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「女の子はどう生きるか」第2章 その4

上野千鶴子著、岩波ジュニア新書、要旨

第2章 家の中でモヤモヤするのはなぜ?

専業主婦の年金

Q.お母さんは専業主婦。年金はもらえるのか。

A.年金は保険料を支払い続けた人だけ支払われるものだが、お母さんは保険料を払っているのか。実は専業主婦の年金権ができたのは1986年。それまで妻は全く無権利状態だったのだが、第三号被保険者として保険料を支払わなくても将来基礎年金を受け取ることができるようにした。

年金を受け取る人はみんな自分で支払っているのに、無業の妻だけが払わなくても受け取れるなんて、不公平ではないのか?専業主婦の妻が保険料を払わないのに、将来受け取る原資はどこから出ているのか?それは働く男女が払っている。もし専業主婦が自分で年金を支払えば、働く人の年金は年間3000円近く安くなるという人もいる。

これは、日本の家族という実態が、女性に依存する「日本型福祉」であるため。つまり女性のタダ働きに少しこたえるために作られた制度である。保険料を払わなくても年金がもらえる、「専業主婦優遇策」と呼ばれるこの制度だが、果たして本当に専業主婦に対する優遇なのだろうか

専業主婦の夫の保険料は本人と雇い主の折半。他方、主婦パートを雇う事業所が、妻の保険料を社会全体にただ乗りすることができる。また、世に多くいる「無収入の専業主婦」といわれる妻たちは、たいてい「みなし専業主婦」で、実際は多くがパートなどで働いている。その雇い主は、パート妻の年金保険や健康保険を負担しなくても済む。ここで得をしているのは女性ではなく、妻たちをパートとして雇っている職場の経営者では?(note筆者:こんな解釈があるなんて、知らなかった!)

制度の裏には、必ずタネや仕掛けがある。ある制度で本当にトクするのは誰なのかを、考える癖をつけよう。そして、「世帯」という概念が、複雑な手続きを強いて既婚女性に損をさせていることもあるのだ。いいかげんにせえ! 

「扶養」という罠

Q.お母さんは扶養を抜け出したいけど、お父さんがダメという。家のことがおろそかになるし、扶養控除の範囲が有利だかららしい。本当ですか?

A. 配偶者控除によって、専業主婦は被扶養となる。しかし、年間収入が一定額(配偶者控除の年収上限は103万円、健康保険の扶養の上限は130万円、など)までであれば、働いていても無収入扱いの「みなし専業主婦」になり、既婚女性の七割扶養控除の範囲内で働いている。

お父さんがお母さんの本格的な就業に反対する第一の理由は、自分で保険料を払うと夫の扶養に入っているときよりも「世帯年収が低くなる」可能性があること。そして、第二の理由は、「家のことがおろそかになる」ことが挙げられる。しかし、現実には、パートの働き方は、家庭内での「ワンオペ家事・育児」が前提で、負担は妻にしわ寄せがきている。

第三の理由としては、「妻が今よりも稼ぐことで発言力が大きくなり、夫婦の勢力関係に影響が出るかもしれないという不安や離婚への危機感」があるかもしれない。

このような夫の言分は一方的で、妻の就労が夫によって「許可」や「禁止」されるのは、これまでの夫婦関係の歴史と配偶者控除の制度のせいだろう。このように夫の立場を支える「配偶者控除」の制度は、女性の意欲をくじいてきた。女性の足を引っ張っておいて、「女性は正社員になることを望んでいない」と経営者に言わせる根拠を与えている。

主婦が、ほんのちょっぴりの年金(note筆者:65歳を超えて、主婦がもらえる年金は月額6万円程度?)を将来もらえる制度を作った目的を、上野氏は「夫の看取り保障」と呼んでいる。(note筆者:年金をあてにさせて、妻が夫の退職後の世話や介護をするように仕向けているということか。)

男性だけが得する制度は、配偶者控除も含めて、なくしても良いのではないか。

(note筆者:被扶養者ではないバリキャリ共働き妻もいる。もちろん、ワンオペ家事・育児負担はのしかかる。2016年の調査では、日本の家事育児の負担時間は妻1日7.5時間、対する夫は1日83分欧米の学者も「日本の結婚は女性に不平等」と明言。)

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