ソロキャンプ 2022.3.4-5②王族のリゾットで生誕祭編
8回目のソロキャンプ記録、前回からの続きです。
狙い通り今シーズンの桜ハント初めが叶い、ほくほく顔で河津町を出発。次の目的地・西伊豆町を目指して走ること小一時間。
この日は朝からぴかぴかの青空だったのだけれど、西伊豆に近づくにつれて雲行きが怪しくなってきた。そしてキャンプ場が近づくにつれて、道もなんだか狭くなってきた。
分かりにくいでしょうが、車1台は余裕だけど行き違うのはちょっと怖い……みたいな幅の道。道の右側は急斜面、そして左側の側溝には蓋がない。個人的にこの、溝に蓋してない道を走るのってスッゴイ緊張する……。
山に囲まれた片田舎なわがまちにもこういう林道はたくさんあるし、なんならもっと狭くて暗い道を走ることもたまにある(大抵、野生の鹿に遭遇する)けれど、初めての道となると緊張感もうなぎ登りだ。全集中の呼吸を心がけながら慎重に進む。
林道を進むこと4km、目的地に到着!
今回お世話になったのは、静岡県西伊豆町にある『オートキャンプ銀河』さんです。
標高400mの山中にあるキャンプ場で、お天気に恵まれればすばらしい星空が楽しめるとのこと。ソロキャンプを志した時から、いつかお世話になりたいキャンプ地リストに入れていた。
敬愛するベテランキャンパーさんも、つい最近こちらにお越しになった模様。この記事の星空が素晴らしかったので、私も後に続きたいところだけれど……なんとか晴れてくれないかなー。
こちらが管理棟。到着したのはチェックイン時間より早かったのだけれど、気配に気づいたらしい女性スタッフの方がすぐに出てきてくださり、そのまま手続きとなった。
このスタッフさんが大変感じ良く、かつかなり好みなタイプの美女だったため、私の中のドキンコメーターが荒ぶってしまい、発汗しながらの手続きとなった。汗かき大魔神のつらみ。
こちらのキャンプ場には貸し切り風呂があり、複数名なら40分で800円、1名だと1,100円で利用できる。割増料金を払う気ムンムンでいたのだけれど、利用時間を30分程度におさめれば通常料金で利用可能とのこと。ざっと汗を流してあったまれれば充分なので、30分料金で17時からの一番風呂をお願いした。
手続きを終えたら、この日予約しておいた最上段の「星見サイト」に移動。すぐに設営に入る。
この日のマイサイト。地面は砂利敷きでなかなか手ごわい硬さだったけれど、風が強くなってもいいように念入りにペグダウンした。
それにしても、午前中の青空は何処へ……。
先日購入した陣幕、いよいよキャンプ場での初陣。こうして張ってみると、ひみつ基地感がぐっと強まる気がして、うむ……よろしいですね。非常によろしい。
陣幕は悩みに悩んだ末、「見た目はもちろん名前も格好いいから」という理由でこちらに決めた。
今回からは薪割り用の手袋もリニューアル。推しとおそろい!( *´艸`)ウッフフ
燻製の仕込みも済ませ、煙が安定したのを確認してから場内設備をチェックする。
お掃除の行き届いた水場。なんとお湯が出る!ありがたやありがたや。
水場に隣接するお手洗い。
こちらもお掃除が行き届いていて、ピッカピカ!
