グリーン・インフェルノ
見逃していたのをAmazonプライムビデオに見つけて鑑賞したイーライ・ロス監督の「グリーン・インフェルノ」の感想を今回は書きたいと思います。この作品は昔(70年代後期くらい?)にあった「食人族」に代表される食人映画を現代にそのまま蘇らせたような残酷映画で、私は特にそういうものを好んでいたわけではないのですが、やはりもう絶滅したかと思われたジャンルをホラー演出に定評のあるイーライ・ロスさんが撮ったわけですから、それなりに興味を持って鑑賞しました。
ひょっとしたら今でもこのジャンルは撮られているのかもしれません。ただやはりマイナーであったり日本には入ってこなかったり、比較的最近では「ラビナス」という映画もありましたが、これはゴア描写を見せるための映画ではなかったりで、本格的食人映画は個人的には珍しいと思ったのです(他にもあったらすみません)。で、この映画ですが、まあ大学生がジャングルの開発に反対するデモを計画して、なんだかんだで保護しようとしている部族に捕まって食われてしまうというシンプルなストーリーになっています。
もう冒頭から登場してくる大学生たちのステレオタイプな感じが、ああ食われるためだけの存在だなという風に見えて、こういう薄さが昔の低予算B級ホラーらしさをよく出しています。大作ではないものの、実際はかなり(当時のそういう映画よりは)予算があるはずの今作でそのノリを出しているということは意識的にそう演出しなければならないわけで、ロス監督の面目躍如という感じがします。
まあ序盤はゆったりと話は進んで(これも昔っぽい)、デモ活動から、警備隊みたいな人たちに捕まって、なんだかんだで解放されて、あれ? このテーマで真面目に作ってもそれなりに面白い映画になったんじゃないかなと思った辺りで、帰りの飛行機がいきなり墜落して急転直下の地獄めぐりとなります。この墜落シーンもけっこう力が入っていてショッキングな描写が飛び出します。こういうのは現在の技術があってこそのもので、今作る意義がちゃんと感じられて良かったです。
その後はむしろ最新技術のCGなどではなく、特殊メイクなどでちゃんと人体破壊を描写して、生々しいグロさというものを感じられました。こういうホラーを見慣れていない人にはちょっとキツイかもしれません。でも私みたいな年配の映画好きは懐かしく感じてしまいました。ただ、最初の料理シーンが一番強烈で、あとはそこまでグロいところはなく、仲間同士の醜い争いなどがメインになっていきます。もっとえげつないゴア表現満載かと思っていたので意外でした。でもリーダー格の男の利己的な面が露呈してくると、「こいつは酷い目に会って死んでしまえ」とか思ってしまい、こういう自分の中の闇の部分が露わになってしまうという意味ではいいホラー映画だったと思います。
そんなわけでほどよく楽しめましたが、主人公の友達が同行しないのになんか存在感出していたり、意外にラストが強烈でなかったり、あれ? 何か見落としているかな? という気にもさせる作りで、後々まで妙に心にしこりの残る映画となっています。ともあれ、ジャングルの自然の美しい緑と、そこで巻き起こる地獄絵図がいい対比になっていて、ジョン・ブアマン監督の「脱出」の線もちょっと狙ったのかなということも考えました。いや、違うかな。そんな感じですね。