オール・ユー・ニード・イズ・キル

 先日感想を書いた「ハッピー・デス・デイ」シリーズにちなんで、死に戻りループ映画として有名な「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の感想もちょっと書いてみたいと思います。かなり公開から経ちましたし、最後までネタバレ全開で書いてしまいますので、未見の方はお気をつけ下さい。というか読まないでください。

 まずこれは日本のライトノベルが原作で、それで興味を惹かれたというのがあったんですが、まあタイムループ物で、死にながら真相に近づくという私の大好きな感じの内容だったので、さらに言うと主演がトム・クルーズ、監督がダグ・ライマン(昔はリーマンだったような……)ということでもう観ることは確定していたと言っても過言ではありません。

 お話は、謎の侵略者と戦争している近未来で、軍の広報担当のトムがちょっとしたトラブルから前線に送られてしまい、敵の体液を浴びてしまったことから、死ぬ度に何度も同じことを繰り返すループ状態に落ちいってしまうところから始まります。正直、ちょっと冒頭の展開は強引と思ってしまいました。ニュース映像を駆使して現状の説明をしたり、兵士ではないため戦闘の素人同然のトムをいきなり戦地に送り込んだり、時間の制約やそういうお膳立てをしなきゃならないからしょうがないんですが、まあ無理矢理感は否めません。しかし、観ていると気にならなくなってくると言いますか、強引でもいいか、と思えてきます。

 というのもいきなり投入された戦場が、パワードスーツを着て降下したらそこは化け物相手にノルマンディーやってました、というような感じで、映画版「スターシップ・トゥルーパーズ」でパワードスーツの存在が省略されてしまったため我々が観ることができなかった映像を、最新の技術でようやくちゃんと観られたと溜飲を下げることができるのです。これを見せてくれるなら少々の強引さなどに文句をつける気は起こりません。罰が当たります。

 トムはほとんど戦闘経験はないため武器の扱いも分からず、逃げ回っているだけなのですが、そのうちでっかい奴(アルファとかいう敵)に襲われたので、地雷を抱えてそいつと一緒に爆発します。ところが死んだと思ったら前日の朝、空港に着いて目覚めた瞬間に立ち戻るのです。そして同じことを繰り返します。そのうち英雄的な女性リタと出会って、謎が解けていくのですが、一言で言ってしまうと敵のボスが時間を巻き戻す能力を持っていて、前述のアルファという、雑魚敵を統括する中ボスがやられると「ヤバい」と思って時間を巻き戻すわけです。まあそういうズルをしているので人類に勝ち目はないわけです。ところがトムがそのアルファの血を浴びて、たぶんトムの体内にも入ったため、トムが死ぬと「アルファがやられた」と誤認識するようになったのでしょうね。その度に時間を巻き戻してくれるようになったのです。一種のバグのようなものでそのバグを利用したチートでもって逆に奴らを出し抜けるんじゃないかとトムは孤軍奮闘します。

 と言ってもやることは何度も死んでその度にちょっとずつ進むという、ゲームの攻略みたいな感じです。そこら辺がちょっとコミカルで人によっては真面目にやれと思うかもしれませんが、こんなに何度も同じこと繰り返していたら命の大事さとか感覚が麻痺してくるよなあとちょっとその辺はいろいろ考えさせられました。何度かループする間にはもう嫌だと戦いから逃げたり、本当にしょうもないことで死んだり、だんだん同じことの繰り返しで投げやりになっていったりと、テンポのよい編集でちゃんとトムの心情の変化を見せてくれます。

 結論としては、アイデアの良さとテンポとトムの頑張りで良質な娯楽映画になったというところでしょうか。とんでもなくびっくりするような何かが用意されてるわけではないのですが、ほどよくヤキモキさせてくれて観ている間はかなり楽しめます。一つ感心したのは中盤、ボスの潜むところへ行くのにヘリを使おうとするところで、リタを一緒に行かせまいとトムが頑張るのですが、そこですでにトムが何度もここに来て、いろいろ試してみたと判明するところで、冒頭からカメラがトムに寄り添って省略はあるものの全ての情報を開示してるかと思いきやいつの間にかリタ視点になってて、トムが知らないうちにループを重ねていたことが明かされるところがちょっと「おっ」と思いました。

 あとはラストが見事だと思いました。さんざん理屈をこねたりアクションしたりしましたが、それは置いといて最後にループで戻って、リタと再会できトムが笑顔を浮かべるところでスパッと終わるタイミングが本当に見事で、これだよこれ! と嬉しくなってしまいました。のでいろいろ細かく考えたらおかしなところもあるかもしれませんが、そういうところを長々と言い訳するのでなく、トムの笑顔で、それはもういいかと思わせちゃうこの終わり方は、エンターテインメントとして一つの正解なんだろうなと思った次第であります。言っていることがよく分からないとは思いますが、まあそんな感じです。

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ウルフガー
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