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「女の子はどう生きるか」 第3章 その4

上野千鶴子著、岩波ジュニア新書、要旨

Q34. 仕事やめる? やめない?

Q.社会人の姉は「結婚したら仕事はやめる、そのためにいい会社に入った」という。一方兄は一緒に働いてくれる人がいい、という。トクでラクな道を選ぶならどっちがいい?

A.お姉さんのような選択を昭和妻といい、昭和時代には普通だった女性の生き方だが、それには昭和時代の2つの条件があった。 

・その1:離婚率が低くて、結婚が一生ものだった
・その2:「いい会社」は安定していると思われていた。

近年、ヒトの寿命が延びた。しかし企業の寿命は延びない。離婚率は上昇して今や3組に1組は離婚する。このように離婚や解雇のリスクが高い時代において、お姉さんの選択はリスクが大変大きい

他方、お兄さんの意見は、一緒に働いてくれる相手がいいという考えで、リスクヘッジになる現実的な選択。でもお兄さんには相棒と「一緒に家事育児を担う」覚悟があるだろうか。多くの男性の本音は「家計を一人で背負う責任はイヤ」、でも「家事育児はやりたくない」というもの。将来の妻はそれで不満をためて、「文句も言わずに」過ごすことにはならない。

何がトクでラクか、は時代によって違う。相手に大事にされたいなら、お互いを尊重し会えるパートナーを選ぶ必要がある。それに結局、人生を生きるのにトクでラクな道はない


Q35. 結婚までの道のりは一つだけ?

Q.同棲=結婚とみなす親戚たちや周りの人々。「妊娠したら傷モノよ」との声に辟易している。

A結婚は一生のうち最大の選択の一つ。きっと同棲するその選択は賢明だ。何事も、やってみなければわからない。洋服は試着するのに、生活は試さないなんて、リスクが高すぎる。ハズレと結婚したら、一生ハズレたままになってしまう。結婚はバクチなのだ。

同棲、は「事実婚」という。

「周囲」の人々は、「結婚が一生もの」で「処女でなくなったら売り物にならなくなる」時代に生きていたのだろう。キズ物という言葉も、女性が売り物のように扱われていた時代の言葉だ。

ヨーロッパでは子供が生まれても、事実婚のままのカップルが多い。フランスは59%、ドイツは35%、イタリアは保守的と言われながらも28%。それは欧州の事実婚とそこで生まれる子供に対する制度がきちんとしているから。他方、日本の事実婚率は2%。日本は婚外子が不利な社会と法制度を作り上げてしまったため、事実婚はほんのわずかにとどまる。

事実婚では、子供がかわいそう、という風潮を作り出すのは社会だ。そして、同棲をするのは無謀ではなく慎重だからである。周囲も新しい人生の選択を見守って、応援して欲しい。

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