タイトル作者【きくぞう】タイトル【ぼくの夏休み~恐怖!ヤマのBBQ(ババアクエスト)~】
・タイトル作者【きくぞう】
・タイトル【ぼくの夏休み~恐怖!ヤマのBBQ(ババアクエスト)~】
・番号【1 】・文章作者【ヤマ】
「そうさね…まだあの人が若い頃の話さ…。いづれ終わりが来るとも知らずにいたんだよ。
人の身で愚かにも挑んでいったのさ…。
人には定められた寿命ってものがあるのにね…。」
ここは我谷楽寺(がやらくじ)市
入り組んだ路地を男が物色するように歩いている。
彼は探していた。
向かいのホーム、路地裏の窓
こんなところにいるはずもないのに、と分かっていながらも確認せざるにはいられなかった。
路地は迷路のようだが彼にとっては昔からの遊び場だ、造作もない。
普通の人ではあっという間に迷子になるだろう。
「見つけた!」
そういって彼が抱えたのは珍しい三毛猫の雄である。
「これで依頼完了っと」
拠点へ戻り依頼人に三毛猫を引き渡す。
「この町に来た時は名前も読みづらいし道も迷いやすくて…って思ってましたけどみんないい人ばかりで本当いい所ですね。ウチの子を見つけてくださってありがとうございます。」
「ここは庭ですからね、また何かあれば言ってください。」
依頼人を見送ると彼は背伸びをした。
「ここしばらく働き詰めだったし、ちょっと遅いけど夏休みにってことでしばらく出かけるか」
そう言うと彼は簡単に荷物をまとめて拠点を出た。
・番号【2 】・文章作者【ペグ】
外に出た瞬間、いつもと空気が違うことに瞬時にヤマが気付く。
「なんだ?風が鳴いてるじゃねぇか…」真冬でもないのに全身鳥肌が立つほどの冷たい風が我谷楽寺(がやらくじ)市を包み込む。
ヤマはその場で微動だにせず口を開く。
「夏休みなんでね、俺はちっとぉ避暑地に行きたかっただけなんだけどなあ。そんな夏は歓迎してないぜ、婆さん」
ヤマの後ろにぼろぼろの服にボサボサの白髪の女性が立っていた。
ヤマがゆっくり振り返り、その老婆の顔を見つめる。老婆は胸元をゴソゴソと漁っている。
「なんだい婆さん、俺に何か用かい?」
その老婆のボサボサ頭は腰まで長く、前髪で顔が隠れている為表情を読み取ることができない。
老婆が胸元から何か取り出そうとしていることに気付き、思わず距離を取った。
「っ!まさかおまえー…」
ヤマも咄嗟に胸元から数珠を取り出す。
「こうなっちゃあ仕方ねぇ、成仏す…」
老婆が胸元から取り出したのは眼鏡だった。眼鏡をかけ、自分で前髪を掻き分けヤマを凝視した。
「あっ、すみません。人間違いでした」
そう言うと老婆は去っていった。
「人間違いなら仕方ないな」
ヤマはボソッと呟き再び歩き出した。
・番号【3 】・文章作者【なかとー】
しばらくすると雨が降り始めたので、ヤマは近くにあった門の下で、あまやどりを始めた。
広い門の下には、ヤマ以外誰もいない。かの有名な我谷楽寺(がやらくじ)市である以上、2.3人くらいはあまやどりしていても良い気がするが、不思議なことにヤマしかいない。
「こんなところで、またさっきみたいな老婆が出てきたら…」
ふと、ある作品がヤマの脳裏に浮かぶ。
「下人の行方は、誰も知らない…か…」
ヤマがそう呟くやいなや、背後から奇天烈な叫び声を上げながらあらわれたのは…
・番号【4】・文章作者【きくぞう】
そこに現れたのはヤマンバだった!
ヤマ「出たあ!ヤマンバが出たあ!」
ヤマンバ「悪いごはいねえかあ」
出刃包丁を持ち、まるでナマハゲのような格好をしたヤマンバはヤマに遅いかかる!ヤマは必死に身を翻しながら出口に向かった。だが、そこには別の人影が…
そこに現れたのはヤマ親父だった!
