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【後編】『言語化できるだけが自分らしく生きているってことじゃない』OMOYA Inc.代表取締役社長 猪熊真理子さん
前編
▶︎『心が「もう無理しなくてもいいよ」と教えてくれた』
▶︎『経営者は、“人間性を問われる面白い仕事”と学んだ大学時代』
▶︎『「女性が自由に豊かに生きられる社会へ」をコンセプトに』
▶︎『何を学ぶのではなく、何の目的のためにどう使いたいのか』
▶︎『大学として育てようとしている女性像に強く影響を受けた』
後編
▶︎『自分らしさは世界中ただ1つのオリジナル』
▶︎『言語化できるだけが自分らしく生きているってことじゃない』
▶︎『頑張るのをやめて呼吸をするようにやればいい』
今回前編、後編の2本立ててお届けするのは、WI副代表の植之原にとって大先輩にあたる猪熊真理子さん。
東女を卒業した後に、リクルートに入社。“多様な価値観の多様な幸せを女性たちが歩めるような未来”を目指し、女性のキャリアや心理的な支援活動などを行っている真理子さんの就活ぶっちゃけ話から、1つ1つの経験の活かし方まで伺いました!今回は後編です!
猪熊真理子さん:東京女子大学文理学部心理学科卒業。2007年にリクルートに入社。「ゼクシィ」や「Hot Pepper Beauty」などの事業で事業戦略、ブランドプロモーション戦略、マーケティングなどに携わる。14年2月にリクルートを退職し、3月に株式会社OMOYAを設立。主に女性消費を得意とした、経営・ブランドコンサルティングや企画マーケティング、組織のダイバーシティーマネジメント改革、企業内の女性活躍推進などを行う。社会人女性の学びの場「女子未来大学」ファウンダーを務め、多様な価値観の多様な幸せを女性たちが歩めるような未来を目指して女性のキャリアや心理的な支援活動などを行っている。また、一般社団法人 全日本伝統文化後継者育成支援協会の役員、at Will Work 理事を兼任。著書に『「私らしさ」のつくりかた』(サンクチュアリ出版)。
「自分らしさは世界中ただ1つのオリジナル」
WI大山:社会人の先輩に会って話を聞きながら、私の中での肌感として、母親から強く影響を受け、ライフステージを含めた選択をしていく女性が多い気がしています。真理子さんにとって、ロールモデルのような強く影響を受けた女性はいらっしゃいますか?
真理子さん:インスパイアされた方は何人もいます。東女のOGである画家の岡本太郎のパートナーだった岡本敏子さんや、瀬戸内寂聴さん。学生時代にはお二方の本を読んで影響を受けていました。自分の軸があってブレず、強さと愛がある。そんなお二方に学生時代は憧れていました。
リアルに憧れている方で言うならば、シンクタンク代表の藤沢久美さんや、女子未来大学の京都校で講師として来て下さった京都の京うちわ 小丸屋の女将である住井啓子さん。住井さんは人としてホスピタリティーも思いやりをお持ちで、さらに美意識もあってチャーミング。
女性たちの生き方やライフスタイルが多様化しているので、私は「ロールモデル」のことを「カスタムキャリア」と呼んでいます。ロールモデルのように1人の人に憧れるのではなくて、1人の女性として憧れるのはこの人、妻として理想の夫婦関係を築いているモデルはこの人、家族、母として人間として憧れる人はこの人のように、ハッシュタグをつけて各テーマごとにロールモデルがいていい。それをカスタマイズして理想、憧れ、何を美しいと思ってどう生きたいかという価値観を自らのオリジナルで作っていく。こういう方がいまの時代に合っているかなって思っているんです。
片山:同じ経営者として猪熊さんが尊敬している方、この人を目指して生きていきたいという方は、いらっしゃいますか?
真理子さん:人は絶対自分以外の誰かになれないし、自分以外の誰かになる必要はない。素敵で尊敬している女性起業家の方は沢山いますが、目指している方はいません。女性は憧れやすいので、憧れの人が前を歩いてくれて、理想が見えているとヒントや答えを出してくれて楽ではあると思うんです。
でもそうなれるわけじゃない。もちろんエッセンスやエンパワメントを受ける方は沢山いらっしゃるけれど、私は未開の地を歩みたいという気持ちも強い。 この人になりたいと思うのは悪い訳じゃない。とはいえ、どこかで冷静に誰かの自分らしさと自分らしさは違う。自分らしさは世界中オリジナル。キャリアとして素晴らしいと思う方はいるけれど、その方になりたいわけではない。みんなそれぞれ理想像はあるはずだけれど、大学生の時はそこまで考えてなかったかもしれませんね(笑)
「言語化できるだけが自分らしく生きているってことじゃない」
WI植之原:“自分らしさは人それぞれ”と仰っていましたが、猪熊さんらしさや強みを表すとどんな言葉になりますか?
