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「知らないこと」=「知らなくてもいいこと」ではない。知らないことで人生が変わるかもしれない。

こんばんは、saoriです。

今回は助産師として発信したいという想いに至った私について、出会ってきた患者様方から頂いた学びをもとにお話しさせていただければと思います。

助産師になるまで

私は、子供のころからあまり体が強いほうではなく、謎のだるさや低体温に苦しみ家を這って移動することもありました。病院に行っても「思春期だから」の一言。こんなに苦しいのに、どうして世の中の人はあんなにエネルギーにあふれて生活しているんだろう、そう本気で思っていました。

中学生のころ、恩師に「将来は何になりたいか」と突然聞かれ、それまで将来はキラキラした世界にいたい、としか考えていなかった私の口から自然に出た職業は意外にも「医師」でした。産婦人科の医師になりたいとその恩師に私は話していました。

確かに当時の私は初経がなかなかこず、本当に自分の体は正常なのかと日々考えていたからそう自然と言葉になったのかもしれません。

それから産婦人科医を目指していた私は、国立大学医学部の高い壁にぶち当たり、医学部は医学部でも保健学科看護学専攻に進むことになりました。看護師を志望したのは医師の次に自分をケアしてくれたことのある医療職だったからかもしれません。不純な動機で恥ずかしいばかりです。

しかし、看護の道を志すにつれ「産婦人科領域のプロフェッショナルになりたい」と心から思うようになりました。そして助産学校へ進学し、助産師にの資格を取得しました。

助産師=分娩介助というイメージがある方、そんなイメージもない方も読者の方にはおられるかもしれません。正直、私も助産師がこんなにも女性に寄り添うことのできる職業だと、助産師になって本当に良かったと思えるようになったのはつい最近のことです。

出会い多くの学びをくださった患者様

助産師になり、最初に就職した病院は「低所得者層」を受け入れる総合病院の産婦人科でした。私はまず、そこで様々な現実に直面し衝撃を受けます。

退職してもう何年もたっていますが、印象に残っている…というよりはその後を案じる患者様は何人もいます。15~6歳の妊婦さん、彼女は高校生で初めての性交渉で妊娠し、誰にも言えずに中絶できる週数をとっくにすぎてから母親とともに病院に受診しました。ほかにも退院直前にあと2万円しか全財産がないと泣き崩れるシングルマザーにも出会いました。

一時期話題になった飛び込み分娩。出会ったお一人は夜の仕事をされている方、救急車で運ばれてきた際はおなかが小さく救急隊も妊娠とわからなかったほど。いざ超音波で確認すると今まさに赤ちゃんがうまれてくるところでした。ほかの方では都内に普通に通学する大学生。誰にも言えず分娩をむかえ、おなかの痛みで救急車で病院に運ばれてきました。彼女は自分に何が起こっているのかよくわかっていない様子で、一方で親御さんのが顔色を変えて飛んできた状況が今でも鮮明に目の前に広がります。

その次の職場は中絶を1日複数件行う都内のクリニックでした。梅毒に全身おかされている10代の女性、1年に何回も中絶を受けに来る女性。そして緊急避妊薬を取りに来る女性の多くは一切避妊をしていなかったり、誤ったコンドームの使用方法で心配と処方を受けに来る女性。そして、そういった緊急避妊薬を取りに来る女性にピルの内服を進めても続かず、再び取りに来る…そんな女性にたくさん出会いました。

そして今は不妊治療のクリニックで勤務しています。もちろん、20代後半や30代で何らかの因子で不妊治療が必要な患者様もたくさんいらっしゃいます。しかし、目を向けるべきは40代の治療している患者様の圧倒的な多さです。

もちろん、妊娠を望んでいながらなかなか恵まれず月日が経ってしまった方もいらっしゃいますが、43歳、44歳になって「妊娠したい」と「タイミングや人工授精」を希望してご来院されます。この状況を知り、強く「知ること」の大切さを痛感し発信を始めようという想いに至ったのでした。

「知っていれば」なにか変わったのでは

まわりくどくなりましたが、総合病院で出会った若年妊婦、貧困に苦しむ褥婦、妊婦検診未受診妊婦。彼女たちのその妊娠は「希望するタイミング」での妊娠だったのでしょうか。

梅毒に侵される女性、何度も中絶を繰り返す女性、緊急避妊薬を何度も取りに来る女性。もちろん病院にアクセスできていることは素晴らしいことです。しかし、その前に「自分を守るすべ」を知っていたのでしょうか。

高齢な不妊治療の患者様。彼女たちの人生設計に「妊娠する時期」はいつ頃組み込まれていたのでしょうか。

自分の人生を自分の意思をもってコントロールできる

妊娠や性交渉にまつわる様々な問題は一生付きまといます。妊娠できるのは生物学的に女性のみです。言い換えれば希望しない妊娠を「背負う」のは女性です。

セクシュアル リプロダクティブ ヘルス ライツ=SRHR 性と生殖に関する健康と権利 という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

自分の人生を自分で選択できるように、そんな本来は当たり前のことを謳っています。私が出会ってきた女性たちはSPHRをきちんと行使し、自分の人生を自分の意思をもってコントロールできていたでしょうか。

初経を迎えていればたとえ1回でも性交渉をすれば妊娠する可能性がある。コンドームは避妊の力は十分とは言えないが、性感染症予防のできる唯一の道具。性交渉の最初から最後までコンドームの装着は必要。

女性の妊娠率は35歳を過ぎると急激に低下する。卵子の数は生まれたときに決まっている…

これを彼女たちが知っていたら。

もしかしたら結果は同じかもしれない。でも、知っていたら「自ら考えることのできた」結果であり、同じ結果でもその価値は異なると私は考えています。

発信することで、足の延ばしにくい産婦人科を人生のパートナーとして必要な診療科に感じていただき、少しでも「知らなかった」後悔がなくなれば、そんな未来を創るちょっとのお手伝いができればいいなと思っております。

ゆっくり様々なトピックスを取り上げていければと思います。

朝晩冷えますが、明日は中秋の名月です。月に思いを馳せながら前を向けるような何かできることをしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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