【大分トリニータ】2023年シーズン総括
今回はシーズンが終わった大分トリニータのシーズンレビューを綴ろうと思います。シーズン最終勝ち点は2022年とさほど変わらないながらも、今季は前半戦を自動昇格圏の2位で折り返しながら、結果的に最終節を待たずして昇格の可能性が完全に消滅するという、ファン目線からしたら落胆の大きいシーズンに。2種登録や特別指定の選手を除く、全選手の個人的な採点をやってみたいと思います。
2023年全選手採点
◆GK
#1/高木駿…6.5
4試合出場(先発4)/4失点※シーズン途中に札幌へ完全移籍
今季は開幕から西川に正GKを譲ったが、連敗中だったGWの時期に出場。落ち着きのあるビルドアップで勝利に貢献したが、その後はグロインペイン症候群で離脱。戻ってきた藤枝戦での勝利に貢献した直後に電撃移籍。GK陣や精神的支柱を失ったチームに対する影響は勝敗以上に大きかった。
#22/新井栄聡…6.0
0試合出場(先発0)
秋田からの加入1年目は高木の離脱もあり第2GKとしてベンチ入りする試合は多かったが、試合出場はなし。高木が抜けた夏以降はGK陣最年長となる部分でサポートに徹したが、アップ時のハイボール処理の巧みさを見ると、1試合でも出場している姿は見てみたかった。
#23/テイシェイラ…5.5
5試合出場(先発5)/6失点
ブラジルからレンタル加入したGKは9月にようやく出場機会を得た。足元というよりはセービングとハイボールが特徴で、安定感は出場した3名の中では随一だった。ただ不運な部分もあったが出場試合の全てで失点した点と、兎にも角にも負傷離脱が多すぎた。
#24/西川幸之介…6.0
34試合出場(先発33)/46失点
彼にとっては飛躍のシーズンでもあり悔しいシーズンでもあった。プロ初出場を果たし、強みの足元を見せる場面も多かった。一方で若さから来る集中力の欠如が失点に直結したり、プレス耐性やセーブ判断など、厳しく言えば物足りないGKだったのも事実。勉強の1年となった。
◆DF
#2/香川勇気…6.0
13試合出場(先発11)/0G1A
昨季に続き厳しいシーズンとなったが、終盤戦にレギュラーを掴んだ。運動量を活かしたアップダウンが主ではなく、CBとして高畑のカバーに奔走する場面も目立ったが、堅実さと左足のキックはいぶし銀だった。夏場に稼働出来なかったのが悔やまれるが、コンディション調整を改善させたい。
#3/デルラン…6.0
31試合出場(先発26)/0G1A
開幕戦で空中戦の強さのみならず、誰もが度肝を抜かれたヒールパスで宇津元の劇的ゴールをアシスト。ブラジル人らしい遊び心や足元への自信、縦への楔のパスを見せたが、気分屋な部分もブラジル人ではあった。安定感とCBとしてはもう少し確実性があると使いやすかったが。
#4/坂圭祐…5.0
2試合出場(先発2)/0G0A
今年は彼にとって厳しい年になった。怪我なのかコンディション不良なのか不明だが初出場は9月30日、しかも本職でないSBだった。プレー自体は無難だったものの、彼の特徴である小柄ながら強い空中戦や、対角へのロングフィード等を見せられず。厳しい評価にならざるを得ない部分はある。
#19/上夷克典…6.5
32試合出場(先発26)/1G4A
開幕戦こそサブだったが、安藤の離脱で3バックの中央に入り序盤の躍進を支えた。4バックになってからは右SBとしてプレー。個々の試合でのミスはあったものの、CB時のフィードやSB時には高精度のクロスを見せ、時には偽SBのような振る舞いも披露。DF陣の影のMVPとも言える活躍だった。
#25/安藤智哉…6.0
27試合出場(先発22)/2G1A