真理子さん:これです。このまんまです。
WI植之原:なるほど(笑)
真理子さん:めっちゃ困らせてるね(笑)みんな自分らしさを言葉にして説明しようとするよね。私は自分らしく生きていると思っています。自分らしく生きているし、自分の人生に満足しているし、自分の命を使って生きている。そこになんも嘘偽りもない。でも自分らしく生きているからってそれを言語化できるかっていうのはイコールじゃない。
言語化できるだけが自分らしく生きているってことじゃない。人間ってもっと複雑で多様な側面があって、かつそんな複雑な要素が互いに関係し合っている。自分らしさを適当に言うことや一部分的に言うことはできるけどね。
例えば見た目と中身のギャップがある。私らしさですって言えるけれど、それは一側面でしかないと思っていて、らしさってトータル。ギャップと◯◯と◯◯と◯◯が合わさるのが、オリジナル。全て言語化して説明するって難しい。それよりは私は「自分は自分らしく生きている、働いている、暮らせていると感じていますか?」、「今の自分に満足していますか?」と聞いた方が、自分らしく生きているかどうか分かると思います。必ずしも言語化しなきゃいけないのかな?とかね。
WI大山:私も自分らしさを聞かれても分からなくて、ありのままの自分というフレーズの意味って何だろう…って考えて、揺らいでしまうんです。ただ私が中3の頃から父が闘っている難病を治したい!と願いながら家族で過ごしていたら、「次の瞬間誰が死んでもおかしくないから後悔しないように生きよう」っていう自分の中でのモットーが生まれた気がしていて…。
そこはきっとこれからもブレなくて、今この瞬間の幸せを見続けたいという気持ちが、日に日に強まっているかなって思います。こういうのが自分らしさっていうんですかね?(笑)私も真理子さんのモットー「意志あるところに道はひらける」という言葉のように、モットーが欲しいです!(笑)
真理子さん:人生のモットーではあるけれど、元々コンセプトにしようとしたわけではありませんでした。自分が信じて体現していることがこれだったからモットーや生き方の信念に変化した感じです。
言葉が先にあって、それにインスパイアされることはいいことですが、他の言葉にも目移りしてしまうと軸が定まらなくなってしまう。自分がどう生きたいのか考えた際に、自分が体現してきたことを含めて自分のベースが何であったかを考えると、私は「意志あるところに道がひらける」という言葉でした。
より良い未来を作りたいと思えば本当にそうなると信じていて、その未来を築くために必要な人と出会うことができ、経験をさせてもらえる。もしインスパイアされた言葉が沢山あり、どれか1つに絞りたいと思ったなら、過去の今までの自分に1番フィットする言葉を選ぶといいと思います。自分が経験してきたことや体現してきたことは限られているので、自分にしっくりくるかどうかを軸に言葉を選べば迷わないんじゃないかな。
「頑張るのをやめて呼吸をするようにやればいい」
WI大山:真理子さんのFacebookを見ていると人との繋がりが深い印象があるのですが、これだけは守ろうと決めていることはありますか?
真理子さん:人として誠実であること。私自身が相手を肩書で判断せず、1人の人間として自分が出来る期待値以上のことでできるだけ役に立つ努力をするように心掛けています。
ただ誰かと出会うときに覚えてもらうには、キャッチーな肩書があった方がいい。自分が本当にやりたいことを伝えるために、魅力的な肩書きをつけてもいいと思います。一方で人脈は信頼関係を構築していないと関係性は続かず、一瞬の花火と何ら変わりはない。
私という人間を知ってもらい、また相手という人間を理解した上で、お互いの信頼関係が作れるかどうかは出会った後にどのような会話をして、お互いに人間として理解し合っていけるか。普通の会話の中にこそ、その人の人間性が出てくると思うんです。
私が周りからどう思われているかは、私には分からないので気にしていません。私は私が出来るDO MY BESTを尽くしているだけ。それが社会の中にポジティブに受け入れられるか、他者の心の中にネガティブに受け入れられるかは、私にはどうにもできない。分からない事なので気にしていません。
WI大山:ウーマンズを1年以上続けながら(取材当時)、よく分からない!みたいなことがいっぱいで、頭と心の整理が追いつかなくて、辞めちゃいたいって思ってしまったんです。でも「ウーマンズを頑張るという結論に戻っているよね」と言いながら、家族や友人たちが応援してくれて。自分の中で大切なモノはいっぱいあるけれど、その中心にウーマンズがあると答えは出ているんです。分からないことだらけだけれど、「憧れを追い続けたらそれがゴールになる」という真理子さんの言葉に励まされました。
真理子さん:「頑張ってやる」という感覚は少し違くて、頑張ってやると別のところにエネルギーを使ってしまうから、頑張るのをやめて呼吸をするようにやればいいんだよ(笑)
私は頑張って女性支援をしているわけではなくて、「目の前に困っている人がいたら、その人のために何かしたい」と思う自然な気持ちから活動を続けています。女子未来大学も、私だけが学びを共有するだけでなく、女性たちと学びをシェアしたいという思いがあります。
頑張って人を助けようとすると、変なお節介にとられることもあるし、自分自身にも無理がきてしまうかもしれない。だから、自然とやれたらいい、自分の中の感覚が1番大切。無理して行うのではなくて、「自分がやりたいからしている」という感覚がどこまでお腹に落ちているか。
頑張ってやると見返りを期待してしまいやすいもの。例えば、恋愛でも彼氏に過度に期待してしまうと関係がおかしくなってしまうことがありますよね。「好きな人と一緒にいられたら幸せ」と思っていればと、自然とそういうことが少なくなります。これが頑張るか、頑張らないかの大きな違いです。息をするように自然にやるという感覚ですね。
(文:植之原里沙&座間琴音&川上涼帆、構成:吉岡華織&稲葉結衣、編集:大山友理)
Women's Innovation前HPブログ掲載記事を再編集)(2018年9月20日取材)
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