視聴体験を最高にするために...
以前書いた記事の延長戦にある話。
配信で映像と音声のタイミングがずれている視聴体験をしたユーザは多いのではないでしょうか? 私はそのような際にチャット欄に「音ずれてませんか?」と書き込むのだが、このような現象のことを一般的には「リップシンク;lip sync」という。
リップシンクが発生する原因は、配信者側または視聴者の環境のどちらかにあります。なので、「お前の環境だけで起こっている;通称おま環」と言われることもある。
そんなリップシンクの原因だが、配信機材やビットレート・回線状況など原因も多数存在する。
一つ言えることは、リップシンクが発生すると視聴体験が損なわれる。そのため、リップシンクが起きないことが望ましい。
類似した視聴体験として映像を再生している際に音声や画像が一瞬途切れた視聴体験をしたユーザもいると思う。この現象のことをコマ落ち(フレーム落ち;drop frame)という。簡単にいうと、本来再生されるべき連続フレームの枚数が欠けて一部のフレームが再生できず、その分だけ滑らかでなくなること。ユーザ配信などではコマ落ちが発生すると「ptpt;プツプツ」とコメント欄に書き込まれることが多い。
リップシンク同様に、発生理由として配信機材や回線状況や処理速度など原因が多数存在する。
視聴体験は、再生環境とコンテンツ品質で決まると思う。再生環境が整っていても、コンテンツ品質が悪ければ視聴体験は悪くなる。
そのためコンテンツ品質も非常に重要である。ユーザ配信などにおいては「配信者側の設定やマイク・カメラなどの環境」がこれに値する。
(ユーザ)配信プラットフォームは再生環境に関する視聴体験には関与できるがコンテンツ品質については推奨設定などを示すぐらいしか現状関与できない。
では、配信プラットフォーム側が「再生環境を良くしていくにはどうすればよいのか?」それについて、次から述べていきたい。
以前書いた記事から図は流用するが、これが大枠の配信の流れ、つまり配信者が配信した映像がネットワークを介して視聴者に届けられるまでの流れだ。
視聴者が再生する環境に適した最高の映像を提供することができれば視聴体験は改善される。例えば、再生開始してからすぐに映像が読み込まれ1フレーム目が表示されるまでの時間(=再生開始時間), これが長いと視聴者は視聴することはやめてしまう。そのため再生開始時間はある一定秒より早くする必要がある。
当然ながら、配信される映像の画質は良い方が望ましい。そのためにはビットレートが高い必要がある。ただし、ビットレートが高いということは大量のデータを送ることであり、通信環境によっては再読み込み(=再生ストール)が発生する可能性が高くなる。なので、通信環境を加味した上で最適な画質を提供する必要がある。高画質が必ずしも良いわけではない。
(また、ユーザ配信によっては静止画配信しているケースなどでは画質はそこまで良い必要はない など必ずしも画質が高ければいいというわけではない。難しい)
画質と同じくらい重要なのが遅延時間だ。ライブ配信などの場合は擬似双方向コミュニケーションが発生するケースも多い。その場合に配信者と視聴者の遅延は短い方が望ましい。この遅延時間が一定秒以上だと「ラグサイト」などと言われてしまう。これも視聴体験的にはあまり望ましくない。そのためには、配信者が送信した映像をいかに早く視聴者に提供する必要がある。
例えば、一度に転送するサイズ(=セグメントサイズ)やCDNの最適化などが考えられる。
また、そもそも配信を視聴できない(=再生エラー)も視聴体験においては非常に重要だ。再生できない原因も様々であるが、多くは視聴者の通信環境が原因なことが多い。つまり、視聴者起因でない再生エラーは絶対起こしてはいけない。
ここまでをまとめると「再生環境に関する視聴体験(=視聴QoE)」は次の複合的な観点を改善していくことによって向上できる。
・ 再生エラー
・ 再生開始時間
・ 再生ストール数
・ 再生ストール復帰時間
・ リップシンク(発生頻度)
・ コマ落ち(発生頻度)
・ ビットレート
また、各指標のサービスレベル指標(service level objective;SLO)を定めることによって、どの程度サービスが視聴者に対して品質保証できるかを明示し、死守するか考えることもできる。
これらの指標がまずは観測できなければ現状がどうかすらわからない。なのでログを仕込む必要がある。youboraのような動画配信事業向けの分析プラットフォームもあったりする。
良く視聴体験が良くなると、視聴時間が増えると言われているが、視聴時間が増えると視聴体験が良くなったわけではない。なぜなら視聴体験悪くても視聴したいコンテンツがあれば、視聴時間は増えるからだ。
しかし、「良い視聴体験を提供する→視聴時間が増える」であることは間違いないので、良い視聴体験を提供することは非常に重要である。
また、改善していく上でも「介入できる指標」で構成することが望ましい。
最高の再生環境にして快適な視聴ライフを過ごしたいですね。
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