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サローネ デル グストで

 今思えば、2002年は生動の年だった。ニューヨークでの試飲会の前に、イタリアで開催されるサローネ デル グストにも招かれ、新たな世界が展開し初めていた。同会は、二年に一度十月に、スロー・フードがトリノで開催する味のサロンだ。イタリア国内のみならず、諸外国から色々な食品生産者が出展する、いわば食の見本市。対象は一般消費者で誰でも入れる。おまけにブースに並ぶ食品は即売され、トリノやその周辺のおばちゃん達も買い物籠車を引っぱりやってくる。早い話が巨大な室内市場、楽しい催物だ(った)。
 その中の企画にラボラトリオがある。講習を聴きながら着席での試飲試食、この食の研修会のために、私たちにお声がかかったわけだ。仕掛け人はアラン デュカス(モナコのルイ一五世等世界的に有名なシェフ)が名誉会長を務めるモナコ・フランス東南部地区スロー・フード協会会長ジャン・ピエール ルー(元ルイ一五世給仕長)氏と、SBM(モナコ公国社ソシエテ ドゥ バン ドゥ メール)の仕入れ担当部長ジェナーロ イオリオ。お題は、勿論モンラッシェだ。本番にはブルゴーニュからマルク コランやギ アミオ等が応援に駆けつけてくれ、その年もっとも高額だった研修会は好評のうちに無事終了した。
 ただ、私たちにとって最大の利は、一般会員としてではなく、スローフード本部と直接関係ができたこと(初年を除けばスローの会員だったことはない)。そしてなにより、そのサローネの会場で、あの人と出逢った。Triple A創始者ルカ ガルガノだ。もっともその時の彼は、自らが輸入するラム酒(彼はラム酒のスペシャリスト)で「かなり」のほろ酔い加減で、面を通す程度。実際にはその二年後、モンラッシェに続き私たちの主導で満寿泉を研修会で紹介した2004年に、サローネの会場でルカと再開、それが大きな転換点となった。それこそ、私たちが自然派に足を踏み入れる、大事な大事な出逢いだった。

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