開幕戦で大きなインパクトを残したストロングヘッダー。個人的に不安だった足元もそれなりにあったのは嬉しい誤算で、守備のみならずセットプレーではターゲットマンとして機能した。反応がやや遅く夏場は多くの失点に絡んでしまったことが痛恨だったが、ポテンシャルは見せた。
#27/松尾勇佑…6.0
16試合出場(先発10)/4G0A
今季唯一の大卒ルーキーとして加入。出場は初夏まで待つことになり、本職の右SBより1列前の起用が多かったが、磐田戦のスーパーゴールや山口戦の劇的同点ゴールなど意外なラッキーボーイ的な面を見せた。ただクロスの入れ方などは本職SBの面を見せており来季が楽しみな選手。
#29/高橋祐翔…評価なし
0試合出場(先発0)/0G0A
九州リーグからのレンタルから戻ってきた今季だが、待っていたのは厳しい現実。天皇杯でベンチ入りしたものの公式戦出場はなし。同じ左利きではあるが本職ではない香川が使われる一方で試合に絡めず、年齢的にも再レンタル修行も含めて危機感を感じてプレーする翌年に。
#31/ペレイラ…6.5
32試合出場(先発30)/2G0A
来日3年目、今季は副キャプテンとして梅崎・野村不在時にはキャプテンマークを巻く試合も。開幕は3バックの右CBからスタートし、パワフルな守備のみならず攻撃参加でも持ち味を出すなど、DF陣のまさにリーダーだった。ただ結果的に2度の退場を記録した部分は反省材料。
#41/刀根亮輔…4.5
0試合出場(先発0)/0G0A
昨季の大怪我から復帰したもののコンディションを上げられず。主将として出場した天皇杯の大分ダービーでは低調なパフォーマンスに終わり、その後は再び離脱。全くと言っていい程に活躍がなかった。年齢的な部分を考えても来季がラストチャンスの勝負の年に。
#49/羽田健人…6.0
23試合出場(先発13)/1G0A
今季は序盤戦を主にクローザー、夏以降はスタメンでスポット的にだが出場機会を得た。夏場のスタメン時期に失点が増えたことはマイナス点だが、縦パスなどの散らしの精度が向上。可変のアンカーとして守備時は跳ね返しつつ、攻撃時は効果的なパス供給など成長を感じたシーズン。
◆MF
#5/中川寛斗…6.5
30試合出場(先発22)/4G2A
やや馴染めなかった感のある昨季から、今季は下平監督の申し子として攻撃の貴重なピースに。落ちて受ける姿勢やFWへのラストパスは特に光った部分。また過去の経験から0トップ時の最前線でのプレス役も担った。終盤の離脱はチームとしても痛かった部分。
#6/弓場将輝…7.0
37試合出場(先発31)/4G0A
背番号6を背負い、名実共にチームの中心と期待されたシーズン、確かな成長の姿勢を見せた。前への飛び出しやボール奪取など、強みとも言える縦方向への強さを見せた他、4得点と得点力向上の片鱗も見せた。高い部分を要求するなら、夏場に一時離脱した期間があった為、年間通しての稼働だ。
#7/梅崎司…6.0
21試合出場(先発10)/1G1A
今季はチーム最年長&覚悟のキャプテン就任という形でスタート。シャドーの一角としてスタートダッシュに貢献したが、その後は4ヶ月の長期離脱。派手さはないもののボールの引き出しや、ピッチ上の精神的支柱として見えない部分の貢献は大きく、不在期間が長かったのが悔やまれる。
#8/町田也真人…5.5
18試合出場(先発5)/0G0A
自身初となる古巣の千葉戦で自らのプレーに悔し涙。この1シーンが今年を象徴する形に。終盤戦に巧みなポジショニングとオフザボールで見せ場を作る場面こそあったが、精細を欠くプレーも多く、負傷離脱期間も長かった。ファンにとっても本人にとっても不本意な1年だった。
#10/野村直輝…7.5
39試合出場(先発36)/6G7A
