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「女の子はどう生きるか」 第2章 その2

上野千鶴子著、岩波ジュニア新書

第2章 家の中でモヤモヤするのはなぜ?


女の子って損?!

Q.おじいちゃんは、兄と弟にはお小遣いをあげるが私にはくれない。「お前が男ならよかったのに」という祖父。女はダメなのか?

A.おじいちゃんの時代は、生まれたときから性別で価値が違った。いわば、男児は投資価値があり、女児には無いということ。それは、昔は女性の活躍の場が極端に限られていた。だから、息子だけ教育を受けさせ、娘は教育を付けないことはざらだった。

確かにその当時はそれが合理的な考えだったけれど、今は違う。女子の高等教育は当たり前となったし、結婚も他家に嫁ぐというよりは個々の契約の意味合いが強く、お嫁さんの奉仕など期待できない。 投資価値で言えば一生娘(note筆者:タダ働きの介護要員として有用、という意味か?)、である女子のほうが上なのかも?

男女で進路がわけられるのはなぜ?

Q.お兄ちゃんは大学なのに、私には短大しかダメだというママ。そのほうが結婚に有利だからというのは本当?医者はダメで看護師ならいいの?

A.教育にかけるお金を教育投資といい、大学のほうが短大よりもお金がかかる。1990年台頃までは、娘には投資効果がない、と思われていた時代があった。しかし、それから30年を経て、実態は急速に変わってきた。

「結婚に有利」というのはお母さんの世代には短大の女性の数が多くて、「夫大卒・妻短大」のカップルが多かった時代があった、というだけの話。今や2018年の18歳人口に占める四年制大学進学率は男子56.3%、女子50.1%。むしろ四年生大学卒同士でカップルになる確率が高いだろう。(note筆者加筆:ちなみに、2020年のPresident Onlineの調査では、「相手が自分より高学歴・高偏差値でもよい」と答えた男性は62.9%だった。) 

また、女の子が医者になれない理由などないし、医者になれれば看護師よりも、経済的に有利になる(note筆者:女性に経済力が必要な理由は、第2章の後半へ)。ママの時代の常識は、もはや通用しない。

女子だって東大を目指す!

Q.姉が浪人して東大を目指していると、「もうお嫁にいけない」という祖母。どうして女の子が東大を目指したり、浪人したりしてはダメなのか?

A.女子の四大進学率が50.1%に増えたのに、東大だけはずっと女子学生比率が2割を越さない。おばあちゃんや、時代遅れの進路指導者の内に、「クソバイス」(クソみたいなアドバイス)をする人が多いからだろう。それでもお姉さんの背中を押したご両親は、素晴らしい。やはり祖母、母、娘で時代は確実に変わってきている。

とはいえ、「成績の良い女子が、馬鹿なフリをする」等の事例があるのは事実。それは、男子に女子には自分を超えてほしくない、という下心があるからだ。東大男子は「自分よりも優秀かもしれない」東大女子を苦手とする事が多い。それは自分を見上げてほしいという自己中心的な発想からだ。それが「オッサン(自己チュー、想像力なく、差別を好む、鈍感な、男)」の正体。そのような「オレサマ男子」は存在する。

おばあちゃんの助言が「クソバイス」である理由は、世の中は「オッサン」ばかりではないし、「オッサン」受けすることは幸せなことではない。それに東大女子はキャンパスで割合が少ないためか、結婚率も高い。お姉さんのチャレンジを応援しよう。

女子学生は2割

Q.東大における女子学生の割合が2割は驚きだが、ほかの先進国もそうなのか?

A.現在18歳女子の約半分が四年制大学に進学するが、東大だけは2割前後で低迷したままであることに、東大の教授たちも頭を抱えている。男子と女子の偏差値分布は全く同じなので、東大に受かるくらい偏差値の高い女子が東大を受験していないということだ。それは周りの環境のせいだろう。

東大に女子が入学できるようになったのは敗戦後の1945年で、それまでは女子は男子より低い教育しか受けられなかった。結果、夫が妻に向かって「君、そんなことも知らんのか」とバカにしながら暮らすこともあった。

女子学生の歴史は苦難の歴史で、今日女子学生が普通に大学進学を考えることができるようになったのはその道を切り開いてくれた先輩方がいたからだ。例えば初の女性医師であった、荻野吟子はその一人。他方、時代が進んだ1960年台には、早大教授の暉峻康隆が「女子学生世にはばかる」、慶大教授の池田彌三郎が「大学女禍論」などを著し、「女子大生亡国論」と騒がれた。ちなみに、当時の女子大学進学率は2.5%。しかし、今や早稲田大学の女子学生比率は37.1%、時代は変わった。

諸外国では女子の大学進学率は男子より高いし、学長にも女性が選ばれることだってある。日本は、そして東大は特に世界に後れを取っている。また、女性が高等教育を受けにくい理由の一つに「投資価値がない」と思われることを挙げたが、もう一つに「高等教育を受けると女は生意気になってたまらん」という男性の本音がある。男尊女卑の社会では女性が男性よりも劣っているほうが、男性にとって都合が良いという人がいる。

本来は、女性のあなたも能力と努力をリスペクトしてもらえるようになって、パートナーと互いにリスペクトしあえる関係が、ずっといい。

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