令和4年初場所 幕下の見どころ
先場所に輪をかけて凄い顔ぶれが揃いました。休場力士も初日の割が出た時点では2人だけ、その後錦戸部屋の2人+阿蘇ノ山が加わったものの計5人ということで、先場所に引き続き少ないですね。
上位5枚目
朝乃山・紫雷の全休が決定的で、場所が始まる前から昇進2枠が確定している状況。おまけに東筆頭の旭秀鵬も休場とあって、5枚目以内に在位する残り9力士の鼻息はさぞや荒かろう。とにかく勝ち越すことで権利を掴みさえすれば、少々星が足りずとも十両に上がれる可能性がある場所だ。
力量の上では、やはり先場所優勝の元小結・竜電(高田川・31歳・東5枚目)が筆頭。
幕下下位の地位で難なく勝ち進んだ先場所は「幕下の照ノ富士」と言えるくらいに安定姿勢で慎重に相撲を取っていたが、同じ形で構えられると、一気に番付が上がったこの地位の力士たちでもそうそう牙城は崩せないだろう。仮に全勝を逃したとして、2つ3つと負けが積み重なる想像はしづらく、順当に返り咲きを果たすのではないか。
予想外に番付を上げて西筆頭に躍進の熱海富士(伊勢ヶ濱・19歳)は、10代関取誕生へ向け、一気に走れるか。
東西2枚目には、地道に力をつけて最高位に上り詰めた玉正鳳(片男波・28歳・東2枚目)と島津海(放駒・25歳・西2枚目)、3枚目には関取返り咲きに燃える貴健斗(常盤山・25歳・東3枚目)と常幸龍(木瀬・33歳・西3枚目)、4枚目には筋金入りの昇進候補である海龍(出羽海・31歳・東4枚目)と栃丸(春日野・29歳・西4枚目)が並んで、比較的カテゴリの近い力士の象徴的な番付となった印象だ。
関取の地位を明け渡した西5枚目の旭大星(友綱・32歳)は、先場所の内容を見る限り、一度しっかり休んで出直しを図るかに思われたが、出場に踏み切った。どこまで戦えるか、ベテランの奮闘に期待したい。
15枚目以内
ここからは、先場所同様最初の相撲で勝った力士に限定して名前を挙げていく。
なんと言っても注目は先場所新十両、初日に右膝を痛めて休場に追い込まれた北青鵬(宮城野・20歳・西12)を誰が止めるかだろう。
優勝した名古屋では、左四つ右上手で前に出て勝負をつけられていたのが、今場所最初の相撲は右で強引に振り回す勝ち方。先場所から期間が短く、コンディションにまだ不安を抱えていることに加え、早く番付を戻したいという精神的な焦りもあるはずで、その辺りにつけ込める力士がいるかどうか。
先場所幕下付出デビューで4勝3敗の欧勝馬(鳴戸・24歳・東12)は組み止められずに距離を取るのが上手く、強引な叩きを誘発させられそうな点で有力候補の一人。最初の一番で実力者の千代の海(九重・28歳・東13)に快勝して勢いにも乗っている。
北青鵬と対戦経験があり、その異次元な懐の深さを体感している深井(高砂・24歳・西8)や、對馬洋(境川・28歳・東11)も、再戦があれば前回の反省を生かし、上手を許さない方策を考え出してくるかもしれない。
9場所ぶりに幕下15枚目以内へと返り咲いた友風(尾車・27歳・東15)にも注目。もう一度土俵に上がるだけで奇跡と言われたところから、ここまで帰ってきたというだけで敬礼したくなるが、尾車部屋最後の場所とあって、本人は次なる奇跡の成就を貪欲に狙っていることだろう。
16~25枚目
大波三兄弟の長男・若隆元(荒汐・30歳・東17)に変化の兆し。長く120キロ台前半をウロウロしていた体重が短期間で10キロ近く増え、体感、若元春と変わらないくらいにまで厚みを増していた。
元々技術的な部分は関取に混ぜても遜色のない人、待ち望まれてきた体力面の強化により、30歳の前途が明るく照らされつつある。
先場所入門以来初の負け越しで壁に当たった石崎(高砂・23歳・東23)と藤青雲(藤島・24歳・東24)は捲土重来を期す場所。勝ち味がぐんと早くなり、伸び盛りの北大地(立浪・23歳・東16)は初の15枚目以内に向けて視界良好だ。
中位~下位
再起2場所目の元幕内・明瀬山(木瀬・36歳・西30)と、三段目付出デビューの先場所を優勝で飾り、今場所新幕下の金峰山(木瀬・24歳・西59)が引っ張る構図か。同部屋コンビということもあり、優勝争いの行方を大きく左右する存在となるかもしれない。
先場所首の怪我で休場、心配された西川(境川・23歳・東35)が元気に出場してきたのは明るい話題。先場所明瀬山に勝っている上位経験者の将豊竜(時津風・25歳・西35)、中位~下位在位時に優勝争いを演じた経験が豊富な栃清龍(春日野・26歳・西39)、スピード出世の藤闘志(藤島・23歳・西45)もいるが、最初の一番で非常に内容が良かった小原(浅香山・22歳・東34)、頂(伊勢ノ海・27歳・東37)、二本柳(阿武松・21歳・東43)のブレークにも期待を寄せたい。
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