古巣徳島相手のチーム開幕ゴールが予感させたように、今季は大車輪の活躍。パス出し、組み立て、キープなど攻撃の起点のみならず、不在時期が多かった梅崎に代わりピッチ上の監督を務めるなど、まさに今年の核だった。最終盤の離脱で完走出来なかったのが残念だが、間違いなく今季のMVPだろう。
#14/池田廉…5.5
11試合出場(先発6)/0G0A
琉球での3年間のJ2経験を携えて期待の大きかった選手だが、終わってみれば不完全燃焼な1年間だった。プレースタイル的にエレガントさを売りにしている部分と今季のハイプレスの相性が良くなかったが、パスセンスは光る部分も見せた。ただ本職は1列前なだけに、そっちでも見たかった。
#16/茂平…7.0
18試合出場(先発17)/1G0A
長い旅を終えて育ちのクラブに帰ってきた今季、開幕から大車輪の活躍。他クラブで培った無尽蔵なスタミナと対人の強さで、右サイドの守備の安定感は盤石だった。それだけに天皇杯の大怪我からチームも転がり落ちて行ったことが、今季のチームでの存在や代えの効かなさを実感した。
#17/高畑奎汰…6.5
38試合出場(先発23)/4G5A
伸び悩み続けたレフティが遂に飛躍のきっかけを掴んだ。開幕当初は藤本と左WBを争いつつ、2本の直接FKなど自慢の左足の精度はいつしかJ2屈指に成長した。中盤以降は藤本との共存で攻撃面で良い連携を築いたが、あとは集中力がやや散漫な守備の改善が残った宿題となる。
#26/保田堅心…6.5
29試合出場(先発17)/2G0A
形式上はユースからの昇格1年目ながら、既にチームの中心の1人としてプレー。とりわけ目立ったのはビルドアップ時のボールの受け方とターンの巧さ。ブスケツを彷彿させるプレーを見せた。最終盤は4−3−3のアンカーとしてまさに非凡な物を見せ、来季の更なる成長に期待を覗かせた。
#28/野嶽惇也…7.0
32試合出場(先発26)/1G7A
開幕戦でボランチとして出場し、その活躍は前半戦の躍進とチーム最大のサプライズだった。本職SBらしい推進力や球際の強さなどに加えてビルドアップの寄与も素晴らしかっただけに離脱はチームにとって大きな痛手だった。とはいえ後半戦は本職のSBで3アシストと年間通して主力で活躍した。
#35/佐藤丈晟…5.5
1試合出場(先発0)/0G0A
昇格1年目の今年は5月の長崎戦で途中出場しリーグ戦デビュー。1人少ない相手に対する打開を期待されたが大きなインパクトは残せず、その後は怪我人等もあり2試合メンバー入りしたが出場なし。トリニータでは貴重な左利きのアタッカーだが、まずは出場機会増が来季の目標。
◆FW
#9/サムエル…5.0
22試合出場(先発5)/1G1A
眠れる大器の2年目は結果的に前年を下回る結果に。昨年同様に気温と共に自身のコンディションも上げ、ゴールを決めた熊本戦など好調時は理不尽とも言えるボールキープで大きく貢献したが、いかんせんコンディション管理の課題は最後まで改善されず。期待外れと言わざるを得ない。
#11/渡邉新太…6.0
19試合出場(先発12)/2G1A
怪我で前半戦を棒に振ったのは痛恨。東京V戦で10人でのスクランブルから急遽起用された中盤起用がハマり、終盤はインテリオールの適性を見せた。元々の受ける動きやファイター気質なのは今季のチーム向きだっただけに、離脱と起用法の最適解が終盤まで定まらなかったのは痛かった。
#13/伊佐耕平…6.5
37試合出場(先発27)/4G2A
ハイプレスと即時奪回を掲げた今季、持ち味の運動量や献身性を武器に1stDFとしてチームの戦術にマッチ。先発27試合は10年目にしてプロ最多と個人としては充実。身体の強さも武器にしたポストプレーや裏抜けも精力的だったが、やはりFWとしてはゴール数向上は欲しい部分。
#15/屋敷優成…5.5
6試合出場(先発0)/0G0A
