「国家はなぜ衰退するのか」第11章
好循環
<この章のお題>
繁栄を促す制度は、いかにしてエリート層の妨害を避けるための正のフィードバック・ループを生み出すのか。
<この章の副題、まとめ、気になった箇所>
ブラック法:
イングランドでは、名誉革命後に法の支配が生み出された。名誉革命に貢献したホイッグ党が、利権を集めることに抗議する「黒塗り男の襲撃」が起こった。ホイッグ党は、「黒塗り男」たちを押さえ込むため、1723年にブラック法を通過させた。この理不尽な法律は、やがてホイッグ党員自身も適用の対象となった。包括的な政治・経済制度が出現。それが長く持続するのはなぜだろうか。個人のインセンティブと相まって、好循環が生じるため。
民主主義のゆっくりした足取り:
1830年頃のイングランドでは労働者の不満を受けて、権力者たちが理解したのは、大衆を議会に座らせることで社会不安と革命を阻止しうるということだった。1838年からチャーチスト運動(普通選挙要求)が起こる。基盤はすでに豊かであった実業家、ジェントリーたち。彼らがいなかったら、フランスのように、独裁政権出現の道もあり得た。1891年教育の無償化が行われ、発展の基礎となった。
トラストを解体する:
合衆国は植民地時代の争いの結果、包括的制度が採用されてきた。19世紀半ばには、白人男子はエリートでなくとも投票権を持ち、土地はエリートに分配されるのではなく、入植計画者による所有が認められた。しかし、やがて独占状態を作った有力者に対する、民衆の反対運動受け、1890年のシャーマン反トラスト法成立。
裁判所を乗っ取る:
アルゼンチンではペロンとメネムにより、大統領が最高裁判事を任命できるシステムに変更。反感を持つ政権打倒派閥の形成など、その後の政情不安の原因に。裁判所を意のままに操ることは、権力者にとって「リスクをとるに値する」行為。
正のフィードバックと好循環:
包括的制度が経済的・社会的な好循環を生むパターンのまとめ。包括的な政治・経済制度は、自然発生しない。多くは、既存のエリートの権力を制限したいと望む人々とエリートとの間の争いの結果。歴史の偶然の要素もあるが、一度好循環にのると、制度の持続や拡大の可能性が高まる傾向がある。