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中国の使用済ロケットの部品が落ちてくる?
中国が独自の宇宙ステーション建設用に打ち上げたロケットです。政治的な理由で注目されているという話もありますが、アメリカだけでなくロシアも注目していますので、単なる米中摩擦の話ではありません。
中国が宇宙開発を頑張るのはよいですが、もう少し考慮して欲しいです。
そもそもどう言うこと?
写真は種子島宇宙センターなので日本のロケットですので誤解のなきようお願いします。詳しいことは以下記事を参照してほしいですが、かい摘んでまとめます。
今は国際協調の時代なのですが、中国は独自で宇宙開発を行なっており、宇宙ステーションを建設中です。そのために大型ロケット長征5号Bという全長54mあるロケットを何回か打ち上げる予定です。
記事で言っているコアステージとは、一番下で一番大きいロケット部分になります。打ち上げは成功したのですが、その一番下のロケット部分がそのまま地球上を回っており、それが5月8日9時37分から5月10日17時37分の間に地球に再突入する(5月5日15時の予測)という話です。
一部で「制御不能」とか言われていますが、そもそも普通のロケットは制御しようとは思っていないので、これは正確ではないと自分は思います。繰り返し利用するスペースXとか、日本では制御落下の実験を行なっていますが、普通は打ち上げたきりであとは放置です。正確には「無制御」とか「自然落下」というべきかと思います。
それで問題にならないのは、そもそも大気圏再突入時に普通は燃え尽きるためです。ただ、長征5号Bのコアステージの場合、全長33m、重さが18tもあるので、全てが燃え尽きずに一部の部品が落下する恐れがあることが問題になっています。
実際、1年前に同じロケットの部品がアフリカに落下した可能性があるとの報道があります。厳密には長征5号Bのものであると下記記事の時点では明確になっていませんが、再突入の頃にコートジボワールの民家に落下物があったことは確認されています。幸い、怪我人等はなかったようです。
中国の情報公開が不十分で疑心暗鬼
米中対立の影響でことさらにアメリカが取り上げているように見えますが、ロシアでも同様に注目して追跡しているとの報道があります。
と言うのも、中国の情報公開が過去にも問題になっているためです。
こちらは3年前です。中国は制御落下させていると公表していますが、アメリカ等は制御できていないとしていました。中国は認めないので真相は闇の中ですが、制御落下のためのエンジン噴射等の情報等、約束していた今後の予定や状況報告が行われなかった前例があります。
宇宙開発に限らず、中国の情報公開が一方的に自分たちの都合のよい情報しかされないことは、COVID-19に対する情報公開を見てもよくわかるかと思います。
現在位置はわかるが、どこに落ちるかは直前まで不明
現在位置は、アメリカやロシア等、それぞれ追跡していますし、いくつかのWebサイトで我々も確認することができます。ただ、それらのWebサイトは軌道上の衛星の位置を確認するものであって、落下する宇宙廃棄物の軌道や落下点を予測するものではありません。高度が下がってくるに従って、空気抵抗が大きくなったり、体勢によって軌道がズレたりするので予測は難しく、今はまだ足掛け3日間のどこかで落ちそう、という程度の情報しかありません。
その前提で、Twitterで紹介されていたサイトをいくつか紹介します。
リンクをクリックすると、画面中央に長征5号Bの現在位置が出てきます。ただ、大量の人工衛星等が表示されるので、少々見にくいです。
こちらもリンクをクリックすると、長征5号Bが中央に表示されます。他の情報は表示されないので、一番見やすいかと思います。
こちらはリンク先をクリックした時点では全ての情報が表示されるので長征5号Bを追跡するには操作が必要です。
1. 地図のすぐ下、真ん中あたりの検索ボタンを押す
2. 出てきた画面の番号で探すを選択
3. 4xxxxを選択
4. 482xxを選択
5. 48275を選択
上の2つとは異なり、球面上を移動していきます。見ていて面白いですが、こちらも他の人工衛星も表示されるので少し見にくいです。
なんにせよ情報公開してほしい
国際協調せずに、独自に宇宙ステーションを建設し、そのために巨大ロケットを打ち上げる、ということ自体どうかと思いますが、そこはまあ、各国の思惑があるのでよしとしましょう。
ただ、大気圏再突入時に燃え尽きないような巨大ロケットを打ち上げるなら、可能であれば制御落下させるなり、なんらかの対策をとってほしい気はします。
そこは難しいにしても、せめて情報公開してほしいものです。
5/8 13:47補足
5/8の11:22の予測では、日本時間5/9の11:52の前後6時間となっているので、5/9の5:52〜17:52くらいでしょうか。場所はニュージーランドの近くの様です(昼のNHKニュースでは中央アジアと言っていたけど…5/7の昼過ぎの予測だとトルクメニスタンのあたりでしたので、古い情報ですね。NHKのニュースは結構使い回すので)。
今後、さらにこの幅が小さくなっていくので、より正確になっていきます。ツイート内の注にあるようにまだ信頼できる位置や時刻ではないありませんので、注意してください。
Latest TIP (as of 2021-05-08 0222Z) for CZ-5B (#LongMarch5B) (48275 / 2021-035B) shows projected re-entry at 2021-05-09 0252(UTC) +/- 360 minutes at latitude -39.4 longitude 180.5.
