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[移植]読書録『ウォンバットの撫で方』第4回 モスボール,そしてダイアリー・オブ・ア・ウォンバットの誕生(2)
livedoor Blog うぉんばっとのぽっけより移植
2018年02月18日
G’day! 中の人二号=ユウトです。
可愛くて気になる黄色いウォンバット本 How to Scratch a Wombat を実際に読んでいく連載第4回は,前回に続き,アラルーアンに引き取られてきたモスボールのその後を読んでいきます。
モスボールの家探し
無事にアラルーアンに引き取られてきたモスボールは,その後まるまると肥えて敷地内の気に入ったところに穴を掘り始めます。最初の穴はうまく掘れなかったものの,ハーブ畑に掘った二つ目の穴は上手に掘り進んだ様子(ハーブ畑は一晩で土の山と化しました)。ところが,数日後に畑のスプリンクラーで水を撒いたところ,モスボールの家は水漏れを起こしたらしく,この二つ目の穴も諦めて出てきます。結局「中古物件」を見つけてリフォームすることに決めたモスボール。ラベンダーを千切ってきては寝床に敷いて,いいにおいのウォンバット穴の完成です。
さてこの冬,ジャッキーの夫妻はハーブ畑の跡地に寝室を増築することに決めるのですが,この増築部分の階段口の真下にモスボールの残した二つ目の穴の入り口が重なっていました。モスボールは別の穴に住んでいるのだから問題なかろうと思って工事を進めると,何と床板の完成に合わせてモスボールが戻ってきてしまいます。どういう訳か水漏れの心配がなくなったことを理解したらしいのです。
こうなると,ウォンバットが穴を諦めるか,人間が家を諦めるか。答えは明白,人間が家を諦め,モスボールは突如としてコンクリートの石畳にパティオにベランダまでついたオーストラリアで一番ぜいたくな(ということは世界一ぜいたくな)穴ぐらを手に入れたのでした。
Diary of a Wombatの誕生
あるときジャッキーは「モスボールの様子を絵本にしたらどうだろう」とひらめき,出版社に持ち掛けます。イラストレーターのブルース・ワットリーが描いたラフスケッチがさっそく送られてきます。モスボールの的確な描写に捧腹絶倒するジャッキー。ブルース・ワットリーの絵はウォンバットを絶妙な具合に表情豊かにデフォルメしてあり,これがジャッキーのユーモラスな語り口と化学反応を起こして,2002年に出版された絵本 Diary of a Wombat はオーストラリア中で大ヒットを記録します。さらには数々の賞を受賞し,各国語への翻訳版も出版され,ジャッキー・フレンチ&ブルース・ワットリーのコンビはその名をとどろかせます。そしてこの作品は,Diary of a Wombat シリーズとして続編も出版され,今では不動の名作とさえ評価される絵本界の古典になりました。これらの絵本シリーズのモデルとなったウォンバットこそ,キャンベラで重傷を負い,ジャッキーに引き取られてきたモスボールだったのです。
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Diary of a Wombat [ペーパーバック]
Jackie French
HMH Books for Young Readers
2009-03-23
ジャッキーは,How to Scratch a Wombat を,Diary of a Wombat を補完するノンフィクションの兄弟分として書いたと記しています。そこには,自分の本が海外でもベストセラーとなってしまい,もはやウォンバットが何なのかよく分からない人たちにまで読者層が広がっている現状に対して,「ウォンバットはクマでもタヌキでもなく,こんなに愛おしいオーストラリアの隣人たちなのだ」と知ってもらいたいという願いが込められているようです。
Diary of a Wombat は海外から在庫を取り寄せることもできますし,こちらのサイトでは著作者の許諾のもと子供向けの読み聞かせの動画が公開されています。また,同じ内容の動画はYouTubeからも見ることができます。
日本でも『ウォンバットのにっき』というタイトルで翻訳版が出版されていましたが,現在は在庫の取り扱いを見つけることはできませんでした(当ブログの読者の中にも,お手元にお持ちの方もいるのではと思います)。
さて次回は第二章 "The History of Wombats" へとページを進め,ウォンバットの進化の歴史を読んでいきます。それでは!