「国家はなぜ衰退するのか」第8章
縄張りを守れ ---発展の障壁
<この章のお題>
多くの国で政治力を持つ人々が産業革命に反対したのはなぜか。(最初に第8章最後の「持続する後進性」を読む事がおすすめ。)
<この章の副題、まとめ、気になった箇所>
印刷禁止:1445年ドイツでグーテンベルクが活版印刷機を発明。しかし、オスマン帝国では、スルタンが印刷技術導入をあえて禁止。民衆の識字率が向上すると、民衆の支配を困難にしてしまう。産業革命の恩恵をあえて支配者が拒否して、経済発展の流れに乗らなかった例。
小さいながら重要な違い:17世紀、スペインではハプスブルク家による絶対王政がますます強固に。アメリカ大陸での貴金属発見でさらに豊かに。1600年には、国内のユダヤ人から財産を没収(収奪的)。1609年以降は、ムーア人が追放された。所有権が保証されないと、持ち歩ける以上の富を生み出すインセンティブも失せる。他方、同時期にイングランドでは工業化が進展していたのに。
産業への恐怖:スペイン以外で、絶対主義が産業発展のインセンティブを導入しなかった国の例は、オーストリア・ハンガリー帝国。1740年〜1780年統治したマリア・テレジアは「全てをそのままに」と制度変更を認めず。王室の歯止めとなる議会も存在しなかった。フランツ1世は、政治的な現状維持を望んでいた。鉄道の敷説も拒否。地図13の、1870年の鉄道網の図では、差がはっきりとわかる。
海上交易禁止:中国の例。絶対主義と収奪的制度のもと、発明は商業化されず、1400年代から航海による遠征中止。大陸内での紛争に明け暮れた。敗北すれば財産没収となるので、生産するインセンティブがない。
プレスター・ジョンの絶対主義:キリスト教神話によるエチオピアの国王。国民所有の土地を2-3年ごとに皇帝が交換。エチオピアはその後も絶対王政を繰り返した。現在、世界の最貧国のひとつ。19-20世紀に工業化の波に乗り損ねたため。
サマーレの子孫:ソマリアは、最低限の法秩序を課する中央集権制度さえ持たない。6つの氏族の支配下、絶え間ない争いを20世紀にも継続し、工業化どころではなく、現在も人々の生存すらおぼつかない。
持続する後進性:文章全体が上記のまとめになっている。