨日よりも大きな笑顔で学生を迎え入れてくれます。街の人たちと学生たちが出会い、偶然そこに新しいつながりが生まれたブリコラの風景が、商店街のあちこちで見られた合宿2日目の午後でした。


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