水場とお手洗いの確認ができればひと安心だ。よし、サイトに戻ってそろそろ本格的に吞もう。ウシシシ。
と、ここにきて重大な問題が発覚した。
スマホの電波が入らないのだ。
到着時、管理棟付近から「我無事到着セリ」と送ったLINE(恋人及び弟夫妻宛)は送信済になっているのに、その後自分のサイトから送ったLINEは送信エラーになっていた。そしてスマホのすみっこにはくっきりと、「通信サービスなし」の表示。
完全に電波が遮断されているわけではなく、ときどきうっすらと繋がるものの、非常に不安定な状態だ。スマホが使えなくてもそれなりに過ごせるけれど(呑む、燃やす、呑む等)、いざという時のために通信可能なスポットは確認しておきたい。スマホを空に向けてかかげ持ちつつ、とりあえず管理棟まで行ってみることにした。
管理棟付近まで下ったところ、先ほどの美人スタッフさんが小走りで近寄ってきて、「どうかなさいましたか?!」と声をかけてくだすった。よくよく考えたら、傍目には空と交信したがってる怪しい中年女に見えなくもない動きをしていたことに気づく。そりゃ心配されるわ色んな意味で。
そこで電波が入らない旨をご相談したところ、「docomoはいちばん入りにくいので、よかったら管理棟のwi-fiを使ってください!」と、うつくしい笑顔でパスワードを教えてくだすった。恋に落ちた瞬間だった。
電波はこれで確保できたものの、安定した通信を行うには管理棟まで降りてくる必要がある。
そして管理棟から私のサイト(最上段)までは、
このような勾配を上がらないと辿りつけない。
今までのソロキャンプでは、ちょいちょい恋人や弟夫妻に生存報告を入れていたのだけれど、今回それをやるとなると、この激坂をしょっちゅう上り下りしなければならない。大自然の中で己の肉体に適度な負荷を施し、心地よい汗をかく……悪くない。悪くはないが、それやるとたぶん明日起き上がれない。なので今回、連絡は最小限に留めることにした。
そんなことをやっているうちに、気づけばすでに15時を回っていた。そろそろ晩ごはんの支度をしなくては。
今回のソロキャンプでは、翌週(3/7)に誕生日を控えていたこともあり、普段なかなか手が出せない憧れの食材を使って、ちょっと早めの生誕祭をやってやろうと考えていた。
その食材がこちら。
王族のきのこ・ポルチーニ。
敬愛する凄腕料理人の方々のお宅で、いいなあ、よろしいなあ、食べたいなあ、とよだれを垂らしつつ眺めているポルチーニ茸。ぜひ一度扱ってみたいと思いつつ、なかなか手が出せずにいた。何しろ本場イタリアでは、肉料理と並んでコースのメインを張っている(らしい)高級食材。ものの文献によれば、庶民がうかつにその香りを吸引しようものならたちどころに昏倒し、七日七晩に渡る深き眠りにいざなわれたのち、その魂も肉体もきのこ王国の忠実なしもべとなり、二度とこのお菓子を受け付けなくなるとか。怖。
こんなおそろしい食材、生誕祭という免罪符がなければ決して手出しできない。先日思い切ってエイヤ!とポチったこいつを使って、今回はリゾットを作ってみることにした。
まず、ポルチーニ茸(数切れ)をぬるま湯に20分以上漬けて戻しておく。みじん切りにした玉ねぎ(小サイズ1/2個)とにんにく(チューブのもの)をオリーブ油で炒め、ここに生米(1/2カップ)を洗わずに投入。油で透きとおった米が再び白っぽくなったところで、ポルチーニの戻しジル、ワインを投入。さらに米全体が泳ぐ程度の水を加え、焦げ付かないように注意しつつ煮込んでいく。途中でポルチーニの身(トッピング用を少し残し、あとはざっくり刻んだもの)も加える。
タフまるくんに煮込まれる王族
水分が減りすぎたらその都度水を足しつつ、米がアルデンテになるまで煮込んだところで、コンソメ少量、マジックソルトで味を決め、仕上げにとろけるチーズを入れて、ささっと全体を馴染ませたら火から下ろす。取り分けておいたポルチーニをてっぺんに載せ、乾燥パセリを振ったらできあがり。
普段ならば鍋から直接貪るところだけれど、何しろ生誕祭だ。途中で買ってきたセブンイレブンのサラダと共に、お皿に盛り合わせてみた。
梅干しに擬態しようとする王族
王族のきのこには、やはり王族ののみものを合わせるのが、人として最低限の礼節と言えましょうや。よって今回のお酒はシャムパン一択。ちなみにリゾットを煮込む際にも使っているので、もはやこのひと皿は王族のリゾットと呼んでも差し支えあるまい。
味?ソラモー最高よ。
きのこリゾットは普段も作るけれど、この王族のリゾットは、作り慣れたそれとは一線を画す至高にして究極の一品!これ本当にきのこ出汁か……?ってくらい芳醇な旨みがたっぷり出ていて、思考回路がショートしそうなほどにどちゃくそめちゃんこおーいしーい!!!!!いかにも王族にふさわしい、どっしりとした存在感を放つかぐわしい香り。乾燥モノとは思えないほど肉厚で、心地よい歯ごたえのお身体。濃厚ながらも気品に満ち満ちた味わいに、玉ねぎの甘みとチーズのコクが抜群に合う。ポルチーニ茸……なんて恐ろしい子!私の中の全月影先生が白目を剥いてベタフラ背負い出すのを感じる。こりゃあみんなが虜になっちまうわけだァ……。
それほど空腹ではなかったにも関わらず、あまりのおいしさにスルスルと箸が、もとい匙が進む。もちろんシャンパンも進む。きめ細かな泡と爽やかな酸味が、王族きのこの芳香と共に混ざり合い、絡み合い、滑らかに喉を通りすぎてゆくのは、えもいわれぬ快感だ。
王族皿がきれいになる頃、隣で仕込んでいた燻製もいい塩梅になってきた。今回燻したのは、6Pチーズ、うずら味玉、そして昆布と塩で二晩ピチット締めたサーモン。
そう……いつぞやの、スモークサーモンになるはずが、焼き鮭になってしまったアイツの弔い合戦だ。今回はサクラのスモークウッドを使い、2時間かけて温燻(50度前後)にする。
ドキンコしながら蓋を開けてみると……
ヒュウ……なんてこったいベイビー。
ばっちりレアじゃあないかッ!
