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5話:オニペイに染まる同級生

↓↓これまでのあらすじ↓↓


ナレーション
朝のホームルームが始まる前、教室にはいつもと違うざわつきがあった。

どの席からも聞こえてくるのは「オニペイ」という単語。

桃李は席につきながら、その異様な熱気を感じ取っていた。



クラスメイト男子A(机にスマホを置いて)
「マジで登録するだけでこんなにポイントもらえんのよ!昨日はVRゴーグルもらったし、今朝はバレンシアガの財布買っちゃったよ!」


クラスメイト男子B(羨ましげに)
「えっ、バレンシアガはやばいな!俺なんて親が厳しくて中々オッケーしてくれなくてさ。今朝始めたばっかだから、まだ1万円分のクーポンだけだわー」


クラスメイト男子C(面倒くさそうに)
「またその話かよ……お前ら、昨日からそればっかじゃん。」



桃李(心の声)
(また、オニペイ……。昨日まで普通だったのに、急にみんなが夢中になってる。)



チャイム:「キーンコーン。カーンコーン。」



金太郎が遅れて教室に入ってくる。
派手なスニーカーを履き、笑顔で桃李の元へ駆け寄った。


金太郎(元気に)
「モモ!昨日聞いたか?オニペイってやつ、すげぇぞ!」


桃李(驚いた表情で)
「……お前まで始めたのかよ。」


金太郎(得意げに)
「当然だろ?昨日登録したら、すぐポイントもらえたし、10万課金したら100万にもなってさ、欲しかったバイクも手に入りそうなんだ‼︎」


桃李(じっと金太郎を見つめて)
「……金、お前。顔色わりぃぞ……。」

金太郎は一瞬固まったが、すぐに笑顔を取り繕い、そのまま席に戻っていく。


昼休み:増える「オニペイ」の信者たち

ナレーション
昼休みになると、オニペイの話題はさらに加速した。
教室中に笑い声と興奮が広がり、登録していない生徒を取り巻く空気が微妙に変わり始めていた。


[昼休み・食堂]


クラスメート男子A(弁当を食べながら)
「次は何に使う?俺、今夜中にスピーカー狙ってんだよな。」


クラスメート男子B
「俺は旅行行きたい!親も一緒に誘ったらポイントが増えるんだってさ!」


桃李(少し苛立ちながら、サクラに向かって)
「なあ、これ、どう思う?あいつら完全に浮かれてるだろ。」

サクラ(冷静に)
「まぁ、気持ちはわかるけどね。急に欲しいものが手に入るなんて、普通なら誰だってやりたいよ?」


桃李
「それが普通じゃないから、俺は心配なんだよ。だって、アイツら全員……目の下のクマやばいし、受験勉強しなくなってんじゃん。


ナレーション

サクラは桃李の言葉にハッとしたように一瞬動きを止めたが、笑って誤魔化すように答えた。

サクラ
「まあ、モモがそう言うなら、何かあるのかもね。」

[放課後・正門付近]

ナレーション
夕方、部活も終わり、校門を出たところで桃李は再び金太郎に声をかけられる。
いつもの金太郎ではない、どこか無理をしたようなテンションが気にかかる。


金太郎(大声で)
「モモ!まだ帰ってなかったのか。ちょっと見てくれよ!

金太郎はスマホを取り出し、画面に映った新しいバイクの写真を見せつける。


金太郎(興奮気味に)
「ほら!これ買ったんだぜ!めっちゃカッコいいだろ?」


桃李(冷たく返しながら)
「……で、どうした?」


金太郎(少し苛立ったように)
「どうしたって……こんなすげぇバイクが手に入ったんだぞ!これを見てもお前は何も思わないのか?


桃李(じっと金太郎を見つめて)
「お前はさ、欲しかったものを何の努力もせずに手に入れて嬉しいの?今どんな気持ちなんだよ?金、正直に言えよ。」



金太郎(笑顔を崩さず)
「…何もせず手に入るなんて最高じゃね?。受験勉強なんて将来何の役に立たないクソみたいなもん覚える事もないし。」

「むしろ、お前こそさ、こんな楽しい時代に置いていかれないように、早く登録しとけよ。」


ナレーション

そう言い放つ金太郎の目には、何かに依存するようなものが滲んでいた。
その場を去る彼の背中を見送りながら、桃李の胸には言いようのない不安が広がる。


桃李(心の声)

(なんだ……この違和感。オニペイに関わる人間が変わっていく。まるで、大事な何かを失っているみたいだ。)

5話終わり

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