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三角(参画)の対話がここにある。
「空が青いから白をえらんだのです」
寮美千子さんの本の題名にもなった「空が青いから白をえらんだのです」
くも
空が青いから白をえらんだのです
これは、奈良少年刑務所でおこなわれた「社会性涵養プログラム」の中で、受刑者の方が読んだ一編の詩です。この詩を読むと、各人各様に心の内奥(阿頼耶識)にある記憶の方からアクセスが起こり、何らかの感情や解釈が内発的に産まれ意識化されると思います。
それは必ずしも皆同じではなく、多様であると思います。
「あふれでたのはやさしさだった」
寮さんの著書「あふれでたのはやさしさだった」によりますと、奈良少年刑務所の彼は、この詩を書いたものの、読むとなると下を向いて不明瞭でサッパリ分からない。やっと聞き取れるような言葉を発したときに、見守る仲間(同じ涵養プログラムの受刑者達)が一斉に拍手をする。=「聞いて貰えた感」が彼に芽生える。
「聞いて貰えた感」
自分の詩、自分の声を全て聞いて貰えた直後、今まで下を向いて不明瞭でサッパリ分からない声しか出せなかった彼は、自分から「内発的」に発話をしているのです。(詳しくは本をお読み下さい)
聞いて貰えただけでこれだけ人間は変われる
話を、声を聞いて貰えた!というだけで、即時これだけ人は変われるのです。なのに私達は日々の会話の中で、まだ相手が話し終わってもいないのに、割り込んで話しだし、時には人の話を奪い取っていきます。なんと罪深いことでしょう。
自分の声を聞いて貰えたことで、自分の言葉で自分の過去を話し出します。
辛い悲しい過去を自らの声で外在化させる
詩がきっかけとなり、また詩を、声を、聞いて貰えた安心感が彼の心の扉を開けたのです。彼自身の内側にあった「傷つき体験」が彼自身の言葉によって「外在化」される瞬間です。
外在化ですから、彼によって語られた過去の出来事は、彼とは別に外に「存在」します。
周りの仲間は、今まで知らなかった、彼の背景(過去)が一気に前景化(表出)するのを体験します。詩を書いた彼の「内面を語る声」をきっかけに、個々の心の内奥にある過去の記憶の方からアクセスが起こり、何らかの感情や解釈が産まれ多声となります。
ポリフォニーがあがる
オープンダイアローグで言うところの「ポリフォニーを上げる」ということが、自然と起こっているんですね。
彼と、彼によって語られた過去と、周りの仲間達
彼と、詩をきっかけに彼によって語られた過去、と周りの仲間達という、三角形が織りなす心の動き。そして、発話者と聴き手と観察者が自然と入れ替わっていく。
過去が語り直される
このことにより、彼の過去は今までと違った価値観になります。周りの仲間の言葉を借りて語り直されるのでしょうか。
なにより、寮さん達が作られた「安全な場」を、彼ら自身が「安心」しているから産まれたのだと思います。
詩によって、怒りの仮面の内側が表に出てしまったのかもしれませんね。
正に、命とはつながりである
これこそが、みんなでおこなう会話を通した平和な活動