昇格2年目の今季は途中出場で6試合に出場。5月にはU-20ワールドカップにも選出され主に右SBとして出場したが、6月に大怪我でシーズン離脱。良い経験を還元する矢先だっただけに残念だった。来季はこの経験を糧に、U代表でもプレーするサイドか本職のFWか。3年目そろそろ勝負になる。
#18/藤本一輝…6.5
39試合出場(先発29)/6G2A
今季は開幕から好調をキープし、攻撃の左サイドというぐらいに、ドリブルを武器に多くのチャンスを創造するなど成長のシーズンに。ドリブル数はリーグ屈指のスタッツである。ただ終盤戦に調子を落とし、フルシーズンでキープ出来なかったのは悔しくもあり来季への課題。
#20/長沢駿…5.5
22試合出場(先発7)/3G1A
今季は序盤戦を怪我で出遅れて途中出場が主。初スタメンは8月の藤枝戦まで待つことに。夏以降は毎試合に出場し、ラスト3試合はCFで結果も残した。特に鮎川とのWシュンは好連携だったが、本人の実力を考えても3ゴールでは合格点とは程遠かったと言わざるを得ない。
#21/鮎川峻…6.0/※シーズン途中広島よりレンタル移籍
14試合出場(先発5)/3G1A
夏に広島から育成型期限付き移籍で大分に加入。途中加入で即座に馴染むのは難しかったが、初先発の藤枝戦では決勝ゴールを記録し、最終盤には3トップの右に定着。出場時間数で換算すると90分当たりで0.46と2試合に1回程度のペースの得点と、少ない時間ながら実力自体は発揮していた。
#29/宇津元伸弥…5.5
17試合出場(先発2)/2G0A
終盤に追い付かれた開幕戦、チームに歓喜をもたらしたのは彼の劇的ゴールだった。最高のスタートを切ったが、その後は苦戦。右WBで出場する試合もあったが、負傷離脱もあり後半はほぼ出番なし。今年のサッカーはFWに求められることが多かったが、シュート以外の部分にまだまだ課題が多い。
◆監督
下平隆宏…6.0
17勝11分14敗/9位/勝ち点62/54得点56失点
2年目の今季はハイプレス+即時奪回の完全支配を掲げてスタートダッシュに成功も、負傷者続出で選手層の薄さが露呈。監督自身の修正力にも課題が露呈し、後半戦は転げ落ちるように昇格圏から転落。不要な失点が多く今季で契約満了となったが、最後には理想となる4−3−3を完成させたことは評価したい。
まとめ
2023年はトレーニングをSNS上で公開し、下平監督自ら #レゾド1万人 という集客面での目標を掲げてスタートした。チームはスタートダッシュに成功し、雰囲気の良さも相まって大きな期待感を除かせた。ところが開幕前には昨季の出場時間上位11名の内5名が退団と選手層の薄さを露呈し、加えて夏には精神的支柱でもあった高木駿が移籍。だがそもそも山形戦の5-0に代表されるように、軽い失点も多く安定感はまるで皆無だった。
ある意味で開幕前の予想通りの順位ではあったが、後半戦の転落ぶりを見ればイメージとして成績以上の落胆ぶりや厳しい評価にならざるを得ないのは確かではある。それでも最終盤に採用した4−3−3には内容を含め可能性は感じた。
来季は下平監督の退任が決まり、新指揮官の元でJ1昇格を目指すことになる。資金力に乏しい、大分は福岡からでも2時間はかかる立地と地方クラブとしてのハンデは大きい。年々都市部のJ1クラブとの差が広げられているのは事実ではあるが、それはもはや逃げの理由にしかならない。大分にしか出来ないこと、大分だからこそ出来ることはきっと存在するはず。今一度フィロソフィーである三位一体を掲げ、現場・フロント・行政・スポンサー・サポーターが一丸となってJ1復帰を掴むシーズンが始まる。地方クラブに残されたタイムリミットは着々と迫っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?