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ベンチャーデットを使うメリット・デメリットとは?【スタートアップ向けデットのFlex Capitalを展開するFivot安部さんと対談#02】

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

前回の「ベンチャーデットって何?国内のプレイヤーも紹介」に引き続き株式会社Fivotの代表取締役である安部匠悟(あべ・しょうご)さんをゲストに迎え、ベンチャーデットについてお話しした内容をお届けします。

今回は、以下の資金調達方法と比較した際の、ベンチャーデットを使うメリットとデメリットについて聞きました。

エクイティファイナンス:株式発行による資金調達、エクイティ
デットファイナンス:銀行等からの借入による資金調達、デット

このnoteは若林によるPodcast「INQ若林のDebt and Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。Podcastでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

エクイティと比較したときのメリット①経営権が希薄化しない

若林:今回は、スタートアップがベンチャーデットを使うメリット・デメリットについてお話ししたいと思います。

スタートアップの定義はさまざまですが、ここでは「エクイティを活用して新規市場を開拓、短期間で急成長を志向する事業体」とします。このようなスタートアップがベンチャーデットを使うメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

安部さん:前提として、ベンチャーデットを使うメリットとデメリットは、エクイティと比較するか、デットと比較するかで異なります。

ベンチャーデットをエクイティと比較した場合、以下のようなメリットが挙げられます。

1.経営権が希薄化しない
2.資本政策(*1)に区切りを付けられる
3.審査プロセスが簡易
4.調達コストが低い

1つ目は、経営者の権利が希薄化しないことです。

エクイティの場合、新規株式の発行によって経営者の権利が希薄化し、議決権の過半数を渡してしまったり、役員の受け入れ義務が発生したりする恐れがあります。

一方ベンチャーデットでは株式を発行しないので、このような事態を避けることができるのです。

*1) 事業計画を達成するための資金調達及び株主構成計画

エクイティと比較したときのメリット②資本政策に区切りを付けられる

安部さん:エクイティと比較した際のベンチャーデットのメリット2つ目は、資本政策に区切りを付けられる点です。

エクイティの場合は株式を発行するため、株主であるベンチャーキャピタル(以下、VC)と長く付き合うことになります。

一方でベンチャーデットの場合は返済期限があるため、返済が終われば一旦そこで関係は解消されるので、それ以降、経営に関して何か言われるということはありません。

若林:「資本政策は後戻りできない」といわれますが、ベンチャーデットの場合、後戻りできるわけではないが、一区切り付けてリセットできるということですね。

エクイティと比較したときのメリット③審査プロセスが簡易

安部さん:エクイティと比較した際のベンチャーデットのメリット3つ目は、審査プロセスが簡易な点です。

若林:エクイティの場合、VCの投資担当者との面談や投資委員会の場が複数回設けられるのが一般的ですよね。
ベンチャーデットではこのようなプロセスが簡易化されているということでしょうか。

安部さん:ベンチャーデットの場合、もちろん提供企業によって違いはあるのかもしれませんが、エクイティと比較すると審査プロセスはシンプルな商品がほとんどです。

例えば弊社はデータドリブンで審査をしているため原則1週間以内で終了しますし、面談を何度もやることはなく、オンラインで完結します。

若林:審査自体が雑とか簡単というわけではなく、プロセスがDXによって効率化されているということでしょうか。

安部さん:はい。他にも、返済期限があることで審査プロセスが簡易化されているという面もあります。

エクイティだと10年後の計画や、マーケットの成長性まで考え抜く必要がありますが、ベンチャーデットは返済期限までの間にどうなるかだけが重視されますので、当然デューデリジェンス(*2)で見られる範囲も狭くなるということです。

*2) 投資対象の経営状況や財務状況を調査すること

エクイティと比較したときのメリット④調達コストが低い

安部さん:エクイティと比較した際のベンチャーデットのメリット4つ目は、調達コストの低さです。

一般的に、期待リターンが大きくなるほど調達コストも増える傾向にあります。

両者の期待リターンを比較すると、ベンチャーデットの調達コストの低さがイメージできるでしょう。

✅エクイティの期待リターン:15〜20%以上
✅ベンチャーデットの期待リターン:6〜15%

若林:利息制限法で制限されていることもあり、15%よりは低いため、調達コストも抑えられるということですね。

エクイティと比較したときのデメリットは、調達できる金額が少ないこと

若林:エクイティと比較した場合のベンチャーデットのデメリットには、どのようなものがありますか。

安部さん:調達金額が少ないことです。ベンチャーデットがデットファイナンスとエクイティファイナンスの間を埋める商品であるという特性上、どうしてもエクイティの調達金額よりは小さくなってしまいます。 

