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「女の子はどう生きるか」 第4章 その3

上野千鶴子著、岩波ジュニア新書、の要旨。女子高生の質問に、日本の女性学のパイオニアである、上野千鶴子氏(東大名誉教授)が答えるという、Q&Aの形式で綴られた書。

Q. 41 正規雇用と非正規雇用

Q.ママの会社では、非正規雇用と正規雇用がある。ママは正規社員、だけど仕事は同じでも給料が倍ほど違うのはなぜ?

A.答えは人件費を抑えるため。全労働者のうち、非正規労働者の割合は38%、しかし女性労働者だけで見ると非正規労働者の割合は56%(2019年現在)を占める。非正規雇用者は圧倒的に女性が多いのが現状。使い捨ての人材として扱い、結婚や妊娠をきっかけに、すぐに契約解除ができるようにしている。

非正規労働者のの賃金が安いのは、非正規だからではない。1985年の労働者派遣事業法施行時に、労働者の賃金を安くするために非正規という雇用区分を作ったのだ。(note筆者加筆:奇しくも、1985年は男女雇用機会均等法が施行された年)。その後1991年のバブル終了後、景気が冷え込んで、本格的に非正規雇用者が増えた。非正規労働は、いつでも解雇しやすいようにするという、企業の発明品なのだ。

並行して「特別扶養控除」という制度もうまく利用されている。(note筆者:ちなみに、被扶養者になって、家事労働をワンオペさせられても、その労働価値は、税法上、1日あたり1000円程度にしか評価されない。これっぽっちの金額で「養ってやっているんだぞ」と世帯主から言い放たれる主婦がいる。可能な限り被扶養者にはならない方が身のためだ。)

ただし、非正規自体が悪だというわけではない。同じ仕事をしているなら「同一労働同一賃金」の考え方を導入し、労働時間と能力に応じた賃金を渡せばいいだけのこと。非正規労働者を使うとトク、という仕組みを変えない限り、女性はどこまでも付け込まれる

Q.42 フェミニストってどんな人?

Q.フェミニストは怖い人だと思っていたが、上野先生の講演を聞いて、違うと気付いた。フェミニズムやジェンダーが目指すものとは?

A.フェミニストが怖いと思った理由は?それは自分の知り合いがフェミニストでこわいから?それとも周りの人が「フェミニストこわ~」と言っていたから?その人は男性では?

男性はフェミニストと聞くと「叱られる」と反応する。しかし、フェミニズムとは、ただ単に男性を敵にしているのではなく、敵にしなければいけない男性がいるということ。一人ひとりの男性は素敵だが、男を集団として上げ底にしている女性差別のシステムが敵だということなのだ。

そして男性がそれぞれなように、女性もそれぞれで、いろいろなフェミニストがいる。その上で著者が個人的に考えるフェミニズムは「男らしさ、女らしさに縛られたくない、自由に生きたい」ということ。弱者が強者になるのではなく、弱者が弱者のまま尊重されることを求める思想だ。

もちろん違う思想を持ったフェミニストもいて、強者になりたい、戦争に行きたいという人もいるけれど、個人的には賛成できない。著者は、「味方には優しい人、敵には怖い人」でありたい。

Q.43 自分のことは自分で決めます

Q.43 学校で「願うときに「こうのとり」は来ますか?」(←リンクあり)というパンフレットを配られた。超少子高齢化社会のなか、女性ができることはただ産む機械になるだけなのか。

A.「超少子高齢化」で困るのは国と経済界。理由は、人口が減るとGDPが減って、日本を「大国」と呼べなくなるから。それが嫌なのは、オッサンたち。

お国は人口を「資源」と考える。資源管理には量と質を求める。質を求めるにあたって、動物としてのヒトには産み時があることはわかっている。

埼玉県で配布した「願うときに「こうのとり」は来ますか」というパンフレットは「若くて健康な卵子に早めに妊娠・出産してもらいたい」というキモチが見え見え。

どうせ早く産んだって、国や県は子供の面倒なんか見てくれない。むしろ産んでも産休も育休も取りにくい上に、保育園にも入れない。とても産める状況ではない、と多くの女性がブーイングをした。

望んでも望み通りにはなるとは限りらないし、望まないときに子供を授かることもある。正確な知識を持つことは悪いことではない。

お国のために子どもを産む男女はいない。子供をいつ、何人、産むかは個人の自由で周囲や世間、国からとやかく言われる筋合いはない。結婚だってしてもしなくてもいいし、子供を産んでも生まなくてもいい。同性を愛しても異性を愛しても、一人一人の選択が誰からも文句を言われずに、自由に選択できるような世の中になることを願う。

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