映画「長いお別れ」と、私と祖母の「長いお別れ」

WOWOWで放送されていた「長いお別れ」をなんとなく見た。

最後には号泣していた。

あらすじ

父の70歳の誕生日。久しぶりに帰省した娘たちに母から告げられたのは、厳格な父が認知症になったという事実だった。 それぞれの人生の岐路に立たされている姉妹は、思いもよらない出来事の連続に驚きながらも、変わらない父の愛情に気付き前に進んでいく。 ゆっくり記憶を失っていく父との7年間の末に、家族が選んだ新しい未来とは――。

感想メモ

「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督、山﨑努が父親役、娘役には竹内結子と蒼井優。見始めたときは、竹内結子はもうこの世にいないんだなぁと少ししんみりしていた。

認知症が少しずつ悪化していく中で、暗くはならずになんだかほっこりするシーンが多かった。孫から「漢字マスター」と呼ばれるくらい漢字に詳しかったり、万引した時は教職の記憶が蘇ったのか店長を廊下に立たせようとしたり…

映画の中で何度もぐっとくるシーンがあった。

若いときの記憶が蘇り松原智恵子さん演じる母へのプロポーズ　　　　　　　　　記憶が薄れている父に相談をする娘たち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　昔の記憶が蘇り母と娘たちを迎えに行こうとして遊園地に向かった父

私も映画と同じ二人姉妹。なんとなく父のことを思い出してしまった。両親は永遠に存在すると思ってしまう。でも違うんだ、と最近少しずつ思い始めていること。

最後のシーン。孫が通う学校の校長と話すシーン。

認知症は「長いお別れ」だと校長が言った。　　　　　　　　　　　　　　　　　少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかっていくから。

今年の春、お別れをした祖母のことを思い出していた。　　　　　　　　　　　　たしかに、「長いお別れ」だった。

祖母との「長いお別れ」

なんとなく物忘れをするようになったなぁと思うようになったのはいつからだろう。少しずつできないことが増えていって、少しずつ記憶が薄れていった。

次に実家に帰ったとき、祖母が忘れていたらどうしようと思うようになった。忘れてほしくなくて、毎月写真付きのはがきを送った。

できないことが多くなり、祖母は両親と同居した。母からの電話は、祖母の愚痴が多くなり、電話をするのが辛くなった。その後しばらくして、祖母が施設に入るため地元から遠い叔母の家の近くに引っ越すことを知り電話先で号泣した。

なぜ泣いたんだろう。長年過ごしてきた地元から、大きな都市の施設に一人で行く祖母のことを思うと勝手に泣けてしまった。

施設に初めて行ったとき、祖母は元気だった。私のことも覚えていた。でも、話を合わせてくれていただけだったのかもしれない。お菓子が大好きな祖母に持っていったお土産をみんなで食べた。祖母にお菓子を渡したらすぐなくなった。

あとから聞いたが、施設から帰るとき祖母は私達を追いかけていたらしい。危うく外に出てしまうところだったみたいだ。施設に一人ぼっちで寂しかったのかな。

私が最後に祖母に会ったのは、認知症が悪化し入院した病院だった。祖母は痩せて、私のことを覚えていなかった。でも、お土産に持っていったカステラを「おいしいおいしい」とぺろりと食べ、空き箱を開こうとしてもっと食べたそうだった。カステラに目を輝かせる祖母を見て、とってもかわいいなと思った。

帰りがけ、「帰るね」と手を握ったら、祖母は私の手をずっと離さなかった。ずっとずっと離さない。何も言わず、ずっと手を離さなかった。二人でそのまま秋の空を眺めていた。あのときの気持ちは、言葉にできない。

最後はコロナで面会にもいけない状態だった。会えなかったから、まだなんだか実感がなくて実家に帰ったらいるんじゃないかなって思ってしまう。

私と祖母の長いお別れ。もっと会いたかったな。私は祖母が大好きでした。