Solitary Shell(ソリタリーシェル)きしやまゆうへいによる『doom and hell』セルフライナーノーツ(後編)
5曲目『Karmic astrology (2023 Remaster)』
インストゥルメンタルの楽曲でプログレ調の暗鬱とメタルの冷たさのようなものを表現している。曲名は、カルマ占星術という何とも胡散臭いタイトルだが、元々は、5htアルバムを制作時にアルバムのラストナンバーである『Reincarnations』と繋がりを意識した結果であり、前世の読み解きというテーマで作曲した。ギターは、Burny H series(改)のみを使用している。
6曲目『Easier said than done (2023 Remaster)』
普段とは趣向が異なる楽曲である。元来の暗さにデフトーンズのような雰囲気を出したくて、作曲したのがきっかけ。殆ど英語の歌詞なのは、無理に日本語を乗せようとしても曲調として、それが適わないためである。「言うは易く行なうは難し」というタイトルにある通り、皮肉を込めて書き殴った歌詞でしかない。使用したギターは、ESPのM-2 Deluxeのみ。
7曲目『Dark sister (2023 Remaster)』について
4thアルバムからの既定路線であるゴシックメタルナンバー。Dan Swanö氏の系譜を継ぐ90年代メロディックデスを意識した楽曲。Edge of Sanityのようなコード進行で構成した。歌詞は大切に構築した論理すらも偽りと悪意であったため、相克の果てに没落する主人公がテーマとなっている。
Edge of Sanityといえば、スウェーデン出身のデスメタル・バンド。メロディックデスメタルの誕生と発展に貢献したバンドで、今でも聴くアルバムは多いが、個人的にはEP盤のUntil Eternity Ends (1994年)が特にお気に入り。
因みにこの『Dark sister』は、どちらかというとPurgatory Afterglow (1994年)の路線に寄せた楽曲である。
そのうちゴリゴリのメロディックデスメタルをやる機会があれば良いのだけど、それは別名義で。
そして『Arise (2023 Remaster)』へ
8曲目は毎回お馴染みの『Arise』だが、シングルのSynesthesia MIXよりもギターのミックスを調整したDestrudo MIX版としている。本当に思い入れのある曲で、元々は精神が壊れる直前である2019年前半の日常を振り返り、それをテーマに書いたのがきっかけであるのだが、歌詞もスムーズに乗り、曲としての出来栄えも良かったので、編曲を重ねて、現在の形に至る。「何故、当時の自分が存在し、あのような状態になっていたのか」を楽曲でストレートに表現できていると感じている。個人的にはお気に入りの曲であり、名刺代わりの1曲として、今後も編曲を繰り返していく可能性を残している。
このSolitary Shellという音楽プロジェクトは、15年以上のブランクを経て音楽活動を再開したわけで、社会とか世の中に対して訴えたいメッセージ性などはなく、自身の自然な状態を音で表現ができていれば良かったのが当初の気持ち。よって、1stアルバム等は全体的にプライベートな題材かつそんな作品。プライベートという言葉の認識は人それぞれだが、私としては「社会性」なのか「個人」なのかという区別をしている。「社会性」を前提基準とすると、各個人に対する私のアプローチも変わる。この社会に適応出来ない人間が発生することも、社会システムはシステムに組み込んでいる。 重要なのは最大多数の最大幸福であり、全人口の幸福ではないので、完全な社会は完全な社会を諦めることによって成立しているからである。逆にだからこそ、個人を視点とした時にしか(個人として接した時にしか)得られない哲学的な刺激は確かに其処に在ったわけで。
そんな紆余曲折を経て、自然と生まれた楽曲が『Arise』なのである。
9曲目『Inferno (2023 Remaster)』
自身が経験した一般社会の地獄絵図を表現している。ラップ調にしようと思いギターリフを作り、韻をそれなりに意識して、言葉選びをしているが、ヒップホップに寄らないのは私の音楽性の問題かとも思いつつも深く考えないようにしている。録音に使われたギターは、Greco 89s Les Paul Customのみ。サビの「Yeah,Hollows!」は元気良く叫ぶことで、心に絡まるどす黒いドロドロしたものを飛沫させる効果があり、精神衛生上は良いとか悪いとか。余談ではあるが、個人的にストーナーロックやオルタナティブロックも好きなので、そういう要素を含んだ楽曲はアルバムには必ず入れるよう常日頃から心掛けて制作に臨んでいる。
10曲目は『TRACE (2023 Remaster)』
ギターのリフワークのみで構成された楽曲。歌詞自体は『Dark sister』の続編のような内容で、相克の果てに没落した主人公が息を潜め、呪詛を以て解決しようと足掻く様子を表現したナンバー。録音に使われたギターは、Greco 89s Les Paul Customのみ。シンプルなリフワークとデジタルなドラミングで出来る限り仕上げたいと考えていたため、お遊び的な多重録音で使うようなギターフレーズは排除し、ベースもギターリフと同じ運指で演奏した。
11曲目『Misanthrope (2023 Remaster)』
5htアルバムのタイトルナンバー「Misanthrope」である。作曲の段階では、そこまで手応えはなく、とりあえず録音する程度のノリだったが、完成したサウンドは想像以上に良いものとなった。ギターパートに関しては、ライブの臨場感を極力損なわないように通しで演奏して、良いテイクだけを残して、重ねていくといった手法を取っている。フェイザーやファズを使用したパートもあるが、録音に使われたギターは、Greco 89s Les Paul Customのみ。歌詞は、5thアルバムのタイトルである「Misanthrope」、つまりは「厭人者」や「厭世家」という意味を込めており、厭世観(人生は生きる価値がない、という考えの意味)がテーマ。「厭世観をいだく人・物事を悲観し、世を儚む人」を主人公とした詞になっている。
ラストは、『Reincarnations (2023 Remaster)』で締め括り
タイトル通り、霊魂の再生や生まれ変わり、転生をテーマにしつつ、自殺前というか絶対性を破壊する直前の人間を主人公に置き、その心理を歌詞に表した。サウンド的には、ハードロック/ストーナーロックを意識しつつも、Solitary Shellらしさを残すように意識して創作。それにより、試行錯誤した結果、ギターを全編録り直すなど、レコーディングに時間を要した楽曲の1つである。使用したギターは、主にLTDのEC-10、ソロフレーズに関してはBurny H series(改)で録音している。主題は敢えて歌ではなく、02:24以降の間奏におけるアンサンブルで表現した。
曲の終わり際に残響音は余韻とループをイメージして、ミックス時に残したもので、機会があれば是非、通しでご試聴頂きたい。
★Produced by きしやまゆうへい
★ALL Music&Lyric,Guitar,Bass,Programming&Voices:きしやまゆうへい
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