前回お伝えした通り、ベンチャーデットの市場規模はエクイティの10〜20%程度ですので、目安金額はそのくらいです。

若林:アメリカでベンチャーデットを提供しているシリコンバレーバンクは、エクイティの約20〜35%をベンチャーデットの融資枠として設定するらしいので、おおよそ3分の1くらいまでが目安になるのでしょうね。

デットと比較したときのメリット①スタートアップ特有の成長モデルを理解してもらえる

若林:次にベンチャーデットと、デットファイナンスを比較したときのメリットについてお話ししたいと思います。

安部さん:以下が、デットと比較したときのメリットです。

  1. スタートアップ特有の成長モデルを理解してもらえる

  2. 審査がスピーティ

  3. 業種の縛りがない

1つ目は、スタートアップ特有の成長モデルを理解してもらえる点です。

ベンチャーデットはその名の通りベンチャー向けに作られたものなので、審査の形態や基準もベンチャー向けに設計されています。

そのため、事業の成長性や、将来的にエクイティを活用できるのかといった部分も見てもらえるのです。

若林:通常のデットファイナンスでは事業の安定性や継続性が重視されますが、ベンチャーデットであれば、それ以外の部分も見てもらえるということですね。

安部さん:はい。銀行はどうしても返済原資を気にするので、キャッシュフローが赤字だと返済原資が無いとみなし、貸せないと判断します。

ベンチャーデットの場合は、次のエクイティで調達する資金や、将来発生する売上を返済原資として見込むことができるのが大きな違いです。

デットと比較したときのメリット②審査がスピーティ

安部さん:デットと比較した際のベンチャーデットのメリット2つ目は、エクイティとの比較でも取り上げましたが、審査がスピーディな点です。

若林:銀行や公庫との初めての取引だと審査に約1カ月、保証協会付き融資だと1カ月〜2カ月かかりますが、ベンチャーデットの場合はどうでしょうか。

安部さん:これも例外はあるかもしれませんが、弊社の場合は初めての申し込みでも約1〜2週間くらいで審査結果が出ますので、審査のスピーディさもメリットといえると思います。

デットと比較したときのメリット③業種の縛りがない

安部さん:デットと比較した際のベンチャーデットのメリット3つ目は、業種の縛りがないことです。

公的融資や銀行融資ですと、金融業など業種によっては審査が厳しかったり、そもそも借りられなかったりします。弊社も金融業に該当するため、日本政策金融公庫からは融資を受けられませんでした。

その点ベンチャーデットには基本的に業種の縛りはありません。まさに弊社の「Flex Capital」がそうですし、縛りを設けている業者はほとんどないというのが実感です。

若林:最近では金融系のサービスを提供するペイトナー株式会社が、SDFキャピタルが設立した日本初のベンチャーデットの投資先第一号として資金調達を実施し、金融業によるデットファイナンス活用のモデルケースが生まれました。

デットと比較したときのデメリットは、金利の高さ

安部さん:一方でデットと比較すると、ベンチャーデットは金利が高いのがデメリットといえます。

若林:スタートアップ向けに柔軟な審査基準を設けている分、銀行融資よりリスクがあるので金利が高くなるのはしょうがないでしょうね。

とはいえ資金調達方法の選択肢が増えるのはいいことなので、スタートアップ企業には他の選択肢も含めて、さまざまなフェーズで最適な資金調達方法を活用してほしいです。

まとめ

今回は前回の「ベンチャーデットって何?国内のプレイヤーも紹介」に引き続き、株式会社Fivotの安部匠悟さんをゲストに迎え、ベンチャーデットのメリットとデメリットについてお伝えしました。以下に内容をまとめます。

エクイティと比較したときのベンチャーデットのメリットは以下の4点。

  1. 経営権が希薄化しない

  2. 資本政策(*3)に区切りを付けられる

  3. 審査プロセスが簡易

  4. 調達コストが低い

デメリットは、調達できる金額が少ないことです。

デットと比較したときのベンチャーデットのメリットは以下の3点。

  1. スタートアップ特有の成長モデルを理解してもらえる

  2. 審査がスピーティ

  3. 業種の縛りがない

デメリットは、金利が高いことです。

次回のnoteでは、株式会社Fivotが提供するベンチャーデット「Flex Capital」について、安倍さんから詳しくお聞きします。

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