【スポーツ/小話】移籍との向き合い方

 先日、サッカーJ1・アルビレックス新潟の新井直人がサンフレッチェ広島に電撃移籍。シーズン開幕直後かつJ1という同カテゴリー、更には副キャプテンに就任したばかりというのもあり、かなり物議を醸した。シーズンオフにはプロ野球・埼玉西武ライオンズから山川穂高が福岡ソフトバンクホークスにFA移籍。本人の一連の流れや人的補償の経緯を含めて相当な賛否両論が巻き起こった。
 私が贔屓にしている広島東洋カープ、大分トリニータ、ACミランといったチームはいずれも移籍市場における食物連鎖の頂点ではなく、辛い別れや複雑な感情もたくさん味わった。その経験も加味しながら移籍との向き合い方を考えたい。


移籍は起こり得るもの

 例を上げるとヨーロッパサッカーでは移籍市場というのが一つのビジネスになっていて、時代の流れを象徴するかのようにメッシやジェラードといった、長くプレーしたチームの心臓のような選手ですら現役生活を1つのチームで全うすることなく移籍を経験している。日本のプロ野球の場合はチーム数が少ないので1つの球団で現役を終える選手も多いが、FA制度が施行されて30年を迎え、毎年権利を行使して移籍する選手が居る。
 ファン・サポーター目線としてはヤキモキするのは当然なのだが、反対に選手目線や一般人の生活目線で考えると、移籍は転職や部署異動願とも言える。私自身も環境面を考慮して転職した経験があり、そういう意味ではスポーツ選手も同じであり、色々な意味で移籍ということは人生の選択肢なのである。

大切なのはチームか、選手か

 近年、選手個人を軸に応援する”個サポ”という言葉が一般的になった。文字の如く応援する選手の所属チームに関係なく選手個人を応援する応援形態である。つまり選手の所属チームが変更されれば応援する選手のグッズの色も変わったりするのである。
 一方で”チーム以上の選手は存在しない”というチーム愛を貫くという応援形態も当然存在し、こちらが一般的ではないだろうか。この場合は当然ながら”〇〇に所属する”△△選手を応援するという応援形態である。
 当然ながらどちらが正解ということはないのだが、移籍というのは所属先が変更するもの。好きな選手が移籍するということに変わりはないが、より好きなのは選手個人なのか、チーム自体なのか。改めて考えてみてほしい。

嘆くことは自由だ

 そうして最優先なのはチームか個人かというのを考えた時、その優先がチームであれば、当然ながら選手の移籍はさながら別れなのである。
 応援するチームの選手はいわば大切な友人・家族・恋人であり、その人との突然の決別や別れを切り出されることは受け入れ難いことでもあるだろう。人間なのだからいきなり全てを受け入れろということが難しいのは当然である。ここら辺は実生活と同様で解決するのは経験や時間の経過しかないのである。
 先述した新井直人の移籍では新潟側から行き過ぎた誹謗中傷や反人道的な言論に対する注意喚起のリリースがなされた。当然ながら他人を傷つけることは許されることではないが、移籍していくことを嘆くこと自体は自由であり、気の済むまで悲しめばいいのである。

後悔しないグッズの買い方

 そうして好きなチームの中でも好きな選手だからとグッズを購入した選手が移籍することもあるだろう。タオルぐらいであれば高価という物ではないと思うが、ユニフォームだと万単位の価格を費やしての購入であり、ましてやプロ仕様のオーセンティックだと数万単位の高い買い物にもなる。費やした価格が高ければ高い程に思いも強くなるのが一般的な考え方だろう。
 愛や思いが強い分、移籍のタイミング・言動や移籍先が犬猿のライバルチームだったりすると、その思いが憎悪に変わることもあるのではないかと思う。これも人間だから仕方ないのだが、私が意識することとしては「この選手が移籍しても納得出来る人間性の選手」を購入の条件として考えている。もちろん移籍先がライバルチームだったりすると、そのグッズはもう使えないし、その選手のことを嫌いになることもあるだろう。ただ、この選手のグッズを買って後悔しない度合いは幾分か強くなるだろう。

まとめ

 冒頭にも述べたがスポーツ選手にとって移籍は付きもの。”立つ鳥跡を濁さず”ではないが、ファンと選手お互いが惜しまれつつというのが理想ではある。しかし自分の望み通りに物事は進まないのは人生と同じであり、そこに乖離が発生するのは当然なのではある。アンガーマネジメントの部類でもあると思うが、嘆く・悲しむことは自由だ。ただ移籍選手に対する執拗な個人攻撃や誹謗中傷はルール違反であり、SNS時代の今はその言動が愛するチームや選手のマイナスイメージになる可能性もある。黙って受け入れることに納得は行かない場合もあるだろうが、そういう時こそ言動に気をつけて、時間が解決することを待つしかないだろう。
 時に移籍は”裏切り”だと感じることもあるだろうが、自分が選手の立場だったら…という目線も必要だろう。そして愛するチームの中でも愛する選手がチームを去る時はショックだろうが、常にその時はイメージしていなければならないだろう。今を大事にして将来に後悔をしない応援を心掛けたい。

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