SAFE/セイフ
以前ジュリアン・ムーアさん主演の「SAFE」という映画のことを書いたと思いますが、それとは違う「SAFE/セイフ」という、ジェイソン・ステイサム主演の子連れアクションを今回はご紹介します。監督はボアズ・イェーキンさんというあまり聞かない名前の方でしたが調べてみるといろんなことやってる人でした。
チャイニーズマフィアが一人の天才少女にある数列を覚えさせて、その数列を欲しがるロシアンマフィアに誘拐されそうになりそこにジェイソン・ステイサムが通りがかって助けたことから「グロリア」とか「レオン」のような子連れアクションになるという展開なのですが、そうやって要約して想像する映画とは微妙に違った印象を受けると思います。
まず一概に悪いこととは言えないのですが少女とステイサムが出会うまでがかなり長いです。一時間半の映画で30分たっぷり使っています。まあそれなりに出来事は起こっているので退屈はしませんが、冒頭のあらすじを知っていると「まだ出会わないのか……?」とちょっと不安になるに充分な時間とも言えます。その時間を使ってステイサムの方はロシアンマフィアとの因縁を描けていいのですが、少女側のドラマの方が弱いと思います。まあしかし出会ってからはいつものステイサム映画と同じようにド派手なアクションで楽しめるのでいいでしょう。
それぞれのマフィアが少女を手に入れようと、争いが始まるわけですが、マフィア同士の戦いに加えて警察も結構参戦してきて、さらにダーティーな警官でいっぱいなので街中で戦争映画並みに銃撃戦が行われ、ばんばん死人が出るのでちょっと驚きました。たいていこういう映画ではマトモに警察と事を構えると終わってしまうので(さすがに警察の方が強いはずなので)そういう事態を避けながら物語が展開するのが普通なんですが、どっちのマフィアも警官だろうが何だろうがお構いなく撃ちまくるのでもう血の気が多い人は大喜びでしょう。
ステイサムのアクションは相変わらずで、銃を撃ちながらも、隙があればキックや投げなどのマーシャルアーツ的な動きをねじ込んで来て、両者のよいところを組み合わせたアクションシーンとしてかなり完成度の高いものとなっています。東洋人なら全員カンフーで戦っても違和感ないでしょうが、西洋人だとおかしいというのが全ての映画共通のルールなので、キックをする時も今ならキックが入るという距離でしかキックを出さないというリアルさを維持していて、もちろんステイサムさんの売りだからわざわざいろんなファイトスタイルを織り込んでいるんですけど出来る限り自然に見えるように演出されていていい感じです。
そういったアクションだけで通す映画だったら文句は無いんですが、まあいろいろやろうとしすぎて中途半端になっているきらいもあります。この手の映画にあまり細かいことを言ってもしょうがないのですが、例えば天才少女が暗記していた数列をステイサムも普通に覚えられたりしたのは「それ映画の根本のコンセプトぶちこわしだろ」とちょっと突っ込みたくなりました。あと子連れアクションと思いきや途中で二人が分断されるシーンが意外に長くて、そのせいでアクション的には羽目を外せましたが、ラストで二人の心が通い合うシーンでは、そこまでこの二人交流してないだろと思わなくもありません。あと気になったのはぶち殺すのは雑魚敵ばかりで、本当に憎らしい敵は見逃すのでどうにもスカッとしない気もします。言ってもしょうがないと書きながらけっこう書いてしまいましたね。
しかしまあ、なんか時間を潰すのに適当なアクション映画ないかなーと思っている時は普通に楽しめる映画で、ジェイソン・ステイサムさんの映画ってなかなかの安定感があってオススメだなと再認識した次第であります。今回役名じゃなくてずっとステイサムって書いてましたね。でもなんかステイサムさんの場合はその方がいいかと思えるので、このままにしておきます。アクションスターとして第一人者になったという証だということにしましょう。