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[移植]読書録『ウォンバットの撫で方』第2回 最初のウォンバット「スマッジ」

livedoor Blog うぉんばっとのぽっけより移植
2018年02月04日

G'day! 中の人二号=ユウトです。

可愛くて気になる黄色いウォンバット本 How to Scratch a Wombat を実際に読んでいく連載第2回は,いよいよ表紙をめくって本文に突入します。

ジャッキーとスマッジの出会い

著者であるジャッキー・フレンチは今でこそ第一線の著述家ですが,その作家デビューは驚くほどユニークです。30年以上前にニューサウスウェールズのアラルーアン渓谷に居を構えたジャッキーは,結婚生活と果樹園経営の両方に失敗し,自動車登録費用捻出のために本を書こうと考えます。ごみ捨て場から拾ってきたタイプライターを戸板で作った即席デスクに据え,物語を書き始めるのです。

さて,この居宅を囲むように縄張りを持っていたのが,ジャッキーの「生涯最大の友人」となるウォンバットのスマッジです。スマッジにしてみれば縄張りに突如訳のわからない構造物が現れたわけで,内部まで立ち入ってテリトリーの証である糞を撒いてくる権利が当然あるということになります。ドアなど簡単に破って入ってくるので,ジャッキーはスマッジの侵入阻止を早々に諦め,就寝時も扉をあけっぱなして彼が出入りするに任せる生活。翌朝には,「僕の縄張りにあるタイプライターは,すなわち僕のタイプライターだ」と言わんばかりに,キーの上に「落とし物」が乗っているのでした。

スマッジの「ふん」で作家デビュー

ある夜,食事中のスマッジを眺めていたジャッキーは,すばらしいストーリーのアイディアを閃きます。夢中でタイプライターに向かいキーを打つジャッキー。(もちろんスマッジの落とし物は毎日きれいに拭いています。)スマッジは戸口で居眠りをしながら,タイプライターの改行音が響くたびに鼻先をよじらせます。こうして完成した原稿は,スマッジのせいで効かなくなっていた文字だけ後から手書きで書き足してあったり,一部には落とし物の「しみ(smudge)」が残っていたりという代物。それでも出版社に送ってみたところ,あまりに独特な原稿だったためか目に留まり,さらに原稿をリクエストされ……なんと,このことをきっかけに作家のキャリアを歩み始めたのです。

ちなみにジャッキー・フレンチのWEBサイトを読むと,ウォンバットの糞のおかげで作家デビューした話は彼女のファンの間で有名らしく,あまりに繰り返し言及されすぎて,「もう飽きてしまったので話題に出さないでほしい」なんて書いてあります。

野生のウォンバットを野生のまま敷地にも住宅にも受け入れ,彼らのなすがまま,人間の側が合わせて生きていく生活。実際は大変なのでしょうが,むやみに憧れてしまうのは私だけでしょうか。もしこのブログを書いているパソコンに糞を乗っけられたとしても,ウォンバットのだったら許せる気がします。

さて次回は第一章の続きを読みます。「モスボール,そしてダイアリー・オブ・ア・ウォンバットの誕生(1)」をお楽しみに。それでは。

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