Mr.&Mrs.スミス
さてアルフレッド・ヒッチコック監督の「スミス夫妻」のリメイクかと思ったら全く別物の「Mr.&Mrs.スミス」の感想をついでに書いていきましょうか。この映画、かなり公開するまでかなり楽しみにしていました。予告がよく出来ていたのです。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが夫婦で戦う? しかも監督が「ボーン・アイデンティティー」のダグ・リーマンです(今はダグ・ライマンでしたっけ)。面白くならないわけがありません。夫婦が戦う映画と言えば「クレイマー・クレイマー」や「女と男の名誉」、はたまた「ローズ家の戦争」など面白いもの(あくまで私の基準ですが)が多いので、期待値マキシマムで鑑賞しました。結論から言うと、実に手堅く作られた上質のアクション映画でしたね。中盤までは互いに正体を隠しながら生活する殺し屋夫婦の対決までを描き、後半は組織を裏切って二人の共闘を描くという王道的展開で燃えました。
この二人が主演ですからアクションだけでなくロマンティックなシーンも満載です。二人の戦地での出会いから、いきなりダンス、そしてベッドインとやることは早いです。いくぶんコミカル要素を加えながら結婚、そして倦怠期、そして互いに正体がバレる運命的なミッションが訪れます。最初はそれでも踏ん切りのつかなかった二人ですが、誤解から戦闘状態に。それぞれの組織からも相手を消せと命じられ、激闘が展開されます。面白いのはジョリーの方が積極的にブラピを殺しにいってるところです。でもいざ死んだとなると取り乱します。ツンデレというやつでしょうか。最終的に自宅でガチンコ対決となるのですが、やっぱり殺すことができずにそのまま気分の盛り上がった二人はセックスで仲直りです。あとは組織へのお礼参りですが、ここからのアクションが凄かったですね。特に自宅から逃げる時のカーアクションはかつて見たこともないほどのスピードです。それでもちゃんとジョリーが運転しているように見えます。いったいどうやって撮影しているのでしょう。
そんなこんなで二人は逆に組織に撃って出るのですが、この辺の背景や組織の正体などがうやむやなのは、人によっては不満でしょうが、このくらいの描き方でちょうどいいと思いました。そんなことまでやっていたら時間がとても足りません。ようはブラピとジョリーの関係がどうなるかがテーマなので、敵など誰でもいいのです。最後に包囲された時に、一瞬ニューシネマを感じさせたり、互いに背を向け合ったり、向かい合ったりして銃を撃つ様をダンスのように撮ったりと、にくい演出が続きます(出会ったときの音楽がかかって泣かせます)。この時も銃を撃つ二人を撮るだけで、やられていく敵はそんなに映しません。ようするにそういう映画なのです。
惜しいのは二人がカウンセリングを受けるシーンでこの映画は終わるのですが、ここに限らず映画全体を通してあまり笑えるセリフがなかったことでしょうか。もっとスパッとオチを決めて終わってほしかったなと思います。それでもまあ、全体を通してみたらかなり満足のいく娯楽映画でした。それ以上を求めるものではない、ということでしょう。