ヤマ「出たあ!ヤマ親父が出たあ!」
ヤマ親父「♪出てきた、出てきたヤマ親爺♪笹の葉かついで鮭(シャケ)しょって スキーにのったヤマ親爺♪千秋○のヤマ親爺♪」
スキーに乗ったヤマ親父が手に持つ鮭をヤマに降りおろした!間一髪避けたヤマは別の出口を目指す。だが、そこには別の人影が…
そこに現れたのは世界のヤマちゃんだった!
ヤマ「出たあ!世界のヤマちゃんが出たあ!」
世界のヤマちゃん「手羽先食えやあ!」
背中に生やした羽で高く舞い上がった世界のヤマちゃんは手羽先爆弾を投げつけてきた。間一髪それをかわし、ヤマは出口に向かう。だが、そこには別の人影が…
そこに現れたのは○○キャンディーズのヤマちゃんだった!
○○キャンディーズのヤマちゃん「どうも~!○○キャンディーズのヤマ…ぶべら!」
ヤマ「リア充死すべし!」
ヤマの鉄拳が炸裂しヤマちゃんが吹っ飛んだ!だが間髪いれずヤマンバがヤマを出刃包丁で切りつける!ヤマは軽やかにかわすとヤマ親父を踏み台にし高くジャンプし世界のヤマちゃんの背中に回り込み羽を引き裂いた!世界のヤマちゃんがきりもみしながら落下し起き上がろうとしていたヤマちゃんに激突した。ヤマのヤマが当たった!世界のヤマちゃんの直撃を受けたヤマちゃんは今夜がヤマだろう。だがヤマの快進撃もここまでが関のヤマ。後は野となれヤマとなれ。ヤマ感に頼って進むしかない。いや、それとも風林火ヤマよろしく、動かざるごとヤマの如しか。焦って敵に背を向け逃げるよりもヤマのように身構えて迎え撃つ方が…。
その時、辺り一面に太陽の光が注がれた。夜が明けたのだ。まともに日の光を浴びた奴らは断末魔の声をあげた。
ヤマンバ「ウギャー」
ヤマ親父「ウギャー」
世界のヤマちゃん「ウギャー」
○○キャンディーズのヤマちゃん「ウギャー、何で僕まで…」
太陽の光を浴びた怪物たちは全員塵となり消え失せた。ふうと息を吐き、一人残されたヤマはその場に腰を下ろすと、美しい朝日を細目で見つめた。
ヤマ「ヤマを越えたか…」
・番号【5】・文章作者【ヤマ】
ヤマを超えたヤマは朝日を見つめながら大きく息を吐いた。
とても疲れた…そして眠い…
しかしこんな所にはいられない。
帰らなければ。
だけどどこから来たっけ?
帰り道は?
さっきの騒動で帰り道をすっかり忘れてしまったヤマ。
「とりあえず適当に歩いてみようかな
そのうちわかる所にでるでしょ!」
ヤマはヤマ勘で帰る事にした。
40分ほど歩いただろうか、見知った場所には出ない…
「ヤマ勘外れたかぁ…」
1人ぼやいていると遠く離れた所で何やら物音が聞こえる!
「向かってみよう!」
音のほうへ向かっていくとどんどん音が大きくなってくる。
ゴォーッ!
ギャギャギャーッ!
この音はなんだろう?
機械のような…一体何が?
開けた場所に出たヤマは辺りを見渡した。
すると突然後ろからクラクションが鳴る!
振り返ると猛スピードで車が突っ込んで来た!!
・番号【6】・文章作者【ペグ】
また全身に悪寒が走る。
とてもつもなく当たりが冷え切っている。これは物語的にもヤマ場なのでは?
俺はただ夏休みを満喫したかっただけなのに。ヤマ盛りのお肉を食べたかっただけなのに。もしくは日々のストレスから解放されて、ヤマ登りでもしてヤマほどのヤマの幸を楽しみたかっただけなのに。
日付が悪かったのか?今日は仏滅だったか?あの頃に戻れるのなら、夏休みの日を変更したい。ヤマは祈ってヤマなかった。
猛スピードでやってきた車は目の前で止まっている。ライトが眩しくてよく見えないが、運転席に髪の長い女が乗っていることがわかった。
ヤマトナデシコのような美しい女性かもしれないと、ヤマは少しヤマしい気持ちになったがその考えが瞬時に覆させられる。
運転席から降りてきたのはババアだった!フラフラとヤマに近付いてくる。
・番号【7】・文章作者【なかとー】
ババアは目の前までやってくると、目をカッと見開きわめき始める。
(ノリノリで読み上げる)
「脳裏によぎる今日は仏滅?