— Space-Track (@SpaceTrackOrg) May 8, 2021
NOTE: Still not a reliable time or location, given the large window; both will still vary wildly
5/8 14:53補足
YouTubeでリアルタイム(らしい)情報を見られる様です。動画なのでギガに余裕がある方はこちらをどうぞ。余裕のない方は上のリンクから。
5/8 16:12補足
NHKニュースも更新されました。
問題は中国は今後もこのロケットを宇宙ステーション建設のために何度も打ち上げる予定で、その都度、こういう騒ぎが起きることです。コートジボワールに落ちてきたような物が、どこかの都市部に落ちないとは言い切れないわけです。
5/9 8:32補足
3つの機関でバラバラな予想に。どちらにしろ日本時間の昼前後で日本からは遠い。
Latest re-entry estimates from 3 space agencies. Space-track and Euro remain on the same orbit band but now 28 minutes apart. Aerospace still taking n extra orbit. Window is narrowing but still highly uncertain. Live updates at https://t.co/jVAsyhtq9h #ChineseRocket #LongMarch5B pic.twitter.com/wapwmwsW94
— Hauraki Gulf Weather (@GulfHauraki) May 8, 2021
5/9 12:00補足
Space-Trackの追跡情報では、9時時点の予測で11:11の前後60分、地中海あたりとの予測。な、オマーンで日中明るく光る流れ星のような軌跡が確認され、すでに大気圏に突入したのではないかという情報も出ています。
Latest TIP (as of 2021-05-09 0000Z) for CZ-5B (#LongMarch5B) (48275 / 2021-035B) shows projected re-entry at 2021-05-09 0211(UTC) +/- 60 minutes at latitude 35.9, longitude 24.4 (Mediterranean Basin)
— Space-Track (@SpaceTrackOrg) May 9, 2021
At 7.8 km/s, just 1 minute diff in the time of reentry =470 km diff in final loc
5/9 12:20補足
中国当局から11:24にモルディブ付近のインド洋に落下した、との情報が出たとの未確認情報があります。12時のNHKニュースでは中国の落下予想の情報を伝えていました。
5/10 10:00補足
補足はこれで最後にします。
中国側の発表とは別に、米軍関係が落下地点を発表しており、時間と場所が違っています。なんらかの物体が出てこない限り、どちらが正しいかはわかりません。
※米軍発表は再突入時刻と位置であり、中国発表は落下地点と時刻、ということかもしれません。
ただ、その中国発表も独自に観測、予測したのか、Space-Track等の他の機関の情報を再発信していただけなのかよくわかりません。少なくとも、事前に計画があったわけではないのは確かで、成り行きで(おそらく)海上に落ちたというだけです。
今後、宇宙ステーション建設のために何度も同型ロケットを打ち上げる予定で、同じことがこれから何度も起きるわけで、どうにかして欲しいものです。
最後に、今回の問題について、私見ですがまとめておきます。
・制御不能というか、そもそも自然落下に任せて制御するつもりはない
・長征5号Bに限らず、多くのロケットは打ち上げ後は放置で制御しない
・長征5号Bの場合、巨大コアステージが大気圏外まで飛んだ後に落ちてくる
・そのため、一部の部品が燃え切らずに地表まで落下する恐れがある
・実際に2020年5月に長征5号Bの部品と思われるものが民家を直撃している
・他のロケットの場合、2〜3段構成で最大部分は大気圏外に出ない
・また、それがどこに落ちるかは失敗時も含めて計算し、事前に警告を行う
・今回の例で分かる通り、長征5号Bの場合予測が難しく事前警告不能
・結局、長征5号Bで事故が発生しないかどうかは運任せ
・2020年5月の例から、事故発生時中国は知らぬ存ぜぬを通す可能性が高い
(補足:宇宙からの落下物に関する補償についての条約があるが、コートジボワールは加盟していない。かと言って知らぬ存ぜぬは責任ある態度と言えるのか疑問)
長征5号Bの構成や、落下制御しない点については、経済効率を優先させているため、という話もあります。それが真実かわかりませんし、中国政府も発表しないか、過去の例からも平気で嘘を公表するので信用できません。そんな国が、世界第2の経済大国で、アメリカを抜いて世界一を目指しており、しかも、我が国の隣にあるという現実。
それを世界に、日本に知らしめた事件かと思います。
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