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【日記】谷川俊太郎 絵本★百貨展に行ってきた

福岡アジア美術館で開催していた「谷川俊太郎 絵本★百貨展」に行ってきた。
もうだいぶ前になってしまったのだけど、下書きにあたためていたのを発掘したので放出する。

この展示は、詩人・谷川俊太郎の絵本約20冊を、絵本の原画、映像、インスタレーション等を通して紹介するというもの。
公式サイトのリンクを貼っておきます📝
https://faam.city.fukuoka.lg.jp/exhibition/19885/

展示はアジア美術館7階の企画ギャラリーで、
アジア美術館は中洲川端駅直結で博多座のお隣にある。
先日ダンスフェスティバル(これも5月に開催してたやつ)で初めて足を運んで以来、ちゃんと展示を見たいと思っていて、ちょうど福岡に出る用事があったので見に行くことができた。

足を踏み入れるとすぐさま、足元に"けんけんぱ"がある。見ると、「かっぱ」「らった」と字も書いてある。
あの、「かっぱかっぱらった」のやつだ。
壁には木の実やヤギの爪で音を鳴らす創作楽器が吊るされて、鳴らしながら「かっぱかっぱらった」を遊んでみることができた。
(1人だったので恥ずかしくてできなかったけど)

そして、谷川さん初期の作品だという絵本『まるのおうさま』の映像が展示のお出迎えとなっていた。

展示はこんな感じで、
絵本の展示→絵本の世界を紹介する展示
というのが順番に20冊分ほどある、という構成になっていた。
その中からいくつか印象に残ったものだけ…。


『ここはおうち』

イラストレーター・junaidaさんと共に制作されたというこの絵本。

1ページに対して言葉はほんの一文で、
見開きでjunaidaさんの美しいイラストが視界に飛び込んでくる。

しかし谷川さんの言葉は、ほんの少しの文字数だとしても、とんでもない質量がある。

そしてjunaidaさんのイラスト。
「おうち」から街へ「おでかけ」していくのだけど、その街並みは家々がみんな可愛らしく、それでいて奇妙さや異世界的な怖さを感じさせる。
特に私が好きなのは砂時計の絵。

会場にはこの絵本の原画がいくつか展示されていた。
junaidaさんは今度長崎の県立美術館でも企画展がある。ずっと気になっていたけど、今回見たことでなおさら行きたくなってきた。

私はこの企画展で初めて知ったのだけれど、この絵本は去年2023年出版だった。
私が小さい頃からすでに大きな存在だった谷川さんが、今でも筆をとり続けているということに、シンプルに驚いた。
長年筆を執り続ける姿勢に敬愛の気持ちでいっぱいになった。

『えをかく』

谷川さんが書いた詩に合わせて長新太さんが絵を描いていった絵本。連想ゲームのようにして、ページを繰るごとに順番に絵が描かれているのだけど、これはとにかく展示の仕方がワクワクして楽しかった!
どんな展示だったかというと、展示スペースの壁いっぱいに、絵本の絵を並べていたのだ。
壁際にはスピーカーが置かれ、絵本の朗読が流れる。
「〇〇のえをかく」
という言葉の通りに、壁に沿って歩いていくと、順番に絵が立ち上がっていくような気がした。

『あな』

小さい頃大好きだった絵本!


久しぶりに読んでみると、穴を掘り続ける少年は
周りのいろいろな人にどんなふうに言われても、自分の掘った「あな」を大切にしていたんだな、と思った。
特製のベンチにみたいになっていて、ところどころくり抜かれたように座る部分がある。
座面が深めで、座ってみると、かたくて見通しは悪いけれど、ちょっと守られているような感じがした。

展示の前半はテーマがいろいろな方向に広がって、谷川さんの絵本作品を網羅的に紹介する感じがあったのだけれど、後半、特に2/3以降は明確に”死と向き合う”というテーマがあった。
展示で取り扱っていた絵本作品は、『なおみ』、『かないくん』、『ぼく』。

緩やかに言葉や世界を楽しみ、生きることの喜びを感じる作品が多かったのに、ここにきて空気がずっしりと重たくなった。
子どもの頃は『もこもこ』や言葉遊び的な絵本で親しんだからあまりわかっていなかったのだけど、やはり谷川さんは戦争、そして戦後の時代を生きた人だったのだと、展示を通して気が付いた。
初期の「まるのおうさま」はアヴァンギャルド的な作風だし、どこかアングラで戦後の混沌とした空気をまとっていた。谷川さんもまたその時代を見つめていた人なのだと。
そんな人が”死”と向き合った作品が、ここに集められていた。

『ぼく』は、「ぼくはしんだ」というフレーズを繰り返しながら展開していく。全編に目を通して、その場で泣いてしまうかと思った。こんなセンシティブな問題を真っ向から描く絵本作品があるとは、と驚いたし、かつて苦しんでいた人たち、もがきまくった過去の自分、今葛藤し続けているだろう人たち、それぞれのことを思い浮かべて、とても苦しい気持ちになった。

『もこもこ』

最後、『もこもこ』のインスタレーション。
壁で区切られたスペースには、いわゆる「ダメになる」系のクッションが置いてある。そこに座って、天井から床まで一面に投影された「もこもこ」の朗読+アニメ?の映像を見るという内容。
床の式パッドも映像とつながったみたいな青色で、そのスペースにいると『もこもこ』の世界に飛び込んだみたい。
クッションに沈み込みながら映像を楽しんで、最後になんともリラックスした気持ちになった。



子どもの頃から知っている谷川俊太郎と、時代を歩んできた文学界の谷川俊太郎を知った展示。様々なインスタレーション作家とのコラボも堪能でき、とても楽しい展示でした。

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