昆布と塩できゅっと引き締められ、ほんのり飴色のヴェールをまとったサーモン。口元に運んだだけでバチクソにいい匂いするゥ……!頬張ると、がっつり濃いめの塩気に昆布の旨み、そして素晴らしくスモーキーな香りが、口の中いっぱいに広がった。水分が抜けてパリッとした香ばしい表面と、脂の乗ったねっとりした中身、抜群のコンビネーション!どちゃくそめちゃんこおーいしーい!!!!!大成功だ!
今回、下味には昆布と塩のみを使ったので、和製スモークサーモンといった風情。市販のものに比べると、素材の味がストレートに前面に出ているような、ちょっとワイルド感のあるおいしさに仕上がった。シャンパンとの相性は言わずもがなで最高!だけれど、焼酎や日本酒と合わせてもおいしいだろうな。
燻製はできあがった直後よりも、燻製機から出してしばらく休ませた方が、香りと食材が馴染んでよりおいしくなるらしい。よって一通り味見をした後は、持参したタッパーに移してクーラーボックスにてお休みいただく。
味見をしているうちになぜかシャンパンのボトルが空いてしまったので、出発前に「念のため……」とバッグの隅に滑り込ませた予備の弾薬(缶チューハイ)も、クーラーボックスに移動させた。
さて、全身もれなく燻製臭まみれになったところで、お風呂の時間だ。
キャンプでお風呂に入れる、というのはそれだけで無上の喜びなのだけれど、なんとこちらのキャンプ場にあるお風呂、
五右衛門風呂なのです!
生涯一度は入ってみたいと思っていた五右衛門風呂。その初体験をまさかソロキャンプで味わえるなんて……と、予約を入れた時から大層ドキンコしていた。
ご覧の通りすみずみまでお掃除が行き届き、リンスインシャンプー、ボディソープ、ドライヤーまで設置されている。至れり尽くせりだ。
始めての五右衛門風呂は、芯からグワァーとあたたまる感じで大変に気持ちよろしゅうございました……。すごいアチアチだったらどうしよ、と不安もあったのだけれど、とてもいいお湯加減。手足は伸ばせないけれど、大釜の中にすっぽりおさまる感覚がなんだか妙に落ち着く。
午前中の桜ハントでかいた汗と、全身にまとわりついた燻製臭をさっぱりと洗い流すと、なんとも「ととのった!」気分。大変よきお風呂でございました。
お風呂上がりは管理棟横のベンチでひと休みしながら、夜の天気予報を確認する。どうやら今夜の空模様は芳しくないようだ。それでも「山の天気は変わりやすいから、ひょっとしたら晴れるかも……」という希望を胸にサイトに戻った。
18時を過ぎて暗くなり、かなり気温も下がってきたので焚き火タイム。とは言ってもこの時点で7℃程度だし、五右衛門効果もあって全く寒さを感じない。
缶チューハイと赤ワインを呑みながら、焚き火の炎に見入る。至福のひとときだ。目の前は相変わらず清々しいほどに曇天なので、星の代わりに焚き火の火の粉を撮ってみたりする。
午前中の河津では大層な強風に髪の分け目をいじられまくったけれど、ここでは全く風がない。とても静かで穏やかな夜だ。これで空が晴れてくれれば、絶好の星撮り練シチュエーションなんだけどなあ。
そうして3時間ほどひたすら燃やし呑みにやにやしつつ待ってみたものの、頭上の雲は一向に晴れない。
仕方ない。寝よう。
焚き火台の燃え残りを火消しツボに納め、ざっと片付けをしてからテントに入る。時刻は21時半過ぎ。ソロキャンプ始まって以来最速で寝袋に潜り込んだ。
次回の完結編に続きます。