ザ・ライト エクソシストの真実

 本日はアンソニー・ホプキンス主演のオカルト映画「ザ・ライト エクソシストの真実」について書きたいと思います。オカルト映画なんて久しぶりに書きました。もちろんタイトル通り悪魔祓いのお話でございます。けっこう前に公開された映画ということで、最後まで全部ネタバレしてしまいますので、未見の人はお気をつけください。

 もうエクソシストと言えばウィリアム・フリードキン監督の「エクソシスト」という名作があるので、これから同じようなテーマを扱った映画を作るとするなら、いかにそれを超えるか、いかにそれと違った切り口で語るかというところが争点となってくるわけですが、この映画ではひたすらリアリズムにこだわるという切り口で押していきます。実話が原作になっているということですが、この映画版も全てが本当のことではないにしても、映画的誇張はほとんどないのではないでしょうか。面白いのはこの作品内にも「エクソシスト」という映画が実在していて、「首が回ったり緑色の液体を吐くと思ったか?」とそれに絡んだセリフがあったりします。

 まず主人公が葬儀屋で働く青年マイケルで、働くというか実家が代々葬儀屋をやっているので仕方なくそれを継ぐしか無いという境遇で、それから半ば逃げ出すような形で神学校に入ります。イマイチ信仰のないまま優秀な成績は修めていくのですが最終的に神父になるのを諦め学校を去ろうとした矢先、ある事故が起こります。交通事故で人が死にかけるのですが、死に際の被害者に祈ってやって安らかに送ったのを見込まれ、それでも信仰心がないからとしぶるマイケルに第三の道が示されます。ローマにあるエクソシスト養成学校です。この辺り実話なんでしょうけどもの凄くワクワクします。実際にローマで撮影されてますし、現地では英語は通じませんし、かなり真面目な映画だということがここで分かります。パッと思いついて撮ったような映画ではありません。

 その学校でマイケルはまず悪魔憑きについて懐疑的で、精神疾患とどう違うのかということにこだわり、講師に手を焼かせます。そこで講師は実際のエクソシストをマイケルに紹介します。ルーカスという変わり者の神父で、これがアンソニー・ホプキンスです。

 このように若者の成長を助ける師匠役として登場するだけあってホプキンスの芝居が素晴らしすぎます。もう映画はホプキンス中心に動いていってマイケルは終止圧倒されているんですけど、それは物語と合っているので問題ないのです。ちょっとした「赤ひげ」です。主人公のマイケルを演じているのはほぼ無名の新人で、よい対比になっています。これが映画のキャスティングというものでしょうねー。主人公がいくぶん頼りなく見える方がクライマックスのハラハラ感が盛り上がるからです。そう言えば「羊たちの沈黙」もそうでした。

 前半は少女の悪魔祓いが中心に行われます。妊婦なのですが、マイケルは少女が父に暴行された末、悪魔に憑かれたという妄想を生み出したのではないか、という見解を示します。医学的、科学的な見方です。少女の体調もあり、ルーカスは数ヶ月にも渡って祓っているのですが、なかなか成功しません。ついに病院で様態が急変し、母子ともに亡くなってしまいます。これでルーカスは信仰に疑問を持ち、悪魔に憑かれてしまいます。

 いよいよ凄みを増すホプキンスの芝居ですが、こうなってくるともともと信仰心の薄いマイケルでは太刀打ちできません。さらに父の死や、それにまつわる超常現象、また悪魔から自身の罪について責められ、打ちひしがれていきます。しかしこの映画の真骨頂はクライマックスにあります。中盤まで悪魔憑きに懐疑的だったマイケルですが、これの何が問題かというと悪魔の存在を疑うということはとりもなおさず神の存在を疑うということだからです。それを布石にしておいて、ラストで圧倒的な悪魔の力を示され、悪魔の存在を信じたとき、それゆえに神の存在を信ずることが出来、揺るぎなき信仰をはじめて手に入れることが出来るという大逆転が素晴らしいです。ビジュアル的には全く派手さのない映画なんですが、キャラクターとドラマの作りがしっかりしていて、このように盛り上がる展開をちゃんと用意してくれているので、観終わったあとの満足感は最高です。

 冒頭の事故をはじめとして、日常のすぐそばに死が隣り合っているという事実を常に意識させるような演出が地味ながら感心します。道を歩いていても主人公でも下手したら事故に遭って死んじゃうんじゃないかというサスペンスが最初のうちはありました。ストーリーには関係ないんですけどこういう試みはちょっと面白いと思います。最終的に悪魔は実在するのかどうかなどという結論はどうでもよくなって、マイケルの成長に焦点が当てられていて、ブレの無い良い映画だと思います。ちょっと小さな子供をお持ちの親御さんにはキツいシーンがチラホラありますので、その点はお気をつけ下さい。そこまでヒットしたというわけではないんですが、オカルト・ホラー映画の秀作ということで、ちょっとオススメの映画のご紹介でした。

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