タイトル作者【りにょり】タイトル【あるボドゲに隠されし真実】

・タイトル作者【りにょり】
・タイトル【あるボドゲに隠されし真実】


・番号【1】・文章作者【てちゅろん】

「きくぞうさん、ジュマンジって知ってます?」
野球部の打撃音が響くグラウンド。その隅にあるプレハブは文化部の根城。
「どしたのヤマさん突然に。もちろん知ってるよ、饅頭でしょ饅頭。俺あんこキライなんだよね」
「9時45分、現行犯逮捕ですね。映画ですよ映画」
「ええーッ!」
付近の雑木林で生を謳歌する蝉みたいな叫び声。
2人は部活動として、今日もオリジナルボードゲーム「魔界塔士GaYa」の制作に来ていた。
そろそろ完成させて入稿しないと、秋のゲムマに間に合わないから貴重な青春を部活に注いでいる。
なかとーは掛け持ちのブラスバンド部が忙しく、ペグは朝に弱くて姿はないが、やってきたらすぐに進捗を問われるだろう。
「ざっくり言うと、奇妙なボードゲームを拾って遊んでみたら、不思議な出来事が次々と起こるんです」
「それが饅頭とどういう関係が?」
「饅頭はきくぞうさんが言いだしたことでしょう。
 それがですね、先輩たちが『絶対に開けるな』って言っていたロッカーからこんなモノが……」
ヤマが足元から拾い上げ、ごとりとテーブルに置かれたのは禍々しさこの上ない漆黒の箱。
その30㎝ほどの立方体には、サイコロの目のような配置で閉じた眼(まなこ)が幾つも描かれていた。


・番号【2】・文章作者【カジキ】

怪しげな箱を見つめる、きくぞうとヤマ。
「ヤマさん、何このヤバそうな箱! 眼がたくさんあるしでかい。しかも『絶対に開けるな』ってロッカーを開けちゃったのね」
「掃除ついでに開けちゃって。僕らが作っているボードゲーム「魔界塔士GaYa」でなにか使えるかなーと。」
「30㎝ぐらいあるし、何に使えるかな? この見た目ならゲムマでも注目されるよね」
「まだ中身もわからないんですけけど」
「開けてみようよ」
おもむろに箱を手にするきくぞう。
「あっ」

その時、掛け持ちのブラスバンド部を終えた、なかとーがボードゲーム部室に入ってきた。
そこには、謎の箱と一体化した人間が倒れていた。

もう1人の部員、ペグは自宅で眠っているのかまだ気配はない。


・番号【3】・文章作者【ワク】

ヤマとなかとーが駆け寄ると、そこには箱と同化したきくぞうがいた。
「起こして~」
箱から、手と足と顔だけ出ているきくぞうらしきものが、床でジタバタと暴れている。

なかとーが冷めた目で言う。
「・・・これは何かのギャグですか?」
「とりあえずペグさんに送ろ」カシャ

ヤマがなかとーに一連の出来事を説明する。
その間、2頭身になったきくぞうはホッホッと歩く練習をしていた。バランスを崩し前に倒れると、また「起こして~」とジタバタするのであった。

「この箱って何が入ってるんですか?」
「開けたらきくぞうさんがこんなことに・・・そうだ。きくぞうさんちょっとジャンプしてみてください。」
きくぞうが2、3度飛び跳ねてみるが、特に音はしない。
「う~ん、ないんでしょうか?中身が。」

そこにボードゲーム部顧問の通称「りにょり先生」がやってきた。
「あなた達まだいたの。そろそろ帰りなさいね~。」
先生に見つかるとやっかいだ!
慌ててきくぞうを隠したが、そのままりにょり先生は去っていた。
二人が振り返ると、きくぞうは亀のように箱の中に顔と手足を隠していた。
隠せるんかい、と思ったがヤマとなかとーは何も言わなかった。
しかし、このままにしておくわけにはいかない。
「とりあえずたまり場に行きましょう!ペグさんも来るって!」
ヤマが担ぎ、ペグが待つたまり場に向かうことにした。


・番号【4】・文章作者【りにょり】

たまり場に行くと、そこにはペグが待っていた。なかとーとヤマが着くと、ペグは言った「あれ?きくぞうさんは?」
ヤマさんは箱を下ろし、きくぞうはその箱から手足を出して「ここだよ」と言った。
「うわぁ!」一度は驚き、後ろに下がったペグはゲラゲラと笑いだした。
「何その格好wwウケるww」