突然響くドラムステップ。
呼ばれてないけどババア参上
可愛いあの子とパズルゲーム?
いやいや残念、ババアと脱出ゲーム。
自慢の脚で逃げ切ろうって
よく見ろお前、大谷崩れっす。
夏休み、とか言ってるけど
物語は爆発四散
軽はずみな悪巧み
そんなこと考える前にちゃんと
左右確認だろ常考
しっかり締めとけ括約筋
今から行くぜアフタヌーンティー」
フ、フリースタイルラップだ…
ヤマは瞬時に頭を働かせる。
やられっぱなしではいけない、
やり返さなければ…!!!
・番号【8】・文章作者【きくぞう】
「そんなことよりもババア、野球しようぜ!」
ババアにグラブとボールを渡し2人は日が暮れるまで野球を楽しんだ。途中、ヤマが打ったボールがカミナリさん家の窓ガラスに直撃し、怒り狂ったカミナリさんから2人で逃げたが、ババアは楽しそうだった。
「ババア、次は花火をしようぜ!」
ロケット花火をババアに渡し、2人で撃ち合った。途中、闇夜の公園でイチャつくカップルに2人でロケット花火を撃ち込み全力逃走したが、ババアは楽しそうだった。
「ババア、次は海へ行こうぜ!」
ヤマのニューカーの助手席にババアを乗せ、2人は海へ向かった。2人で海を眺めていると、海水浴に来ていた子供が溺れているのを発見した。ババアは老人とは思えない時速101kmのスピードで海の上を走り見事子供を救出した。親御さんから泣きながら感謝されているババアは、ちょっと照れ臭そうだった。
「ババア、次はBBQしようぜ!」
ヤマの自宅にあるカーポート。そこで焼き肉台を用意しBBQを始める。いつの間にか出てきたヤマ親父、世界のヤマちゃん、○○キャンディーズのヤマちゃんも一緒だ。
「そこ、焼けてるよ。ホラホラ食べた食べた」
焼き肉奉行のヤマがその場を仕切り、皆は美味しそうに食べる。美味しい焼き肉を食べ、皆の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。
「こんなに楽しいのは初めてだ」
ババアがポツリと呟く。
「わたしゃ今まで鬼ババアだのクソババアだの言われてずっと虐げられていた。生きるのに必死で人間扱いされたことも無かったし人間らしく生きることも出来なかった…」
肉を焼きながらヤマは耳を傾ける。
「だがこの数日、本当に楽しかったんだ。生まれて初めて楽しいって思えた。だからヤマ、お前には本当に感謝しているんだ」
キラキラした瞳でヤマを見つめるババア。ヤマは照れ臭そうに顔を背けた。
「何言ってんだ。これからも楽しい思い出を作るんだろ。ホラ、これ焼けてるぞ」
そう言ってトングで肉を差し出したヤマは、ババアたちが光に包まれているのに気が付いた。
「もう、腹いっぺえだ…」
満足気な表情でババアたちは昇天した。
「ババア~~~!!」
残されたヤマの悲痛な叫び声がこだまする。
「たった一回の夏休みの思い出で昇天するなんて早すぎんだよ。夏は来年も再来年も来るんだぞ?これからも楽しい思い出はいくらでも作れるのに…。チクショウ!」
こうしてヤマの夏休みは幕を閉じた。
あれから数年後。ヤマはとある会社で働いていた。休みは週に一回。ひどい時には20連勤など当たり前、錬金術師の名を欲しいがままにする紛れもないブラック企業である。
今日で21連勤か。ハハッ、記録更新だぜ。このまま前人未踏の50連勤でもして大谷の記録にでも並ぶか?
事務作業をしながらヤマは机の卓上カレンダーの日付に赤ペンで大きく○をつけた。
「今年も夏がやってきたか。さあて、今年は何をするかな」
そう言ってヤマは自嘲気味にフッと笑った。
何をするかだって?そんなの決まってる、今年もアイツらとBBQをするんだ。次の週もBBQ、その次の週もBBQ!俺たちの夏は始まったばかりなんだからさ!そのためにも、さっさと仕事を終わらせて夏休みを取るぞ!
ぼくの夏休み
~恐怖!ヤマのBBQ(ババアクエスト)~
終
制作・著作
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