『勝つのって難しい。』大学テニスの頂点、王座を観戦してきた。
王座を観に行ってきました。
王座とは、「全日本大学対抗テニス王座決定試合」のこと。
大学の体育会テニス部の、団体戦日本一を決める大会です。
王座という大会の仕組みを簡単に解説しますと。
王座の予選にあたる、各地方リーグが8・9月ごろに開催されます。
関東リーグは、1部〜6部に別れ、各部で総当たりのリーグ戦、ダブルス2本・シングルス5本の7本勝負で行われます。
1部リーグの上位2校が王座に進出。2部以降は、上位2校が入れ替え戦を行い、勝てば上位の部に繰り上がることができる、と。
そして、王座はトーナメント戦、ダブルス2本・シングルス3本の5本勝負で行われます。
(※男子はリーグも王座も9本勝負です)
わたしは、大学でテニス部に入るまで知らなかったのですが、
どの大学も、この王座での優勝を目標に掲げ、取り組んでいます。
いわば、テニスの甲子園優勝みたいな感じです。
高校テニスにおいては、インターハイや全日本ジュニア、全国選抜と、年に大きな大会がいくつかあり、それぞれの大会での優勝を目指す高校があったり、個人戦優勝をひたすら目指す選手がいたり、
目標の掲げ方は高校や、選手によってそれぞれ、というようなイメージがあります。(海外のツアーをまわってプロを目指す高校生もいます)
それが大学に入ると、どの部も「王座優勝」が、圧倒的な目標なんです。
個人競技であるテニスですが、目指すところは団体戦での日本一なんです。
早稲田の体育会に入り、初めてこのことを知ったとき、
新発見というか、カルチャーショックというか、違和感というか。
そんな感覚がありました。
だって、個人競技ですよ。
勝ちたいやつが勝てばいい、それぞれがそれぞれの目標に向かったっていいんです。
でも大学体育会のテニスは、チームで勝つことこそが、一番なんです。
しかもこの目標はどの大学もそうで、周知の事実らしい。
一緒に入部した同期も、当然のような顔をしていました。
あ、ちなみに、個人で勝ちたいやつが勝てばいいじゃん、と思っていた、という話ではないですよ。ただただ知らなかった、びっくりした、という話で。入部して1ヶ月後には、王座優勝を目指す体育会テニス部に染まり上がっていました。
わたしの現役時代の結果は以下です。
1年生:王座優勝(13連覇)
2年生:リーグ3位
3年生:コロナにより大会中止
4年生:王座準優勝
13年間続いた王座連覇が2年生のときに途絶えてしまい、
4年生のときに決勝まで進むも優勝には届かず、
卒業後もリーグでの敗退が続き王座優勝から遠のいてしまっています。
そして今年、わたしが4年生のときの1年生の代です。
リクルート(スカウト、のほうが伝わるのでしょうか)として担当した代の子たちで、個人的にも思い入れのある代。
リーグ戦も混戦する中、なんとか王座への切符を手にしてくれました。
王座はダブルス2本、シングルス3本の5本勝負。
決勝をみにいけたら、と思っていたんですが、
昨日の準決勝、対関西大学、
ダブルスが1−1になったと聞いて、急遽会場へ応援に行きました。
試合は大接戦。
最後、シングルス1に勝負がかかりましたが、
残念ながら早稲田が決勝の舞台に立つことは叶いませんでした。
主将を務めていた同期と、3つ上の大先輩方(1年生のときの4年生)と観戦していましたが、
勝つのって難しいなあ、チーム力だなあ、なんて話をしながら。
正直、実力差はほんとになかったんです。
ただ、勝利への執着心、状況が悪くとも、なんとかしてやろうっていうチームの雰囲気が、関西大学さんの方が強かった。
団体戦って本当に不思議で。
途中から実力なんて関係なくなってくるんです。
チームが作ってきた雰囲気がもろに試合に出るんです。
サポートとして応援するチームメイトの、言葉選びや態度、声の大きさ、目力。
コートに立つ選手の、サポートとの一体感。なんとか応えようとする試合運び。
むしろ、もっと大きい声出せよ、とか、
もっと丁寧な試合運びしろよ、とか、
そういう話をしたとて、チームがよくなるわけではなくって。
あくまでも、「このチームで勝ちたい!絶対勝つ!」ってチームの全員の気持ちが一つになった結果として、選手のためになる応援、サポートに応えるプレーができるんじゃないかな、と思います。
その、根底にある「絶対勝つ!」という気持ちやエネルギーは、日頃の練習の中での、あらゆる言動のひとつひとつから積み上げられるもので。
そういう積み重ねが、いざというときのチーム力として現れるんじゃないかな、と思います。
んでまた、その普段の積み重ねっていうのも簡単ではなくて。
昨日の観戦後、大先輩方とごはんに行かせていただいて。
長い長い時間、学生生活のほとんどを一緒に過ごすからこそ、根っこの人間性が出るのが部活、という話をしていました。
毎日毎日きつい練習、さぼりたくなるときもあります。
弱音を吐きたくなるとき、手を抜きたくなるとき、人任せにしたくなるとき、全然あります。
そういうときにどうするか、どういう行動をとるかに、人間性が出ます。
下級生時代の雑用なんて、人間性がもろに出ます。
上級生になって余裕が生まれたかと思いきや、先輩に怒られなくなったことで出てくる人間性もあります。
そこでグッと堪えること、チームに協力しようとすること。
腐っているチームメイトを注意できること。励まし合えること。
そんな一つ一つを積み重ねないと、チーム力って生まれないんじゃないかなと。
早稲田は、王座決勝の舞台の円陣で、
「すべてはこの日のために」
と叫びます。
1年生のとき、泣きながら叫んだのを今でも鮮明に覚えています。
雑用の一つ一つも、練習の一球一球もすべて、王座優勝のため。
宗教って思われるかもしれないですが、部活ってそういうもんだと思います。
王座優勝を経験している代は、そんな経験もしてきた上で、
勝つって難しい、と言う。
でもだからこそ、勝ったときがめちゃくちゃ嬉しい。感動。鳥肌。涙。
この、チーム力で勝つっていう経験をなんとか後輩たちにもしてほしい、と思います。
わたしたちの時代は、とか、チーム力が、とかって、
OGが言うのも老害のようであまり言いたくなくて。
でも昨日の敗戦が悔しくて、ついついここでつぶやいてしまいました。
来年こそ、王座奪還してくれ〜!