・番号【5】・文章作者【てちゅろん】

「聞いてくれよペグちゃん!箱を見つけたら色々あってこうなったんだ」
「つまり閉じ込められたのね。戻れるの?」
話を続けて、と促しながらごそごそと自分の荷物を漁るペグ。
「さすが飲み込みが早い!そしてその手の銃はなんだい?」
「……この前、ゾンビが出たらどうするって話で盛り上がったじゃん?私は躊躇なく殺すって言ったじゃん?」
「ちょちょちょ判断が早いよ!まだ戻れないと決まったわけじゃ」
「ごめんねきくぞうさん、その身体辛いよね、早く楽にしてあげる」
慣れた手つきでスライドを引いてウィーバースタンスに銃を構える。
「なんか手慣れてない?おいなかとー!黙ってないでペグちゃんを止めて!」
「ベレッタと銀弾程度じゃきくぞうさんは死なないです。後ろの棺桶に隠した対悪魔変形機関銃”ロザリオ”を使ってください!」
「なかとーてめえええ!!」
「結界を張ります!」
ヤマが懐から聖書を取り出しぶつぶつと祝詞をあげ始めると、彼の身体がぼんやりとした光に包まれ始める。
「ヤマさんまで?!もう……許せねえよ!!」
きくぞうの箱がガタガタと暴れ始め、天井部が開くと怒りに満ちた顔がにょっきり飛び出した。
「今まで黙っていたけど、私たち、対悪魔滅殺国家機密組織の構成員なんだ。きくぞうさんに憑りついた悪魔よ死すべし。アーメン!」
ペグが背後の棺桶をゴリラ顔負けの怪力で持ち上げて、そのままきくぞうの頭にに叩きつける。バラバラと砕け散った中からスローモーションのように機関銃が飛び出し、ペグはそれを素早く掴み取って、きくぞうに向けてトリガーを引いた。


・番号【6】・文章作者【カジキ】

ペグは対悪魔変形機関銃"ロザリオ"を掃射した。

箱のきくぞうはあっという間に形を失っていく。箱の内部からコマやタイルが飛び出してくる。
激しい銃撃の中、結界で被害を抑えるヤマ、巻き添えで消し飛んでしまうなかとー。

「快…感」
すべてを吹き飛ばし恍惚状態のペグ。

「なかとーさん、命がけで悪魔の動きをおさえてくれたんですね……アーメン」
ヤマは犠牲になった仲間を弔っていた。

ガタガタッ
「ヤマさん! 何これ!? 気持ちわる!」

きくぞう、なかとーの肉片、箱の破片や目玉が動き出していた。そして一か所に集まってゆく。
「そ…そういえば きいたことがある…! 悪魔の中には不死身の力をもつ強力なものもいる、と」

「機関銃の弾は全部撃っちゃったよ!」
「何とか、再生を止めないと……!」
ヤマは慌てつつも、サイドステップを踏みつつ聖書をかまえる。

その時、背後のガレキからミープルが2つ、宙に浮きだした。
箱から飛び出してきたコンポーネントの一部だ。

「我が名は、ワク」
「我が名は、りにょり」

「お姉さま、アレを使うわ」
「ええ、よくってよ」


・番号【7】・文章作者【ワク】

「「クロスボンバー!!」」
りにょりとワクによる二人がかりのラリアットが、きくぞうとなかとーらしきカタマリに直撃した。
二体のミープルに挟まれたソレは潰れ、ミープルには黒いシミだけが残った。

きくぞうとなかとーのタマシイは
りにょりとワクの、神々しい、女神のような、素晴らしい、スペシャルなパワーを受けて浄化されていった。

箱から飛び出してきたコンポーネントも消えていき、りにょりとワクの姿もいつのまにか見えなくなっていた。

ヤマとペグの目の前には、見つけた時と同じ状態のボードゲームが何事もなかったように置かれていた。


・番号【8】・文章作者【りにょり】

「終わった・・・・・・」
ヤマとペグは目を合わせた。途端に全て終わったのだという安心感で、笑いが込み上げてきた。

「アハハ、アハハハハ!!!」
ペグの笑いに負けないほど笑うヤマの姿は、これ以上ないほどに輝いていた。

「これからも、よろしく」
笑い過ぎて目の端から零れる涙を拭いながら、ペグは握手を求めた。
「もちろん」
ヤマはその手をしっかりと握り返した。

その二人を見守るように、空にはきらりと光る星がいくつか見えた。
それは一瞬、ミープルの形のように見えた気がしたが・・・・・・まぁ気のせいだろう。


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